現代社会において、コンピュータでの処理は、いろいろな活動に欠かせないものになっています。そして、人々の活動が、コンピュータでの処理をベースに行われている以上、それらの活動に、何か問題が起きたときに関わってくる裁判や証拠という話も変貌を受けざるを得ません。
そのコンピュータ処理が、法的な判断にどのような影響を及ぼすのか、このような問題を「デジタル証拠の保全、識別、抽出、ドキュメント化についての考察」という観点から分析するのが、デジタル・フォレンジックスということになります。フォレンジックスという言葉はやや聞き慣れないかもしれませんが、CSI(科学捜査班)などのテレビドラマで、一般的になりつつあるということができるかもしれません。「法科学」と訳されることにもなります。
このような枠組みの中で、分析される個別の問題は、それぞれをみるとき、従来も議論されてきたものということができるかもしれません。
IT業界特有のバズワード好きで、デジタル・フォレンジックを新たな概念であるかのように解説する人がいるかもしれません。しかしながら、このような立場は、学問的な正確性を有するものではないことに留意しなくてはなりません。
その一方で、デジタル・フォレンジックスという観点から上の問題を分析することは、技術と裁判という二つの側面の融合をさらに意識させるものとなり、まさに現代的な問題を浮き彫りにするものとなるということができるでしょう。
具体的なデジタルフォレンジックの概念を概観するには、各段階ごとに論点を洗い出すのが有意義になるのでしょう。以下、具体的に問題をみていくことにしましょう。