ロボット法学会設立準備会に出席してきました。報道は、こちら。
非常に熱意のある参加者・事務局で、いろいろと面白かったです。
ただ、ロボットとして、何をテーマに論じるの、土俵は何にするの、という議論が、あまりされなかったのは、残念でした。法律家が議論するのであれば、アルファなり、オメガとしての、「定義」は、きちんと意識して論じるのが、当たり前の礼儀ではないでしょうか。(まあ、自分が、あまりにも古い流儀にこだわりすぎるのかもしれませんが)
そんなことをいっても仕方がないので、体系について、考えていることを以下にメモします。たぶん、ロボット法としての論点は、IoTの問題と人工知能による制御の問題で、「ほぼ」足りるのだろうと思います。(何が足りないかは、考えていません)
すると、問題となる各論点は、「自律性」「物理的存在」「存在と社会との関わり」の分野で論じられるはずです。
(1)自律性
人工知能による制御の問題で、人間の具体的な指示によらないで事前の抽象的な指示によって制御されることでしょうね。すると、人間との役割分担、特に緊急時の人間の具体的な指示によるコントロールの可能性を残さないといけないのか、というのが重大な問題になるはずですね。これは、準備会で指摘されていなかった問題と認識します。
(2)物理的存在
これは、ロボットが、実際に駆動系をそなえたりして、実際に社会のなかで、物理的な作用をなす(その意味で、データのみに作用する金融系の自律システムは、とりあえず、考えない)ということでしょう。これによって、この駆動によって現実の問題が惹起されることになります。
この場合にかんがえるべきことは、安心感などというものではなく、「安全」です。ここでいう安全は、テクニカルタームで、「安全とは、受容できないリスクから免れている状態」(JIS Z 8051:2004 の定義 3.1)をいいます。また、安全とは、「安全、死、傷害、職業病、備品・財産に対する損傷・消失、または、環境に対する損傷を惹起しうる状況から免れていること」(MILSTD882E)ということができるでしょう。
IoTを論じるときに、「安全」を論じないで、情報セキュリティの観点だけを論じるのは、研究不足というのが、私の説なのですが、昨日も、この意味での安全の定義がでなかったのは、残念です。
この安全を守るための仕組みが、監督官庁による安全基準の策定とその基準の執行体制ということになります。この基準が守られない場合には、リコールにもなりうるので、その場合のレベル感(特にロボットシステムとしてみた場合のネットワークからの攻撃が想定される場合)・仕組みがポイントです。昨日は、製造物責任ばっかり議論されていました。個人的には、どうかな、というのが感想です。
(3)存在と社会との関わり
ロボットシステムは、その対象の情報取得・駆動に関する情報など、すべてが、データとして存在します。このデータが、まさに、動作の原動力になるわけです。これが特定の個人を識別しうると、personal dataとなって規制の対象になります。この場合に、現在、世界的にもっとも「進んでいる」(?)とされるPersonal Data Protectionの仕組みが、対応できるのか、有効利用という観点を考えたときに、identifiableかどうかのみで考える仕組みでいいのか、というのは、論点でしょうね。
また、ロボットが一定のとじた仕組みで、ある分野を独占してしまうと、このようなデータについても、独占が発生してしまいます。二面市場の制覇の問題点も将来でてきそうです。
というのが、私的にみたロボット法の体系というところです。これらの問題は、今の枠組みでも検討できるのは、当然です。ただ、新しい名前でお祭りは楽しいですし、新しい見方も提供してくれます。活動が盛んになって刺激をもらえるといいかもしれません。
ただ、シンギュラリティの時代に何がおきるのか、元気に、頭もボケずに、キャッチアップできるのを第一目標にするべきかもです。