総務省でサイバーテロ対策会議-技適マーク基準見直し

「東京五輪狙うサイバー攻撃対策、技適マーク基準見直しへ」という記事がでています。
「電話やインターネットのルーター、スマートフォンなどに総務省が与える「技術基準適合(技適)マーク」の基準見直し」がポイントとなっています。
この点については、私の経営するシンクタンクであるITリサーチ・アートの「「総務省-サイバー防衛で公的認証」と無線機器の責任分界点」でふれています。
法の解釈論的な問題点としては、無線設備の技術基準適合証明、端末設備の接続の技術基準の基準自体が、問題となります。
記事では、「現行の基準の主眼は通信障害を防ぐことに置かれている」とされています。
この点について、今までに調べたことのある無線設備についてメモしておきましょう。
電波法の第3章 無線設備は、電波の質、受信設備の条件や、義務船舶局の無線設備の機器について定めています。
同法38条は、その他の技術基準として「無線設備(放送の受信のみを目的とするものを除く。)は、この章に定めるものの外、総務省令で定める技術基準に適合するものでなければならない。」と定めています。そして、無線設備の技術基準については、「送信設備に使用する電波の周波数の偏差及び幅、高調波の強度等電波の質は、総務省令で定めるところに適合するものでなければならない」( 28 条)「受信設備は、その副次的に発する電波又は高周波電流が、総務省令で定める限度をこえて他の無線設備の機能に支障を与えるものであってはならない」(同法 29 条)という定めがあります。
そして、総務省令で定める技術基準の詳細については「無線設備規則」等において定められています。
「無線設備規則」は、電波法28条(電波の質)、第29条(受信設備の条件)、38条(その他の技術基準)及び100条(高周波利用設備)の規定に基づいています。
同規則は、無線設備及び高周波利用設備に関する条件を定めることを目的として、総則、送信設備、受信設備、業務別又は電波の型式及び周波数帯別による無線設備の条件、高周波利用設備の5つの章から成り立っています。
総則は、電波の質 (周波数の許容偏差、占有周波数帯域の許容値など)、保護装置(電源回路のしゃ断等)、混信防止機能などを定めています。
混信防止機能については、個別の無線局の態様ごとに具体的なさだめがなされている。たとえば、特にIoTでの活用が期待される特定小電力無線局 を例にとるときは、周波数等によって電波法施行規則第六条の二第3ないし5号に規定する機能を定めなければならないとされています(無線設備規則9条の4)。電波法施行規則6条の2・3号は、「同一の構内において使用される無線局の無線設備であつて、識別符号を自動的に送信し、又は受信するもの」と定め、同4号は、「電気通信回線に接続しない無線局の無線設備であつて、利用者による周波数の切替え又は電波の発射の停止が容易に行うことができるもの」、5号は、「受信した電波の変調方式その他の特性を識別することにより、自局が送信した電波の反射波と他の無線局が送信した電波を判別できるもの」と定めています。
送信設備は、空中線電力に関する規定、送信装置の各種条件、送信空中線の仕様等を定めています。
受信設備は、副次的に発する電波等の限度、その他の条件(内部雑音、感度など)を定めています。
業務別又は電波の型式及び周波数帯別による無線設備の条件は、種々の無線局の態様ごとに条件を定めています。特定省電力無線局を例にして検討すると、第4節の11 特定小電力無線局の無線設備(49条の14)は、無線設備に関する基準として、周波数、筐体、発信方式、アンテナの利得、給電線・設置装置を有しないこと、などについて定めているのです。
これらの規定をみていけば、まさに上の「現行の基準の主眼は通信障害を防ぐことに置かれている」という意味がわかるかとおもいます。
いわゆるIoTのセーフティという問題で考えられているのは、通信に有体物が接続されており、その有体物が、本来の利用目的等とは別の動作をなすということから生じる弊害をいかに減らすかということだとおもわれます。
そのために、このような混信等を発生させないように、などの観点から作成されている基準に対して、どのように基準をアレンジして、通信のトラストを保全していくのか、非常に興味深いものだということができるでしょう。
まずは、無線設備の責任分界点をはっきりさせること、機器という有体物と脆弱性の関係を整理させることか必要になるとおもわれます。

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