ウイルス罪、有罪と無罪の境界はどこにあるのか (下)で、フォーカスされたのは、法執行のレベルをどのようにしてあげていくのか、という問題なような気がします。社会的にみて法益侵害のレベルが高いものを捕捉し、法を執行し、そのような場合ではないものについては、誤って法を執行するということがないようにするということが要請され、そのような要請は、法執行の資源を如何に効率的にマネージメントするか、ということのような気がします。
日経の記事は、米国におけるコンピュータ犯罪と知的財産セクション(「CCIPS」)を紹介しています。しかしながら、それだけではないです。ここで、「デジタル証拠の捜索差押マニュアル」(捜索差押マニュアル)の2001年版の記載を紹介しておきましょう。
より詳細なアドバイスを必要とする捜査官と検察官は、一層の支 援のためのいくつかのリソースを頼りにすることができる。連邦の区の段階では、どの連邦検察官事務所にも、コンピュータ電気通信コーディネーター(以下「CTC」とす)として任命された連邦検察官補が、少なくとも一人いる。すべてのCTC は、コピュータ関連の犯罪の広範囲にわたるトレーニングを受けて、自己の地区の内でこのマニュアルでカバーされる話題に関連する専門的技術を提供することを主たる責務とする。CTC には、区事務所を通じて連絡をとることができる。
さらに、ワシントンDC の米国司法省の刑事課の中のいくつかのセクションがコンピュータ関連の分野に専門的技術を持っている。国際課((202)514-0000)は国際問題を提起する多くのコンピュータ犯罪調査において専門的技術を提供する。執行オペレーション課(202)514-6809)は、第3 章と第4 章で議論する通信傍受法とその他のプライバシー法における専門的技術を提供する。また、児童搾取とわいせつに関する部局((202)514-5780 も) 児童ポルノと児童搾取についてコンピュータに関連する場合における専門的技術を提供する。
これらの記載(なお、この記載は、2009年版では削除されています)をみると、2001年の段階で、検察官補としてCTCが任命されており、各区の捜査官は、CTCに相談をなすことができる仕組みになっていることがわかります。
また、司法省は、刑事課のもとに、コンピュータ犯罪についての専門の課を設置していたこともわかります。20年前にこのようなシステムが存在していたというのは、非常に参考になります。我が国においても、JC3が設置されるなどの努力がなされています。
我が国の昨今の事案については、現場の捜査官に対しても、サイバー犯罪に対する適切な情報が行き渡っているのか、また、何らかの行動に対してのコントロールは、どうなっているのか、という問題があるように思えます。米国のレッスンから学ぶことは、組織のマネジメントの問題であるという意識をもとにしたシステムの構築ということではないかと考えています。