IoTとしての宇宙システム

宇宙システムのサイバーセキュリティに関するブログでは、宇宙-サイバーセキュリティの最後のフロンティア? (上)  (中) (下)、「続・宇宙-サイバーセキュリティ法の最後のフロンティア その1」 から(その6) があります。

また、ロシアのウクライナ侵略で議論された論点、また、McGillマニュアルでふれられた論点などがあります。

ところで、安全なロケットを、安全な施設から、安全な方法で打ち上げ、そして、ミッションを遂行することを考えてみると、IoTシステムの法律問題という観点から検討することができるかと思います。 そのような観点から、ちょっとまとめてみます。

1 宇宙活動法/施行規則の定め

宇宙活動法-人工衛星等の打上げ及び人工衛星の管理に関する法律
6条1項1号
「人工衛星の打上げ用ロケットの設計が、人工衛星の打上げ用ロケットの飛行経路及び打上げ施設の周辺の安全を確保するための人工衛星の打上げ用ロケットの安全に関する基準として内閣府令で定める基準(以下「ロケット安全基準」という。)に適合していること又は第13条第1項の型式認定若しくは外国認定を受けたものであること。」

2号 「打上げ施設が、次のイ及びロに掲げる無線設備を備えていることその他の人工衛星の打上げ用ロケットの飛行経路及び打上げ施設の周辺の安全を確保するための打上げ施設の安全に関する基準として人工衛星の打上げ用ロケットの型式に応じて内閣府令で定める基準(以下「型式別施設安全基準」という。)に適合していること又は第16条第1項の適合認定を受けたものであること。」
となっています。

 人工衛星等の打上げ及び人工衛星の管理に関する法律施行規則(平成二十九年内閣府令第五十号)

ロケット安全基準は、こんな感じです

(ロケット安全基準)
第七条 法第六条第一号の内閣府令で定める基準は、次のとおりとする。

一 人工衛星等の打上げを行うことができる飛行能力を有するものであること。
二 着火装置等の故障、誤作動又は誤操作(以下「故障等」という。)があっても、人工衛星の打上げ用ロケットの飛行経路及び打上げ施設の周辺の安全を確保することができる措置が講じられているものであること。
三 人工衛星の打上げ用ロケットの位置、姿勢及び状態を示す信号を送信する機能を有するものであること。
四 人工衛星の打上げ用ロケットの飛行中断措置により当該人工衛星の打上げ用ロケットの飛行経路及び打上げ施設の周辺の安全を確保することができる機能を有するものであること。
五 人工衛星の打上げ用ロケットの飛行経路及び打上げ施設の周辺の安全確保を図る機能を構成する重要なシステム等に、故障等があっても機能するために十分な信頼性の確保及び多重化(同一の機能を有する二以上の系統又は機器を同一のシステムに配置することをいう。以下同じ。)の措置が講じられているものであること。
六 人工衛星等が分離されるときになるべく破片等を放出しないための措置が講じられているものであること。
七 人工衛星の打上げ用ロケットを構成する各段のうち軌道に投入される段に、人工衛星を分離した後になるべく破砕を防止するための措置が講じられているものであること。

あと、型式別施設安全基準は、こちらです。

第八条 法第六条第二号の内閣府令で定める基準は、次のとおりとする。

一 打上げ施設が、当該打上げ施設の周辺の安全を確保できる場所にあり、かつ、重要な設備等に保安上適切な対策が講じられていること。
二 打上げ施設に、人工衛星の打上げ用ロケットの飛行経路及びその周辺の安全を確保する適切な発射を行うことができる装置を備えることができること。
三 人工衛星の打上げ用ロケットに使用する着火装置等に係る重要なシステム等の故障等があっても、人工衛星の打上げ用ロケットの飛行経路及び打上げ施設の周辺の安全を確保することができる措置が講じられていること。
四 飛行安全管制(人工衛星等の打上げを終えるまで、全部若しくは一部の人工衛星が正常に分離されていない状態における人工衛星等の落下、衝突又は爆発により、地表若しくは水面又は飛行中の航空機その他の飛しょう体において人の生命、身体又は財産に損害を与える可能性を最小限にとどめ、公共の安全を確保することをいう。以下同じ。)や飛行中断措置を講ずるために必要な、次に掲げる無線設備を打上げ施設に備えることができること。ただし、飛行安全管制や飛行中断措置を講ずるために次に掲げる無線設備を備えるその他の場所を使用する場合は、この限りでない。

イ 人工衛星の打上げ用ロケットの位置、姿勢及び状態を示す信号を電磁波その他を利用して受信する方法により把握する機能を有する無線設備
ロ 人工衛星の打上げ用ロケットが飛行中断措置を信号を受信することにより行う場合においては、当該飛行中断措置を講ずるために必要な信号を送信する機能を有する無線設備

五 人工衛星の打上げ用ロケットの飛行経路及び打上げ施設の周辺の安全確保を図る機能を構成する重要なシステム等に、故障等があっても機能するために十分な信頼性の確保及び多重化の措置が講じられていること。

となっています。

これらの安全基準について、「⼈⼯衛星、企業にサイバー対策指針 政府、⼯程表改定へ」という報道がなされました(日本経済新聞 令和2年12月4日)。

2 宇宙基本計画工程表改訂

ということで、内閣府宇宙開発戦略推進事務局の資料を見ていきます。

令和3年6月29日「宇宙基本計画工程表改訂に向けた重点事項(案)のポイント 」宇宙基本計画工程表改訂に向けた重点事項(案) 」では、

宇宙空間は衛星数やデブリの増加、軌道上サービスの進展等により更なる混雑化が見込まれており、その持続的かつ安定的な利用を妨げるリスクへの対処が重要かつ喫緊の課題となっている。サイバーセキュリティの確保など宇宙システムの抗たん性を強化することの重要性も増している。

となっています。このような考え方にもとづいて

宇宙システムのサイバーセキュリティ対策のための民間企業向けガイドラインを開発する。

となっています。

でもって、令和3年12月28日は、改訂版が公表されています。宇宙基本計画⼯程表 (令和3年度改訂) は、こちらです。

(1)宇宙安全保障の9 宇宙システム全体の機能保証強化において

2021年度末までの取組状況・実績

  •  宇宙分野における多国間机上演習「シュリーバー演習2021」に参加した。
  •  経済社会・国⺠⽣活への影響の⼤きいシナリオを採⽤し、関係府省や⺠間事業者等が参加する機能保証強化のための机上演習を実施した。
  •  宇宙システムのサイバーセキュリティ対策のための⺠間企業向けガイドラインを開発した(予定) 。
  •  宇宙天気監視の24時間運⽤及び予報の毎⽇2回配信を着実に実施した。(再掲 )
  •  ディキンソン⽶宇宙コマンド司令官の来⽇の際に、宇宙システムの機能保証強化について意⾒交換を⾏った。
  •  内閣官房、内閣府、防衛省が中⼼となって、宇宙状況把握関連情報の集約・共有の枠組みに関して検討を実施した。(再掲)

となっており、今後は、

宇宙システムのサイバーセキュリティ対策のための⺠間企業向けガイドラインについて、最新状況に合わせて、かつ国際調和を図りつつ、逐次更新する。

とされています。

また、「宇宙基本計画工程表改訂に向けた重点事項」 令和4年5月20日 宇宙開発戦略本部では、

昨年 11 月にロシアが行った衛星破壊実験、宇宙システムに対するサイバー攻撃、衛星数やデブリの増加に伴う宇宙空間の混雑化等に代表されるように、宇宙空間の持続的かつ安定的な利用を妨げる脅威・リスクがこれまで以上に高まりつつある。

とされています。そして、

サイバーセキュリティ対策を推進するため、経済産業省がとりまとめた「民間宇宙システムにおけるサイバーセキュリティ対策ガイドライン」の普及促進を図るとともに、最新状況に合わせ逐次更新する

となっていて、経済産業省の「民間宇宙システムにおけるサイバーセキュリティ対策ガイドライン」

3 「民間宇宙システムにおけるサイバーセキュリティ対策ガイドライン」

経済産業省 製造産業局 宇宙産業室経済産業省「民間宇宙システムにおけるサイバーセキュリティ対策ガイドライン β版 令和4年2月」をみます。(すみません。正式版が見つかっていません)あと、概要版は、こちらです。

ガイドラインを見ていきます。

3.1 はじめに

この部分は、背景・目的、対象範囲、構成および想定読者から成り立っています。

興味深いのは、対象範囲かと思います。

民間企業が主体となる衛星システム及び地上システム(衛星運用設備、衛星データ利用設備、開発・製造設備)とする。

衛星システムについては、設計・開発・製造、運用・保守、廃棄フェーズを対象とする。地上システムについては、運用・保守フェーズを主な対象とするものの、システム自体の設計から廃棄までの各フェーズについて特に注意すべき点については対象とする。打上設備につては対象外とする。

3.2 宇宙システムを取り巻くセキュリティに係る状況

この部分は、2.1 インシデント事例、2.2 民間宇宙システムにおけるセキュリティリスクの考え方から成り立っています。興味深いのは、「民間宇宙システムの標準的なモデル」として

CPSF の3層構造を活用しつつ、超小型観測衛星を分析対象として民間宇宙システムの全体像を整理し、以下の標準的なモデルを作成した。

点にあります。

図 2-2 民間宇宙システムの標準的なモデルは以下です(ガイドラインより引用)。

 

これを前提にリスクの洗い出し、コントロール、残存リスクと進んでいきます。もっとも、この資料ですと、『サイバー・フィジカル・セキュリティ対策フレームワーク(CPSF)Ver1.0』(2019 年 4 月 経済産業省サイバーセキュリティ課)をもちいて、

  • Step 1 分析対象の明確化
  • Step 2 想定されるセキュリティインシデント及び事業被害レベルの設定
  • Step 3 リスク分析の実施
  • Step 4 リスク対応の実施

のステップで対応していくことになっています。

また、具体的には、IPA「制御システムのセキュリティリスク分析ガイド第2版」(2020年 3 月)の利用が推奨されています。

リスクの洗い出し

7つのリスクシナリオが特定されています。

  1. 標的型メール攻撃による衛星軌道制御の喪失
  2. 開発製造用端末のマルウェア感染による衛星・ミッション機器制御の喪失
  3. 衛星データ利用設備へのサイバー攻撃による衛星制御の喪失
  4. 観測受付サーバへの不正アクセスによるサービス提供不能
  5. テレワーク環境下でのメール攻撃による企業機密の漏えい
  6. 無許可 USB メモリの利用による操業停止
  7. 不正な衛星搭載機器の受入れによるコンステレーション崩壊の危機

です。

詳しくは、ガイドラインをみてもらうことにして、とくに7番シナリオは、サプライチェーンの段階からロジックボムが部品に仕込まれるという脅威を考えています。このレベルの脅威について、安全保障的な観点から検討して、対応しないといけないということになります。

リスク対応

リスク対応については、サブシステム か列挙され、リスクの場所ごとに具快適な対応が検討されています。

  • 衛星本体
  • 衛星運用設備
  • 衛星データ用利用設備
  • OAシステム
  • 開発・製造設備

3.3 民間宇宙システムにおけるセキュリティ対策のポイント

これは、さらに、以下のようにマトリックスが作成されて検討がなされています。共通対策と宇宙システム特有の対策にわけて論じられています。

共通対策

項目 要求事項
3.1.1 組織的なセキュリティリスクマネジメント 経営者のリーダーシップのもと、サイバーセキュリティリスクの管理体制を構築し、自社のサイバーセキュリティリスクの特定、防御、検知、対応及び復旧を含めた対策を実装すること。
3.1.2 クラウドセキュリティ対策 外部サービスを活用する場合、法令、ミッション等に適したセキュリティ要件やサービスレベルアグリーメント(SLA)に対応するサービスを選定すること
3.1.3 テレワークセキュリティ対策 テレワークを実施する際は、テレワーク環境の整備及び規定の整理をし、安全な運用を行うこと。
3.1.4 内部犯行対策 内部不正の防止や早期発見ができるよう対策を検討すること。
3.1.5 外部へのインシデント報告 不具合等を含むインシデントが発生した際、必要に応じ、外部の組織に報告すること

宇宙システム特有の対策

項目 要求事項
3.2.1 法令上求められる対策 (1)関連する法令を遵守し、ライフサイクル全体を通して、適切な対応を行うこと。安全な宇宙の利活用を促進するため、宇宙産業に関連する以下の(a)から(c)の主要な法令に準拠することが求められる。
(a)人工衛星等の打上げ及び人工衛星の管理に関する法律
(b)衛星リモートセンシング記録の適正な取扱いの確保に関する法律
(c)外国為替及び外国貿易法
3.2.2 衛星本体 衛星システム(本体及びRF通信)に対するサイバーセキュリティ対策を講じること。
3.2.3 衛星運用設備 衛星運用設備(追跡管制局、受信局、ネットワーク運用システム、ミッションコントロールシステム(衛星制御システム、軌道制御システムを含む))に対するサイバーセキュリティ対策を講じること。
3.2.4 衛星データ利用設備 衛星データ利用設備に対するサイバーセキュリティ対策を講じること。
3.2.5  開発・製造設備 衛星の開発・製造設備に対するサイバーセキュリティ対策を講じること。

これらの詳細については、ガイドラインを参照ください。

3.4 法令上求められる対策の分析

なお、 法令上求められる対策 については、詳細に見ていきます。

人工衛星等の打上げ及び人工衛星の管理に関する法律

宇宙活動法については、最初にみた通りです。そこで、安全基準が定められているのものべたとおりです。それを具体化している人工衛星等の打上げ及び人工衛星の管理に関する法律に基づく審査基準・標準処理期間(以下、審査基準)は、こちらです

〔人工衛星等の打上げに係る許可関係〕

項目 条項 審査基準 サイバーセキュリティに特に関連する事項
人工衛星等の打ち上げに係る許可 法第4条第1項 法第6条第1号人工衛星の打上げ用ロケットの設計
法第6条第2号打上げ施設
法第6条第3号ロケット打上げ計画及び当該ロケット打上げ計画を実行する十分な能力 13 飛行安全管制の実施
・ロケットが故障した場合の落下物に対する安全を確保するため、飛行中の状態監視を行い、必要な場合には飛行の中断を安全に行うことができるよう措置を講ずること。
法第6条第4号人工衛星の打上げ用ロケットに搭載される人工衛星の利用の目的及び方法
変更の許可 法第7条第1項 法第6条第1号から第4号に規定する基準に準ずる。
承継の認可 譲渡等 法第6条第3号ロケット打上げ計画を実行する能力に係る部分に限る

〔人工衛星の打上げ用ロケットの型式認定関係〕

項目 条項 審査基準 サイバーセキュリティに特に関連する事項
ロケットの型式認定 法第 13 条第1項 法第6条第1号人工衛星の打上げ用ロケットの設計 3 飛行安全管制のための機能(府令第7条第3号)・ロケットの位置、姿勢及び状態を示す信号を送信する機能を有するものであること。/4 飛行中断機能(府令第7条第4号)・ロケットの飛行中断措置を講ずるために必要な信号を受信する機能及び飛行中断等の機能を有するものであること。
変更の認定 法第 14 条第1項 法第6条第1号に規定する基準に準ずる。

〔打上げ施設の適合認定関係〕

項目 項目 審査基準 サイバーセキュリティに特に関連する事項
打上げ施設の適合認定 法第 16 条第1項 法第6条第2号打上げ施設 4 飛行安全管制のための無線設備(府令第8条第4号)
・ロケットの位置、姿勢及び状態を示す信号を電磁波その他を利用して受信する方法により把握する機能を有する常設又は可搬の無線設備を打上げ施設に備えることができること。ただし、当該機能を有する無線設備を備えるその他の場所を使用する場合は、この限りでない。
・ロケットの飛行中断措置の方法が信号を受信することにより行う場合においては、当該飛行中断措置を講ずるために必要な信号を、直接若しくは他の無線設備を経由してロケットの無線設備に送信する機能を有する常設又は可搬の無線設備を打上げ施設に備えることができること。ただし、当該機能を有する無線設備を備えるその他の場所を使用する場合は、この限りでない。
変更の
認定
法第 17 条 第1項 法第6条第2号に規定する基準に準ずる。

〔人工衛星の管理に係る許可関係]

項目 項目 審査基準 サイバーセキュリティに特に関連する事項
人工衛星の管理に係る許可 法第 20 条
第1項
法第 22 条第1号人工衛星の利用の目的及び方法
法第 22 条第2号人工衛星の構造
法第 22 条第3号管理計画及び当該管理計画を実行する十分な能力 4 人工衛星の管理を実行する体制の構築
・上記1から3に掲げる管理計画を確実に遂行するため、以下のとおり、適切な体制を整備すること。
-管理の組織及び業務
-異常事態への対応
-セキュリティ対策の構築
法第 22 条第4号終了措置の内容
変更の許可 法第 23 条第1項
承継の認可 譲渡等

〔損害賠償担保措置の承認関係〕

項目 条項 審査基準 サイバーセキュリティに特に関連する事項
損害賠償担保措置の承認 法第9条第2項 (ロケット落下等損害賠償責任保険契約(以下単に「責任保険契約」という。)及び法第 40 条第1項に基づくロケット落下等損害賠償補償契約(以下「特定補償契約」という。)の締結により損害賠償担保措置を講じようとする場合(府令第9条の3第2項第2号))
・当該人工衛星等の打上げに係る責任保険契約であって、次に掲げる事項を満たすものを締結していること。
① 当該人工衛星等の打上げに係る賠償措置額(以下単に「賠償措置額」という。)に相当する金額を当該人工衛星等の打上げにより与えたロケット落下等損害(特定ロケット落下等損害を除く)の賠償に充てることができるものであること。
② 法第2条第9号に則したものであること。
③ その他、本法で定める人工衛星等の落下等により生じる損害の賠償に関する制度に反する条件等が定められていないこと。
(供託により損害賠償担保措置を講じようとする場合(府令第9条の3第2項第3号))
・当該人工衛星等の打上げにより与えたロケット落下等損害の賠償に充てるものとして、賠償措置額に相当する金額以上の供託を適正に行っていること。
(責任保険契約及び特定補償契約の締結又は供託に相当する措置により損害賠償担保措置を講じようとする場合(府令第9条の3第2項第4号))
・責任保険契約及び特定補償契約の締結又は供託に相当する措置であって、次に掲げる事項を満たすものを適正に講じていること。
① 賠償措置額に相当する金額を当該人工衛星等の打上げにより与えたロケット落下等損害の賠償に充てることができるものであること。
② その他、本法で定める人工衛星等の落下等により生じる損害の賠償に関する制度に反する条件等が定められていないこと。
変更の承認 府令第9条の4第1項 損害賠償担保措置の承認に係る審査基準に準ずる。
承継の認可 合併等

 衛星リモートセンシング記録の適正な取扱いの確保に関する法律

リモセン法とも称せられますが、同法は、

我が国における衛星リモートセンシング記録の適正な取扱いを確保するため、国の責務を定めるとともに、衛星リモートセンシング装置の使用に係る許可制度を設け、あわせて、衛星リモートセンシング記録保有者の義務、衛星リモートセンシング記録を取り扱う者の認定、内閣総理大臣による監督その他の衛星リモートセンシング記録の取扱いに関し必要な事項を定める

法律です。

基本的な趣旨とは、こちらに説明があります。

法案の必要性については

  • 我が国においても、民間事業者による衛星リモセン記録の利用拡大を踏まえ、当該記録等の悪用を防ぐルールが必要。
  • 衛星リモセン記録を利用する新産業・新サービスの振興のための制度的インフラとしても重要。
  • 事業者が遵守すべき基準・ルールの事前明確化により、事業リスクを低減し、予見可能性を向上に資する。

となっています。

制度としては、

  • 衛星リモセン装置の使用に係る許可制度
  • 衛星リモセン装置の使用を許可制とし、不正使用防止措置、申請受信設備以外の使用禁止、申請軌道以外での停止、使用終了時の措置等の義務を課す。衛星リモセン記録保有者の義務

衛星リモセン記録保有者は、認定を受けた者、特定取扱機関に適正な方法により行う場合等を除き、衛星リモセン記録を提供してはならない。

->内閣総理大臣は、国際社会の平和及び安全の確保並びに我が国の安全保障に支障を及ぼすおそれがあると認める十分な理由があるときは、範囲及び期間を定めて、衛星リモセン記録の提供の禁止を命ずることができる。

  • 衛星リモセン記録を取り扱う者の認定

衛星リモセン記録を取り扱う者は、記録の区分に従い、記録を適正に取り扱うことができる旨の内閣総理大臣の認定を受けることができる。

等必要な事項が定められています。

同法

(許可の基準)第六条 内閣総理大臣は、第四条第一項の許可の申請が次の各号のいずれにも適合していると認めるときでなければ、同項の許可をしてはならない。
一 衛星リモートセンシング装置の構造及び性能、当該衛星リモートセンシング装置が搭載された地球周回人工衛星の軌道並びに操作用無線設備等及び受信設備の場所、構造及び性能並びにこれらの管理の方法が、申請者以外の者が衛星リモートセンシング装置の使用を行うことを防止するために必要かつ適切な措置が講じられていることその他の国際社会の平和の確保等に支障を及ぼすおそれがないものとして内閣府令で定める基準に適合していること。
二 衛星リモートセンシング記録の漏えい、滅失又は毀損の防止その他の当該衛星リモートセンシング記録の安全管理のために必要かつ適切なものとして内閣府令で定める措置が講じられていること。(略)
となっています。
なと、20条は
(衛星リモートセンシング記録の安全管理措置)
第二十条 衛星リモートセンシング記録保有者は、衛星リモートセンシング記録の漏えい、滅失又は毀損の防止その他の当該衛星リモートセンシング記録の安全管理のために必要かつ適切なものとして内閣府令で定める措置を講じなければならない。
となっています。そして「衛星リモートセンシング記録の適正な取扱いの確保に関する施行規則」第7条で以下のような措置が定められています。(イ、ロ、ハについて生データ 標準データとも)
措置の種別 措置
イ 組織的安全管理措置 (一) 衛星リモートセンシング記録の安全管理に係る基本方針を定めていること。
(二) 衛星リモートセンシング記録を取り扱う者の責任及び権限並びに業務を明確にしていること。
(三) 衛星リモートセンシング記録の漏えい、滅失又は毀損発生時における事務処理体制が整備されていること。
(四) 安全管理措置に関する規程の策定及び実施並びにその運用の評価及び改善を行っていること。
ロ 人的安全管理措置 (一) 衛星リモートセンシング記録を取り扱う者が、法第五条第一号から第四号まで及び法第二十一条第三項第一号イからニまでのいずれにも該当しない者であることを確認していること。
(二) 衛星リモートセンシング記録を取り扱う者が、その業務上取り扱う衛星リモートセンシング記録についての情報その他の特別の非公開情報(その業務上知り得た公表されていない情報をいう。)を、当該業務の適切な運営の確保その他必要と認められる目的以外の目的のために利用しないことを確保するための措置を講じていること。
(三) 衛星リモートセンシング記録を取り扱う者に対する必要な教育及び訓練を行っていること。
ハ 物理的安全管理措置 (一) 衛星リモートセンシング記録を取り扱う施設設備を明確にしていること。
(二) 衛星リモートセンシング記録を取り扱う施設設備への立入り及び機器の持込みを制限する措置を講じていること。
(三) 衛星リモートセンシング記録を取り扱う電子計算機及び可搬記憶媒体(電子計算機又はその周辺機器に挿入し、又は接続して情報を保存することができる媒体又は機器のうち、可搬型のものをいう。以下この項において同じ。)には、その盗難、紛失その他の事故を防止するため、電子計算機の端末をワイヤで固定することその他の必要な物理的措置を講じていること。
ニ 技術的安全管理措置 (一) 衛星リモートセンシング記録を取り扱う施設設備に、不正アクセス行為(不正アクセス行為の禁止等に関する法律(平成十一年法律第百二十八号)第二条第四項に規定する不正アクセス行為をいう。)を防止するため、適切な措置が講じられていること。
(二) 可搬記憶媒体の電子計算機又はその周辺機器への接続の制限に関する措置を講じていること。
(三) 衛星リモートセンシング記録の取扱いに係る電子計算機及び端末装置の動作を記録していること。
(四) 衛星リモートセンシング記録を移送又は電気通信により送信するときは、暗号化その他の衛星リモートセンシング記録を適切に保護するために必要な措置を講じていること。
(五) 衛星リモートセンシング記録を加工するときは、当該加工を適切に行うために必要な措置を講じていること。

外国為替及び外国貿易法

外国為替及び外国貿易法(以下、外為法といいます)25条は、(役務取引等)として

第25条 国際的な平和及び安全の維持を妨げることとなると認められるものとして政令で定める特定の種類の貨物の設計、製造若しくは使用に係る技術(以下「特定技術」という。)を特定の外国(以下「特定国」という。)において提供することを目的とする取引を行おうとする居住者若しくは非居住者又は特定技術を特定国の非居住者に提供することを目的とする取引を行おうとする居住者は、政令で定めるところにより、当該取引について、経済産業大臣の許可を受けなければならない。

特定技術について海外拠点等で管理する際等、許可を受ける必要が生じる場合があります。

これに該当する技術として

  • 人工衛星搭載用の姿勢制御装置
  • 人工衛星搭載用のコマンド/テレメトリ・データ処理装置
  •  SAR(SAR 観測衛星の場合)
  • 上記の使用のために設計したプログラム 等

があるとされます(上記ガイドライン)。

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