休憩のあとは、「ダークウエブ-軍事作戦のためのインパクト」というセッションにでました。
CDR Dr. Robert Koch, Chief Penetration Testing Section, Bundeswehr Cyber Security Centreは、「影の中に隠れて」というタイトルです。同名の論文が、論文集に所収されています(267頁以降)。
ダークウエブでの活動がどれだけ安全なのか、まずは、クリアネット、ディープウエブ(サーチエンジンからアクセスできない情報)、ダークネット(利用されていないがルート可能なIPアドレス空間)についての用語についての説明です。
次は、インターネットにおける匿名性です。Torを紹介し、匿名化を解く、ということを話しました。この非匿名化手段については、カテゴリ1、カテゴリ2、カテゴリ3にわけて議論されています。
カテゴリ1は、技術レベルです。これは、Tor自体の脆弱性を利用するものと、ブラウザを利用するものにわけられます。カテゴリ2は、設定のミスをつくものです。カテゴリ3は、ヒューマンエラーから、個人を識別するものです。例としては、ジルクロードのドレッド・パイレーツ・ロバートの話があげられます。
また、トラフィックについての監視の結果の話がなされました。
ダークウエブマーケットとそのデータです。
いろいろいな調査による違法行為の割合が紹介されました。もっとも、実際には、評価がしにくいとされました。
データを眺めてみると、機密のデータが見つかることもある、実際に具体的なシステムに対するデータ(アクセスのための情報は販売されている、また、SCADAのデータもあることはある)は、きわめてまれである、個人情報がほとんどである、ということです。
総合的なデータマネジメントにおける推奨事項としては、ダークウエブに対しても、クリアネットやディープウエブと同様の追跡を行うこと、また、ハニートークンや戦略的にデコイを配置することもあげられる、ということでした。
Dr. Andrea Melegari, Senior Executive Vice President, Expert System Spaさんは、「AI・スタイロメトリイを利用したダークウエブのアイデンティティを暴く」というタイトルです。
スタイロメトリイというのは、「著者の個々のスタイルの特色」の研究によって、文書の著者を識別するこころみということです。単語の選択、文章の構造、シンタックス、スペル、区切り方などが、著者の「指紋」を明らかにすることができます。
この手法を用いて、ダークウエブを分析しましたというのが、この報告です。報告の結論としては、有効であること、人間の分析が一般的なツールであること、AIによってより速く・安価にできることというとです。
ただし、この報告については、どうやって元のデータの著者を決めているのか、それ自体が仮説に基づいているので、有効であると評価することはできないのではないか、というのが、聞いていた先生方の評価のようです。ちょっと残念かもです。
Mr. John Gwinnup, Cyber Threat Analyst, NATO Intelligence Fusion Centreの発表は、「軍事諜報分析についてのダークウエブとそのインパクト」というタイトルです。
問題意識としては、
1)ダークウエブというのが軍事作戦にとって脅威となっているのか
2)ダークウエブが軍事作戦を支援するための諜報・情報のソースとして利用できるか、
ということです。
軍事諜報についての説明がなされたあと、ダークウエブの説明がなされました。これらに対する研究は、よくバズワードを伴って行われています。
行為者確定して責任を帰属させるために利用可能であるのか、また、Torを暴いてしまうことができるか、という問題があります。例えば、ハンザを遮断してしまったという具体的な例もあります。