フランス国防省のサイバースペースにおける作戦への国際法適用への見解(1.1 対抗する権利)

フランス国防省から「サイバースペースにおける作戦への国際法適用への見解(DROIT INTERNATIONAL APPLIQUÉ AUX OPÉRATIONS DANS LE CYBERESPACE)」が公表されています

この内容については Przemysław Roguski 先生の一連のツイートが注目すべき点をピックアップしています。

この見解の目次は、

1 平和時におけるサイバー作戦

1.1 フランスは、被害国たりうる国際法違反のサイバー作戦にたいして対抗する権利を保有(La France se réserve le droit de répondre )する

1.2 重大な影響度・深刻度の被害を惹起するサイバー作戦は、武力侵害を構成し、自衛権の行使を惹起する

1.3 発生源のサイバー作戦の帰属は、国家的政治的決断である

2 武力紛争におけるサイバー作戦についての国際法の適用

2.1 武力紛争の存在を形作るサイバー作戦

2.2 国際人権法は、武力紛争の文脈においてなされるすべてのサイバー作戦にたいして適用される

2.3 中立法は、サイバースペースに適用される

となっています。

1についてみていくと、

1.1 フランスは、被害国たりうる国際法違反のサイバー作戦にたいして反撃する権利を保有(La France se réserve le droit de répondre )する

は、

国際法のもとでは、サイバー作戦は、それ自体違法ではないが、国際法の違反を引き起こすときには、違法になる

とまとめられています。

これに引き続いて

1.1.1 主権侵害となりうるサイバー攻撃

では、領域内におけるシステムに対する主権を行使し、デューデリジェンスにもとづいて国際違法行為に利用されないようにすることが謳われています。

また、有効なコントロールのもとで、フランスの国内、外交事項に対して、デジタルなベンタを用いて政治的・経済的・社会的・文化的システムを危うくする者は、国内不干渉原則違反になるとしています。

国のデジタルシステムに侵入し、戦争/経済的可能性、国家の存続の安全保障または能力にに影響をあたえ/フランスの国内、外交事項に対して影響をあたえるサイバー攻撃は、その影響の中立化をも含むコンピュータ防御的戦闘を導くとされています。

国際法的に許容される方法のなかで、ケース・バイ・ケースで裁量のもとに対応するとされています。

1.1.2. 武力(force)脅威または行使の禁止に反しうるサイバー作戦

フランスは、物理的損害が伴った場合において武力の行使の閾値に該当しうることを認めているという宣言であり、また、物理的損害がなかったとしても、作戦の発生源、軍事的正確、侵入の程度、影響、標的の種類などから、武力の行使の閾値に該当しうることを認めています。

もっとも、それが直ちに国連憲章51情の武力攻撃(armed attack)に該当するものではないともしています。

1.1.3 国際法の準備する回答

フランスは、攻撃に対して、防止、予期、防衛、探知、対応する種々の手法をとるとされています。サイバー攻撃に対して、国内、国際的なパートナーとともに、予期、探知、対応するためにサイバー防衛作戦を行うとされています。

そのあと、被外国として国際法に基づいた対抗措置を採用する旨が説かれれますが、集団的対抗措置の概念は、否定されています。すなわち、サイバー的手法であれ、なかろうと、深刻さを考慮に入れて被害に比例するものである必要があります。

さらにフランスは、遭難(de détresse )や緊急避難( de nécessité )の理論を適用することもありうる、とされています。

 

 

 

 

 

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