「関西空港にドローン?」という記事がでています。
この場合に、空港の施設管理者は、何ができるのか、というのを法的にみていくことにします。
まず、記事的には、「航空法に基づき、空港滑走路付近でのドローンの飛行は禁じられている」とされています。
航空法の規定については、飛行禁止空域の規定、飛行の方法の規定が適用されます。
同法132条(飛行の禁止空域)は、「何人も、次に掲げる空域においては、無人航空機を飛行させてはならない。ただし、国土交通大臣がその飛行により航空機の航行の安全並びに地上及び水上の人及び物件の安全が損なわれるおそれがないと認めて許可した場合においては、この限りでない。
一 無人航空機の飛行により航空機の航行の安全に影響を及ぼすおそれがあるものとして国土交通省令で定める空域
二 前号に掲げる空域以外の空域であつて、国土交通省令で定める人又は家屋の密集している地域の上空」と定めています。
具体的な、飛行の禁止空域のイメージは、こちらになります。
ですが、まさに今は、ワールドカップ期間中ですので、「「平成三十一年ラグビーワールドカップ大会特別措置法」17条に基づき、指定された期間中は、対象空港においては全ての小型無人機等の飛行が原則禁止となっています。もっとも、対象の空港は、新千歳空港、成田国際空港、東京国際空港、中部国際空港、関西国際空港、福岡空港、大分空港ですから、関西空港は、これには、入らないわけです。
これが指定空港だとすると、空港の管理者は、法的に、何ができるのだろう、ということになります。
「ラグビーワールドカップ大会特別措置法」18条において、上の対象空港は、小型無人機等飛行禁止法の対象施設とみなされます(同法18条)。18条2項は、
対象空港として指定された施設の管理者は、前項の規定によりみなして適用される小型無人機等飛行禁止法第九条第一項又は第三項本文の規定に違反して小型無人機等の飛行が行われていると認められる場合には、当該施設における滑走路の閉鎖その他の当該施設に対する危険を未然に防止するために必要な措置をとるものとする。
と定めています。
たとえば、この飛行禁止の定めに反して、飛行している無人機にたいして、どのような対応がとれるのか、という問題がでてきます。
警察官は、小型無人機等飛行禁止法10条で、
小型無人機等の飛行が行われていると認められる場合には、当該小型無人機等の飛行を行っている者に対し、当該小型無人機等の飛行に係る機器を対象施設周辺地域の上空から退去させることその他の対象施設に対する危険を未然に防止するために必要な措置をとることを命ずることができるともに、命ぜられた者が当該措置をとらないとき、その命令の相手方が現場にいないために 当該措置をとることを命ずることができないとき又は同項の小型無人機等の飛行を行っている者に対し当該措置をとることを命ずるいとまがないときは、警察官は、対象施設に対する危険を未然に防止するためやむを得ないと認められる限度において、当該小型無人機等の飛行の妨害、当該小型無人機等の飛行に係る機器の破損その他の必要な措置をとることができる
という権限を有しています。この「飛行の妨害、当該小型無人機等の飛行に係る機器の破損その他の必要な措置」は、国会審議において「警察においては、対象施設等の上空を違法に飛行しているドローンを発見した場合において、当該ドローンの退去等を命じることができないときは、ジャミング装置、迎撃ドローン、ネットランチャー等の資機材を活用するなどして、違法に飛行するドローンによる危害を排除することとしております。」という回答がなされています(河野政府参考人(第198回国会 内閣委員会 第12号(平成31年4月12日(金曜日)))http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/000219820190412012.htm)。
これと、「滑走路の閉鎖その他の当該施設に対する危険を未然に防止するために必要な措置」というのは、どのような違いがあるのか、ということになります。民法的には、空港管理者には、妨害排除請求権もあるし、相当性・必要性あれば、自力救済として、一定の実力行使も認められそうです。しかしながら、これらの用語の違いは、空港管理者による実力の行使を排除しているようにも読まれかねません。その一方で、実力の行使を当然に認めるということになるのか、という問題もあるでしょう。どのようにして、バランスをとるのか、ということが問題になりそうです。また、このための空港管理者のなしうる措置としては、上のジャミングなどの電波的な手段(その意味では、サイバー的な手法でしょうを用いることになるかと思います。サイバー的な手法でもって、場合によっては、違法な無人機を乗っ取ってまで、防衛するということも考えられます。民間主体によるアクティブサイバー防衛なのかもしれません。IoTの防衛ということになるかもしれませんが。