「空港にドローン見逃さない」という記事がでています。読売新聞(令和元年11月9日 朝刊)(オンラインは、読者限定です)。
趣旨は、国土交通省は、「ドローンが発する電波を検知して位置を特定し、監視画面に表示する」仕組み(推定)のシステムを導入する予定ということです。
でもって、電波の関係になると、電波法59条の秘密の保護(通信の秘密という人もいる)の規定との関係について考える必要があります。
電波法59条は、
何人も法律に別段の定めがある場合を除くほか、特定の相手方に対して行われる無線通信(電気通信事業法第四条第一項又は第百六十四条第三項の通信であるものを除く。第百九条並びに第百九条の二第二項及び第三項において同じ。)を傍受してその存在若しくは内容を漏らし、又はこれを窃用してはならない。
となっています。これは、電気通信事業法において、積極的な取得が禁止されているのと比較した場合に、構成要件に該当する行為が、「傍受してその存在若しくは内容」
を「漏らし」(漏えい)と「窃用」の二つに限定されているというのが興味深いところにあります。(これは、私のブログでも何回か触れていますね。代表例をご紹介)
ところで、「ドローンが発する電波を検知して位置を特定し、監視画面に表示する」って、「窃用」になるんじゃね、みたいな見解が、霞が関のとあるビル(×○階)からでてくる可能性があるように思えます。
「窃用」は、「正当な理由なく発信者または受信者の意思に反して利用すること」になります。(平成16年04月13日 衆議院 – 総務委員会 – 13号有冨政府参考人(総務省総合通信基盤局長) 発言)
無線通信を傍受するのは、(電気通信事業者の取扱にかかるものでないかぎり)刑事罰が課されることはありまん。
でもって、空港管理者は、小型無人機等が、空港の飛行禁止空域を飛行していないか、把握するべき義務があるということになるかと思います。
関連する法律を見てみましょう。
平成三十二年東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会特別措置法(平成二十七年法律第三十三号)30条では、
国土交通大臣は、空港法(昭和三十一年法律第八十号)第4条第1項各号に掲げる空港のうち、大会の選手その他の関係者の円滑な輸送を確保するためにその施設に対する小型無人機等の飛行による危険を未然に防止することが必要であると認めるものを、対象空港として指定することができるとされている(同1項)。
となります。そして、同法31条2項では、
前条第一項の規定により対象空港として指定された施設の管理者は
、前項の規定によりみなして適用される小型無人機等飛行禁止法第九
条第一項又は第三項本文の規定に違反して小型無人機等の飛行が行わ
れていると認められる場合には、当該施設における滑走路の閉鎖その
他の当該施設に対する危険を未然に防止するために必要な措置をとる
ものとする。
となっています。空港の施設管理者は、「違反して小型無人機等の飛行が行わ
れていると認められる場合」には、「危険を未然に防止するために必要な措置をとるものとする。」となっています。
ここで、「違反して小型無人機等の飛行が行われていると認められる場合」には、となっているのが、認めるためになす行為が前提となっているので、無線傍受の結果を利用するのは、当然だろうと個人的には思います。
そもそも、「法執行機関が適法に取得した情報の内容を確認する行為について、押収書類の内容を確認するのと同一であることから、特段、別個に令状はいらないというのは、異論のない」ところなので、それと同様に適法に取得した情報の内容を自己の業務のために利用するのは、当然に「正当な理由」があるものと考えられます。(細かくいうと、自己または他人の利益のためではなく、公共の利益のために利用しているのだ、というべきだと思います)
ところで、「危険を未然に防止するために必要な措置をとる」というところで、空港管理者は、みずから、ドローン捕獲ネットやらジャミングガンを使えませんか、という問題があるかと思います。条文上「滑走路の閉鎖その他」という例示行為で限定されているところをどう考えるかという問題です。この点については、他の国の状況などをも調べて、バランスのいいところを考えるべきかと思います。
あとは、脱線ですが、電波法は、きちんと「窃用」という用語を使っています。電気通信事業法には、ない用語なので、これが設けられた経緯を調べることができると、また一つ、数奇な運命をたどることができるかもしれません。
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なお、私は、無法協(無線法律家協会)メンバーでありますが、上の見解は、無法協とは一切関係のないコメントであることをお断りしております。(電波法がいかにIoT時代に重要かというのを議論できる新規会員募集中です)