「北朝鮮のサイバー攻撃、国連安保理も対象に 専門家パネル報告書」という記事がでています(8月4日 日経新聞)。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO62283360U0A800C2FF8000/
AP通信の記事をもとにしたNY Timesの記事は、こちら
内容的には、最終の報告書が明らかにされるが、
そこでは、サイバー攻撃を安保理の理事国や専門家パネルにも向けている実態がわかった。
というものです。
この専門家パネル報告書というのは、国連安保理の決議1874(2009)によってに設けられた専門家パネルになります。決議の和訳は、こちらです。
制裁委員会自体は、決議0718(2006)によるものです。
専門家委員会は、いままでに、北朝鮮の国連安保理決議違反についての報告をなしています。
このテーマに関連する議論の経過についてのノートは、すでに公表されています。
CCD CoEの分析のノートは、こちらです。
ノートのサイバーの部分を訳出すると
パネルによると、北朝鮮は、安保理加盟国の国連代表(S/2020/151、パラグラフ115~116)、制裁委員会、専門家パネル(同上、パラグラフ117~118)など、サイバー手段を用いてさまざまな主体や個人を標的にしている。インドの宇宙研究機関とクダンクラム原子力発電所(同書、パラグラフ119)、韓国の大宇造船海洋工学有限公司(同書、パラグラフ119 Ltd. S/2018/171, para.121)では特に、これらに対するサイバー攻撃は武器禁輸に関する制裁違反の可能性があるとの見方を示した。
北朝鮮はまた、世界中の銀行や暗号通貨取引所を標的とし、暗号通貨のマイニング(S/2019/691、パラ66)や暗号ジャッキング(S/2019/691、パラ67)を行っている。最もよく知られている事例は、2016年のバングラデシュ銀行のサイバー強盗事件であり、その間に8100万ドルの送金に成功した(S/2019/171、パラ.112)、2017年のWannaCryランサムウェア攻撃であり、150カ国の20万台以上のコンピュータに影響を与え、北朝鮮に広く帰属するとされた(S/2019/171、p.49、n.106、パラ.114、S/2019/691、パラ.64~65)。パネルが調査中の事例の包括的なリストは、S/2019/691の附属書21に掲載されている。パネルは、サイバー攻撃によってもたらされた収入の総額を約20億ドルと推定し(S/2019/691、パラグラフ57)、このような収入が北朝鮮の大量破壊兵器(WMD)計画の資金源となっていることを指摘している。同書は、「安全保障理事会は、今後の追加制裁措置の草案を作成する際には、北朝鮮のサイバー手段による制裁回避に明確に対処することを検討する」よう勧告している(S/2020/151, para.184)。そのための追加制裁措置には、「電信、無線、その他の通信手段の完全または部分的な中断」(国連憲章第41条)が含まれる可能性がある。
となっています。
報告書の性質からいって、制裁の実際の適用と、それに対する制裁逃れの実態についての報告書になるかと考えられて、サイバーの部分は、その一部になりそうですが、北朝鮮の実態は、ニュースバリューがあると考えられるのかと思います。
最終報告書においては、上述の部分についてのサイバー攻撃の事実が認定されて、それらが北朝鮮の制裁逃れという認定がなされることになるものと考えられます。
ちなみ米国のアラートは、こちらです。