日米豪印戦略対話(QUAD)に関して、9月24日から第2回日米豪印首脳会合が、ワシントンDCで開催されました。
議論内容について、ポイントは、こんな感じです。
- 地域の安全と繁栄のため、「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向け取り組んでいくことを再確認
- 4か国の協力を一層強化していくこと、また、法の支配、航行及び上空飛行の自由、紛争の平和的解決、民主的価値、領土の一体性といった原則の支持
- 「自由で開かれたインド太平洋」、インド太平洋に関するASEANアウトルック」等のASEANの一体性及び中心性に対する強い支持、EUの「インド太平洋における協力のための戦略」も歓迎
- ワクチンの生産拡大、インド太平洋地域への供給を含め、新型コロナ感染症対策への引き続いての協力等
- 重要・新興技術、気候変動に関する作業部会でも着実に成果が積み上げられていることを確認(重要・新興技術に関して、「技術の設計・開発・ガバナンス及び利用に関する日米豪印原則」声明を採択)、また、バイデン大統領が主導する「グローバル・メタン・プレッジ」への参加を表明
- インフラ、海洋安全保障、テロ対策、サイバー・セキュリティ、人道支援・災害救援を始め、様々な分野で実践的な協力-さらに、宇宙、サイバーの分野で作業部会等を立ち上げ-クリーン・エネルギー、人的交流といった分野でも協力を強化する
- アフガニスタンを二度とテロの温床にさせないよう国際社会が緊密に連携して対応
- シナ海、南シナ海情勢-4か国の首脳は、国連海洋法条約を含む国際法を始めとするルールに基づく海洋秩序への挑戦に対抗するため、連携していくことで一致、香港、新疆ウイグル、台湾に関する我が国の基本的立場を述べた
- 北朝鮮-弾道ミサイル発射は安保理決議に明白に違反するものであり、強く非難など
- ミャンマー情勢について、菅総理から、ミャンマー国軍に対し、暴力の即時停止、アウン・サン・スー・チー国家最高顧問を含む被拘束者の解放、民主的な政治体制の早期回復を粘り強く求めてきている旨等
- 日米豪印のモメンタムを今後も維持・強化していくことを確認し、今後毎年、日米豪印首脳会合を開催することで一致
ということです。でもって、個人的に、興味のある重要・新興技術、サイバー・セキュリティ、宇宙についてみていきます。
重要・新興技術(critical emerging technology)
重要技術の重要性のイメージの図としては、
となるかと思います。
共同声明だと
我々は、技術の設計、開発、ガバナンス及び利用に関する方法が、我々が共有する価値と普遍的人権の尊重によって形成されるよう、重要・新興技術における協力を確立した。我々は、産業界と協力し、安全で、開放的で、透明性のある5G及びビヨンド5G通信網の展開を進めるとともに、技術革新を促進し、信頼できるベンダーやオープンRANのようなアプローチを促進するため、幅広いパートナーと協力している。我々は、5G多様化を可能にする環境を促進するにあたっての政府の役割を認識しつつ、官民協力を促進し、開放的な標準に基づく技術の拡張性やサイバーセキュリティを2022年に実証するために協力する。技術標準の発展に関しては、我々は、開放的で、包摂的で、民間主導で、マルチステークホルダーによる、コンセンサスに基づくアプローチを促進するため、特定セクターに関するコンタクトグループを設立する。
また、我々は、国際電気通信連合等の国際標準化機関において連携及び協力する。我々は、半導体を含む重要技術及び物資のサプライチェーンをマッピングしており、透明性があり市場志向の政府支援措置及び政策の重要性を認識しつつ、重要技術に係る強靱で、多様性があり、安全なサプライチェーンへの前向きなコミットメントを確認する。我々は、バイオ技術に始まり、未来の重要・新興技術の動向のモニタリングを実施しており、関連する協力の機会の特定を進めている。また、我々は、地域だけでなく世界を、責任ある、開放的で、高い水準の技術革新へと導くことを期待して、本日、技術の設計、開発、ガバナンス及び利用に関する日米豪印原則を発出する。
となっています。ファクトシートにおいては、
- 原則に関する日米豪印声明を発表する
- 技術標準コンタクトグループを発足させる
- 半導体サプライチェーン・イニシアティブを立ち上げる
- 5G展開・多様化を支持する
- バイオ技術の動向調査を実施する
とされています。「技術の設計、開発、ガバナンス及び利用に関する日米豪印原則 」というのは、こちらになります。
日米豪印各国(豪州、インド、日本及び米国)は、技術の設計、開発、ガバナンス及び利用に関する方法は、我々が共有する民主的な価値及び普遍的人権の尊重によって形成されるべきであることを確認する
というのが根本の理念で、具体的には、
- 普遍的な価値の擁護
- 信頼性、健全性及び強靱性の構築
- 科学技術のフロンティアを推進させるための健全な競争と国際的な協働の促進
の三つの原則に従うこと(それぞれは、更に細かい原則に分かれる)とされています。
ウエイトという感じですと、今回の首脳会談では、この重要・新興技術関連の議論が注目されるように思われます。
サイバーセキュリティ
これについては、サイバー脅威に対する重要インフラの強靭性を強化するための新たな取組を開始するとされ、具体的には、
日米豪印サイバー上級グループを立ち上げる:指導部レベルの専門家は、共有されたサイバー標準の採用及び実装、安全なソフトウェアの開発、労働力及び才能の育成並びに安全で信頼できるデジタルインフラの拡張性及びサイバーセキュリティの促進を含む分野における継続的な改善に向けた政府と産業界との間での作業を推進するべく、定期的に会合する。
とされています。
宇宙
- 日米豪印は、新たな作業部会により初めて宇宙協力を開始する。
- 特に、我々のパートナーシップは、気候変動への監視及び適応、防災並びに共通の領域における課題への対応に焦点を置き、衛星データを交換する。
とされています。
また、「持続可能な開発のための能力構築を可能にする」「規範及びガイドラインについて協議する」とされています。
この最後の部分については、
宇宙環境の長期的な持続可能性を確保するための規範、ガイドライン、原則及びルールについて協議する。
となっていますので、宇宙ゴミ問題についての議論が本格化するものと思われます。