ブロッキングと通信の秘密に関する考察を含んでいる「諸外国におけるインターネット上の権利侵害情報対策に関する調査研究の請負」報告書が公開されました。
リンクは、http://www.soumu.go.jp/main_content/000565925.pdfです。
同報告書につきましては、研究体制等についての「はしがき」部分がありませんでしたので、以下のご挨拶でもって「はしがき」にかえさせていただきます。
公開についてのごあいさつ
株式会社ITリサーチ・アート代表取締役 高橋郁夫
本報告書は、2016年3月時点におけるいわゆる「権利侵害情報」に対しての種々の法域における対応をまとめたものです。「権利侵害情報」とは、「流通により他人の権利を侵害する情報」をいいます。具体的には、 名誉毀損情報、プライバシ侵害情報、著作権侵害情報等があります。
わが国においては、電気通信事業法において、通信の秘密を侵してはならないとされており(同法4条)、上記権利侵害情報に対して、ISPがどのような役割を果たすべきか/また、何らかの活動をなす場合にどのような根拠から許容されるのかという観点からも、具体的な議論がなされています。
その意味で、権利侵害情報に関して「通信の秘密/ISPの活動/社会における安全との調和に関する具体的な制度の適切な運用」がもっとも重要な課題の一つであるということができます。そのために、国際的な観点から、制度に関する基礎情報を独立した専門的な立場から収集することを調査の目的とした調査の結果の報告書になります。
上記の目的のために、当社は、
調査委員長
曽我部真裕(京都大学 法学研究科 教授)
のもと、
高橋郁夫(弁護士(駒澤綜合法律事務所)/宇都宮大学工学部講師/株式会社ITリサーチ・アート代表取締役)
がプロジェクトマネージャーとして
宮下紘 (中央大学 准教授)
笠原毅彦(桐蔭横浜大学 教授)
有本真由(弁護士/小川綜合法律事務所)
原田學植(弁護士/東京神谷町綜合法律事務所)
佐藤寧(弁護士/株式会社ITリサーチ・アート/駒澤綜合法律事務所)
からなる調査委員会を構成しました。
また、現地調査員として
Richard Abott(弁護士/ITコンサルタント)
Jonathan Armstrong(弁護士/ロンドン Cordery Compliance Limited)
Frédéric Sardain(弁護士/フランス・パリ Avocat a la Cour de Parisパリ控訴院付き弁護士)
Prof. Dr. Borges(ドイツ・ザールラント大学法情報研究所所長)
Stefan Mele(弁護士/イタリア ミラノCarnelutti Law Firm, Ce.Mi.S.S. (Italian Military Centre for Strategic Studies)
Dr.Grace Li教授(シドニーテクノロジー大学)
Taeeon Koo弁護士(ソウル TEK法律事務所)
台湾 情報工業策進會科技法律研究所
からの助力をえました。
折しも、わが国において、著作権に基づくブロッキングが許容されるべきかという議論がなされており、特に、比較法的な知見に基づいて具体的な立法論的な提案がなされるべき時期がきたものと考えられ、その時期に間に合うように、本報告書が公開されたのは、非常に幸いです。
この報告書が、著作権をめぐるブロッキングの議論に役立つことを祈っています。