「EUが米グーグルに制裁金50億ドル、過去最高額 自社OSを乱用」という報道がなされています。
正式なプレスリリースは、こちらのページです。
このブログ(駒澤綜合法律事務所)においても、「アップル信者の存在の科学的証明?-Googleアンドロイド事件」というタイトルのもと、事実認定について、まとめています。
Googleの関係する事件としては、比較ショッピングサイトに関する事件(グーグル・ショッピング事件と呼ばれているようです。エントリとしてはこちら(「欧州委が示す巨大ネット企業の責任」)、プレスリリースはこちら)と、このアンドロイド事件(40099)、AdSenseの事例(これはまだ分析していません)があります。
今回のアンドロイド事件のプレスリリースですが、まずは、「スマート携帯OS」の競争について考察しています。
アップルとスマート携帯電話についての市場は、競争になっているようだけども、現実のところ、「グーグルのデバイス製造会社(上流)に対する行動の制約としては、十分になっていない」と認定しています。
要は、アップルは、信者がいるので、市場としては別であると認定しているんじゃないの、ということです。(これは、昨年のブログでふれたところ)。
グーグルは、アンドロイドというOSの市場において、ドミナントであると認定されています。確かに、中華スマホじゃないと、グーグル・プレイストアがないスマホにはあえないのは事実ですね(90パーセント以上と認定されています)。
それでもって、EUの競争法違反の事実としては、以下の事実が認定されています。
(1)グーグルの検索とブラウザアプリの違法な抱き合わせ(Illegal tying of Google’s search and browser apps)
これは、プレイストアのプリインストールが製造業者にとって必須とされていることを意味します。
委員会の認定としては「検索アプリの抱き合わせ」「クロームブラウザの抱き合わせ」をしており、「製造業者に対して、競争する検索・ブラウザアプリをプリインストールするインセンティブを減少させた」としています。これに対する、これらのプリインストールが必要だったというグーグルの主張は採用されませんでした。そこでは、「グーグルは、数ビリオンドルをプレイストアから、稼ぎだしており、アンドロイド機器から、検索広告ビジネスに必要なデータを集めている。制限なしに、検索広告から重要な利益を稼ぎだしうるのである」から根拠がないとしています。
去年の事実認定は、一般ユーザとの間での「ライセンス可能なスマートフォンOS市場」といっていました。製造業者の自由なアンドロイドの製造の自由をみとめないことが、消費者の便益を妨げるというようにと重点が変わっているようです。
(2) グーグル検索の排他的プレインストールに対する違法な支払い(Illegal payments conditional on exclusive pre-installation of Google Search)
これは、グーグルが、グーグル検索を排他的にインストールすることに対してインセンティブを支払っていることが、違法であるとしています。
競争的検索エンジンを採用することに対してインセンティブを減少させ、競争を傷つけるというものです。
インテル決定でもふれたように、委員会は、諸般の事情を考慮して、インセンティブが認められる条件、額、マーケットシェア、期間から判断したとしています。そして、違反行為は、2011年から、2014年までの間であり、2014年には、終了したと判断されています
(3)競争するアンドロイドの発展・配布に対する違法の妨害(Illegal obstruction of development and distribution of competing Android operating systems)
これは、製造業者に対して、グーグルの認めないアンドロイドバージョン(アンドロイド・フォーク-Android forks)を利用することを妨害したというものです。プレイストアと検索エンジンをプレインストールするためには、アンドロイドフォークを製造しないことを約束させられたのが、これに該当します。委員会は、アマゾンが、Fire OSを発売し、発展させるのを妨げていると認識しています。
「断片化」防止のためには、必要だったという主張に対しては、技術要件を満たすことでもって、アンドロイドフォークを妨害しなくても、望む目的は果たせたはずであるとか、アンドロイドフォークが、技術的失敗によるとかの証拠はないとしています。
モバイルOS市場と、検索・ブラウザが別市場で、OSの市場力でもって、検索・ブラウザ市場を制覇したというのでしょうか。IE4.0にケンカうって、欧州では、消費者にとって、何かいいことがあったのでしょうか。
日本の感覚だと、iOSとアンドロイドは、競争状態にあり、検索・ブラウザの体験も踏まえて、どちらにするかを選んでいるように思えます。欧州でのモバイル市場は、消費者の認知からすると別なのかと思いますが、IT業界に対する競争法の適用が、その介入のためのコストがかかることも含めて、効果は、微妙だなあと感じるところですね。
(いまさら、野良アンドロイドの製品は、買いたくないというのが消費者の感覚でしょうし)