「ネットワーク中立性の在り方に関する研究会」

「ネットワーク中立性の在り方に関する研究会」は、前の「電気通信事業分野における競争ルール等の 包括的検証の検討体制について」でふれましたけど、新設の研究会になります。
資料によると
「ネットワークを巡る環境が大きく変化してきていることを踏まえ、ネットワーク利用及びコスト負担の公平性や透明性確保の在り方等を検討するため、「ネットワーク中立性の在り方に関する研究会」を開催する」ということだそうです。
検討事項は、
(1)電気通信事業者、コンテンツプロバイダ、オンライン・プラットフォーマー、利用者など、関係者間におけるネットワーク利用及びコスト負担の公平性の在り方
(2)新たなビジネスモデルに適用されるルールの明確化
(3)利用者に対する情報提供(透明性確保)の在り方
(4)その他
です。
でもって、「「ネットワーク中立性に関する研究会」の開催及び提案募集の実施」がでていて、主な論点が整理されています。

(1)現状及び課題の把握
ネットワークの混雑状況や、トラヒックの増加に対応するための関係者の取組/ 米国(連邦レベル、州レベル)やEU(加盟国レベルのものを含む)等におけるネットワーク中立性に関する政策動向

(2)ネットワーク利用及びコスト負担の公平性の在り方

  • a)ネットワーク関係者間のコスト負担、特定関係者間における契約におけるネットワークのコスト負担の在り方(固定ブロードバンドサービス(定額制)、モバイルブロードバンドサービス(従量制、上限付き定額制の料金モデル))
  • b)特定のトラヒックを優先することは認められるべきか。
  • c) 適切なネットワーク管理を目的として、認められる範囲をどのように考えるべきか。(ヘビーユーザーに対する帯域制御、特定コンテンツの不可逆圧縮等)

(3)具体的なビジネス動向への対処

  • a) ゼロ・レーティングやスポンサードデータ等のビジネスモデル
  • b)ネットワーク中立性の確保のための施策
    -> 確保するための手段
    公開、サービス品質のモニタリング、紛争解決手段の活用等)
    -> 電気通信事業者が公開すべき情報
    消費者、影響を受けうる他のインターネット利用者、コンテンツ事業者、他ISP、MVNO等

です。
私としては、実は、ネットワーク中立性は、結構、詳細にエントリにまとめています。「ネットワーク中立性講義」というタイトルで
(1)背景
(2)エンド・ツー・エンド原則と議論の契機
(3)米国の議論(2008年まで)
(4)同(2014年まで)
(5)同(ゼロレーティングの包摂)
(6)同(トランプ政権前)
(7)同(トランプ政権の動き)
(8)日本における通信法との関係
(9)競争から考える(1)
(10)競争から考える(2)
(11)競争から考える(3)
(12)競争から考える(4)
(13)競争から考える(5)
(14)ゼロレーティングと利害状況(1)
(15)ゼロレーティングと利害状況(2)
という形で、整理しています。
特に、上の(8)であげたように、ネットワーク中立性という用語は、①利用者の権利とテイクダウン、責任の問題(ブロッキング、帯域制限の問題)②利用者の利用行動の了知の問題題③利用と対価の公平性の問題 ④サービスの質と超過価格⑤契約における透明性の問題/コンテンツによる区別的取扱⑥ 接続サービスと公平な競争 ⑦その他の問題 という問題を束ねる傘の役割をしているということになります。
わが国では、電気通信事業法の解釈として、相当部分の問題が解決済みということがいいように思っています。(ネットワーク中立性が「新たな問題」というような表現はしないほうがいいでしょうね)
上の問題提起は、個別の問題ごとにわけてみていくといいような気がします。

  • ネットワーク関係者間のコスト負担->③利用と対価の公平性の問題⑥ 接続サービスと公平な競争
  • 特定関係者間における契約におけるネットワークのコスト負担の在り方(固定ブロードバンドサービス(定額制)、モバイルブロードバンドサービス(従量制、上限付き定額制の料金モデル))->④サービスの質と超過価格
  • b)特定のトラヒックを優先することは認められるべきか。>④サービスの質と超過価格
  • c) 適切なネットワーク管理を目的として、認められる範囲をどのように考えるべきか。(ヘビーユーザーに対する帯域制御、特定コンテンツの不可逆圧縮等)->①利用者の権利とテイクダウン、責任の問題(ブロッキング、帯域制限の問題

というような感じでしょうか。
ある意味で、問題を法的に分類した段階で、ほとんど解決するような感じでしょうか。基本的には、市場が問題を解決するので、市場の対応に委ねられない問題としてどのような問題が起きているのか、ということでしょう。しかも、法としては、競争に対する対応の部分においても、制定法においても、また、ない部分については、解釈についてのガイダンスが公にされてるところです。
「(3)具体的なビジネス動向への対処」についても同様ですね。
この論点は、2年前に調査が公募でかかっていて(平成28年度 「欧米等諸外国におけるネットワーク中立性に係る政策動向に関する調査研究の請負」)、ITリサーチアートは、落札できなかったのが残念ですね。
 
 

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