無法協での勉強会でのお話を電波法からみる「通信の秘密」としてまとめてみました。(1) (2)、(3)、(4)です。
そして、「通信の秘密」を通信データ部分と内容にわけて考えるべきではないかという観点から、e証拠規則・指令も検討しました。(通信のデータについてのクラスわけ(1)(2)(3)(4)(5) (6))
実際の勉強会では、このあとに、著作権に基づくブロッキングと比較法的な検討も紹介しました。
この件については、スライド、会社の報告書がありますので、再度ふれることは省略します。
このような基礎的な調査も基づいていくと
「通信の秘密」に該当するとされるデータについて「内容」に関する事実と「存在」に関する事実をわけて、その保護のレベルに、差異を認めるべきではないか
ということがいえるわけです。
保護のレベルに差異というのは、
- 「存在」に関する事実については、社会的に許容される手法による場合には、それ自体が「積極的な」取得とは解されない
- 他の基本権との衝突時においては、「存在」に基づいて、合理的な規制をなすことが許容されるのではないか
ということです。
それと、
- 許容されたルールに基づく機械的な処理については、「自己または他人の利益のために」という要件を満たさないといえないか。
とか、
- 一般的な探知禁止と「具体的な悪意」の告知時は別なのではないか、
という理論を組み合わせていくと、現代社会においてインターネット媒介者の合理的な役割を果たすべき枠組を構築することができるのではないか、ということが考えられるのです。
研究会でも、いろいろなご指摘をいただきました。
- 電気通信事業法の解釈については、確立した解釈なので、動かすのは、なかなか厳しいのではないか。
- 憲法が出てくるのは、法律を制定するときであって、政府による「義務づけ」をするときには、「知る権利」との関係があろう。
- 司法によるブロッキングが有効なのは、プロバイダの市場構成(欧州では、寡占化が進んでいる)に大きくよるのではないか。
- 諸外国では、「通信の秘密」の問題とは解されていない。逆に、表現の自由との関係ではないか。
- 結局は、プロバイダを導管とみるのか、もうすこし、社会のなかで役割を果たすべきものとみるのか、費用負担もフランスでも、プロバイダに費用負担させてもかまわないという判断がなされている。
- 周波数帳は、どうなるのだろうか、とか、でれでも聞ける無線通信というのの秘密というのは、なんなのだろうか、という議論もなされました。
- 通信の結果の公表は、どうなのだろうか、(片側当事者の同意でいくのだろうか)というのも面白い論点でした。
などの意見をいただきました。私にとっても、非常に勉強になりました。意見をいただきました先生方、勉強会の場を設定いただいた無法協には、本当にありがとうございます。