衛星からの無線インテリジェンス(リモートセンシング)と電波法の通信の秘密

無線通信の「通信の秘密」の歴史のエントリで、主として米国における無線通信の「通信の秘密」について簡単にみたのですが、FBで

アメリカ連邦法は,宇宙空間から来る電波には適用されるのですか?

という質問を受けたので、ちょっと考えてみました。

多分、衛星からの通信を受信したり、地表面からの電場を衛星で分析しようという動きがあるのだろうと思います。ということで、このような衛星通信のインテリジェンスについてみてみます。

1 無線インテリジェンスの「民主化」-RAND報告書

1.1 シギントの民主化

無線に関するインテリジェンスというのを考えてみます。

インテリジェンスというのは、元来、政府(防衛・法執行)のものですが、非政府のインテリジェンスというのを考えないといけなくなってきているということになります。その点についてふれているのが、RAND Corporationの「みんなのためのSIGINT」(SIGINT for Anyone The Growing Availability of Signals Intelligence in the Public Domain)(2017)というレポートになります。

このレポートのポイントは、

政府機関以外の誰もが利用できるシギント能力の例を発見した。我々が発見した能力は、海域認識、無線周波数(RF)スペクトラム・マッピング、衛星通信の盗聴、妨害、ハイジャック、サイバー監視などに応用されている。これらの能力のほとんどは商業的に入手可能であり、多くは無料である。合法・非合法両方の市場や能力が存在するということは、シギントが民主化された、つまり誰でも利用できる環境になったということである。

としています。

ここで、民主化というのは、

何かを望む人が誰でもアクセスできるようになることを表す

ものです。政府・商業化・民主化をそれぞれ図示すると以下のようになります。

政府のみの能力 能力は政府によって構築され運用されている、または能力は商業プロバイダによって構築され運用されているが、政府のみがアクセス可能である
商業化 能力は合法的な市場で購入可能である
民主化 能力は合法的または非合法的に、購入または無料で、利用可能/DIYもある

でもって、上で記載したように海域認識、無線周波数(RF)スペクトラム・マッピング、衛星通信の盗聴・妨害・ハイジャック、サイバー監視への利用が記載されています。衛星通信の盗聴・妨害・ハイジャックについては、私のブログのうち

で記載しています。なので、海域認識、無線周波数(RF)スペクトラム・マッピング、サイバー監視への利用を分析します。

1.2 海上領域認識(Maritime Domain Awareness)

海事領域認識とは、

安全保障、安全、経済、環境に影響を与える可能性のある海事領域内の船舶や物体を効果的に把握すること

をいいます

自動船舶識別装置(AIS) は、船舶の自動追跡システムとして開発されました(1990年代)。この概要のページとして「AISをもっと活用しよう」(第十管区海上保安本部)ページがあります。

その後、2002年に発効したSOLAS条約(海上における人命の安全のための国際条約)により、が一部の船舶にAISの使用を義務付け、AISを必要とする船舶の数は時間の経過とともに拡大していきました。現在、AISは300トン以上のすべての国際船舶とすべての旅客船に義務付けられています(AIS搭載義務船はこちら)

SOLAS条約は、こちら(1974版)英語。 英語の解説は、こちら。文書のリストは、こちら。無線関係は、「第四章 無線電信及び無線電話」です。

当初、船舶からのAIS送信は、海岸沿いに設置された地上局で受信されていたのですが商用衛星を利用したAISの出現により、受信範囲は外洋にまで拡大しました。 2005年、多くの政府機関や民間企業が、衛星受信機を使ってAISを探知する実験を開始しています。

2008年以降、いくつかの民間企業がAIS受信機を搭載した衛星コンステレーションを展開しています。具体的には、

などがあります。なお、RAND報告書では、exactEarthがあげられていますが 、 上のSpireが買収しました(船舶情報を提供するSpireが上場後初の買収を発表。狙いは高成長産業への事業領域拡大)。

これらの企業は、衛星AISデータに基づく海事領域認識製品を、しばしば他のデータ源と組み合わせて提供している。また、ユーザーや再販業者に衛星AISデータ・フィードを提供し、AISデーを他のソースと組み合わせて独自の製品を生成することもできる。

ということで、Spireのページは、こちら。 ORBCOMMの海上追跡はこちら

1.3 RFスペクトラム・マッピング

RAND報告書は、

我々は、海上領域認識以外のRF信号モニタリングの商業的な例を見つけた。

といっています。

RF 信号モニタリングとありますが、まずは、CBRS(市民ブロードバンド無線サービス)という特定の周波数域の利用を見てみます。「CBRS とは」を参照します。

この周波数帯は、

ユーザーの 3 つの階層は、以下のとおりです。

アメリカ海軍や固定衛星などの既存のユーザー
通信事業者が有料で周波数の一部をライセンスする、PAL (優先アクセス・ライセンス)
ライセンスを持たない企業がこの周波数帯をプライベート・ネットワークに利用するなどの一般認可アクセス (GAA)

これらの層は同時に CBRS 周波数を共有しているため、FCC は、GAA ユーザーが PAL または既存のユーザーに干渉してはならず、PAL ユーザーが既存のユーザーに干渉してはならないと定めています。この干渉を管理するために、スペクトル・アクセス・システム (SAS) が必要となります。

となっています。そして、2013年、グーグルはスペクトラム・データベースを世界に無料公開しました。この意味については、

誰でも未使用のRFスペクトラム(ホワイト・スペースとも呼ばれる)の権利を主張できるようにした。

となります。GoogleのSpectrum Access System (SAS)のページ。 日本語だとMRI 「ダイナミック周波数共用に係る海外動向」。日経XTECH「効率的に電波を使う、干渉発生を抑えて共用する「ダイナミック周波数共用」」 などがあります。

RFスペクトル(RF Spectrum)というのは、高周波のスペクトル( 複雑な組成をもつものを成分に分解し、量や強度の順に規則的に並べたもの)ということになります。

宇宙ベースの機能を利用することによって遠距離のRFマッピングが可能となり、また、そのことによる利用領域も広くなります。

RAND報告書ではアメリカの企業HawkEye360(またはHE360)が例として上がっています。(なお、テニスのホークアイは、別の会社(Hawk-Eye Innovations Ltd. しかも今は、ソニーが提供しているそうです))。

HawkEye360(電波監視衛星)についてのJSATの説明のページはこちらです

そのページによると

世界初となる商用電波観測衛星を用いた陸海空の地理空間情報提供サービス

となります。

3機1組のコンステレーションにより

  • 電波発信場所の特定
  • 電波特性解析による対象物(船舶等)の特定
  • 指定電波の電波密度を測定し、対象エリアの変化を観測

ができるということになります。

この具体的なアプリケーションとしては

  • AIS情報の正誤判定
  • AIS以外の電波信号による船舶検出
  • 不審船の追跡
  • 電波ヒートマップからの異常検出
  • GPS妨害電波発信源の特定
  • レーダー電波発信源の特定

などがあげられています。

1.4 安全保障への応用

DARPAとして知られる国防高等研究計画局(Defense Advanced Research Projects Agency)には、ローカルエリアにおける周波数利用のリアルタイム状況認識を提供しようとするRadioMapプログラムがあるります。また、

HE360 が計画しているような衛星ベースの RF マッピングは、カバレッジをローカルからグローバルに拡大する。

とされています。

無線周波数計測情報(Radiofrequency MASINT)という言葉があるそうです。でもって、そもそも、計測情報( Measurement and Signature Intelligence (MASINT))というのは、

肉眼で見える情報だけでは不十分な部分は各種センサーなどで計測、検知した情報を処理・分析して得られる計測情報

だそうです(MAMORのリンク)。

そうすると、これらの無線に関するインテリジェンスというのを、現代社会において、どう位置づけるのか、また、民間企業の活動をどう考えるかという問題になってきます。

2 宇宙を利用したインテリジェンス行為法

では、このような高周波インテリジェンスが法的にどのように位置づけられるのかというのをみます。

2.1 宇宙を利用したインテリジェンス

でもって、宇宙を利用したインテリジェンスというのを考えてみます。インテリジェンスという概念は、きわめて多義的な概念ですが、

情報の収集、加工、統合、分析、評価、解釈の結果またはそのプロセス

をいうと定義されます。では、日本ベースの人(法人を含む)が、無線通信についてインテリジェンス活動を行ったとして、その活動と電波法の「秘密の保護」(電波法59条)との関係はどうなるの?ということになります。

#ちなみに憲法だと「通信の秘密」(21条2項)との関係ということになりますが、この「通信」が遠隔通信を意味するとは個人的に思っていない(個人的には「意思の伝達(コミュニケーション)」)ので、ここでは、制定法に従って「秘密の保護」と書いてます

「秘密の保護」との関係を考えるのにあたっては、まず、制定法上の「秘密の保護」(電波法59条)の解釈を見た上で、電波法の立法管轄を考えてみることにします。

2.2 電波法との関係

「秘密の保護」(電波法59条)の解釈

電波法の「秘密の保護」の解釈については、私のブログで何回かふれています。

があります。条文としては

(秘密の保護)
第59条 何人も法律に別段の定めがある場合を除くほか、特定の相手方に対して行われる無線通信(電気通信事業法第4条第1項又は第164条第3項の通信であるものを除く。第109条並びに第109条の2第2項及び第3項において同じ。)を傍受してその存在若しくは内容を漏らし、又はこれを窃用してはならない。

となっています。

これについては、電気通信事業法4条の「秘密の保護」と比較してみます。

(秘密の保護)
第四条 電気通信事業者の取扱中に係る通信の秘密は、侵してはならない。
2 電気通信事業に従事する者は、在職中電気通信事業者の取扱中に係る通信に関して知り得た他人の秘密を守らなければならない。その職を退いた後においても、同様とする。

です。これを比較すると、構成の仕方が別であることは別として、禁止される行為については、以下の図のような違いがあります。

ちなみに、憲法の本ですと

通信の秘密を侵してはならないというのは、第一に公権力によって通信の内容および通信の存在じたいをうかがい知られないこと(略)、第二の意味は、通信業務に従事するものが職務上知り得た通信に関する事項を他にももらしてはならないこと(漏えい行為の禁止)を意味する

としたりしていますが(上は、注解法律学全集 憲法Ⅱ)、電波法との関係を意識しているものとはかんがえられません(公権力は、無線通信を傍受することは可能なはずです)。(もし、通信を遠隔通信の意に解するとしても)、電波法の解釈も含むような解釈を記してほしいと思います。>憲法の先生方

解釈論としては「特定の相手方に対して行われる」という要件があります。自動船舶識別装置(AIS)からの電波が、この要件を満たすのか、という問題があります。この点について、むしろ、不特定多数の者にたいしての通信ではないかと考えています。

 電波法の立法管轄-電波法59条に関して

ところで電波法は、

(電波に関する条約)
第三条 電波に関し条約に別段の定があるときは、その規定による。

ということで、国際法たるITU憲章・国際電気通信連合条約に従ってできていますし、相違がある場合には、条約が優先することになっています。では、その電波法は、国際的にみたときにどのような場合に適用されるのか、ということになります。

このような問題は、国際法の世界では、立法管轄権(jurisdiction to legislate)と読んでいます。が、問題は、電波法の条文にも、教科書(今泉至明「電波法要説」)にもなんらその分析がないです。

というので、個人的には、立法管轄権を極めて意識する立法として、英国法があるという印象なので、英国のWireless Telegraphy Act 2006をみます。同法119条(領域的適用(Territorial application))の規定は、

第19条 領域適用
(1)第(2)項に記載の規定は、以下に適用される。

(a)英国または英国領海内またはその上空にある、またはその上空にあるすべての局および装置(all stations and apparatus);
(b)英国で登録されているが、当分の間、英国または英国の領海内または上空にない船舶または航空機に搭載されたすべての局および装置であって、国務長官が規則で定める制限に従う場合。
(c)英国内または英国領海内または上空に存在しないが、以下によって放出されるすべての装置であって、国務長官が規則で定める制限に従う場合

(i)英国または英国領海内から、または
(ii)英国内で登録された船舶または航空機から放出されるもの。

となっています。局・装置の所在が、その重要なポイントになることがわかります。局・装置の定義についてみると

117 「無線電信装置“Wireless telegraphy apparatus” 」及び 「無線電信局“wireless telegraphy station”」
(1)この法律において「無線電信装置」とは、第116条(2)が適用されるエネルギーを、その目的のために構築され又は配置された物質によって提供されない経路を介して、発し又は受信するための装置をいう。
(2)この法律において「無線電信局」とは、次のものをいう。

(a)第116条(2)が適用されるエネルギーを、その目的のために構築されまたは配置された物質によって提供されない経路を介して、発しまたは受信するための局をいう。
(b)船舶又は航空機の無線電信装置を含む。

となっています。なので、日本法の解釈としても、無線局が、日本の領域内に存在すること、がメルクマールになるのだろうと思います。でもって、人工衛星については、「宇宙物体」となるので、「登録」した国が、「管轄権および管理の権限を保持する」ということになります(宇宙条約8条)。ちなみに人工衛星局についての免許の話がでています。

人工衛星局及び地球局の開設手続き

ここでは、

日本で衛星通信を行う人工衛星局又は地球局(実験試験局を含む。)を利用する

という表現がなされています。ただし、

受信のみを目的とするものは無線局に含(ふく)まれないこととなっています。(法第2条第5号)

電波法には、この宇宙物体との関係は、明確に出ていきません。出てくるのは、

  • 第六条 無線局の免許を受けようとする者は、申請書に、次に掲げる事項(前条第二項各号に掲げる無線局の免許を受けようとする者にあつては、第十号に掲げる事項を除く。)を記載した書類を添えて、総務大臣に提出しなければならない。 1項4号(イ 人工衛星の無線局(以下「人工衛星局」という。) その人工衛星の軌道又は位置)

表現なのですが、「日本の」人工衛星局というのは、何か、という定義自体はしめされていないと理解しています(というか、解釈本がない)。

無線局としてのコンステレーション

衛星コンステレーション(えいせいコンステレーション、英語: Satellite constellation)とは、特定の方式に基づく多数個の人工衛星の一群・システムを指す。

個々の衛星はシステム設計された軌道に投入され、協調した動作を行わせ、システムの目的を果たす。コンステレーション(constellation)とは星座(星の配置)のこと。

でもって、現在

小型の人工衛星の実用化が比較的容易になったことにより、通信の遅延時間が短い中・低軌道に打ち上げた多数の小型衛星を連携させて一体的に運用する「衛星コンステレーション」を構築し、高速大容量通信など多様なサービスを提供することが可能

となりました。(「情報通信審議会情報通信技術分科会衛星通信システム委員会報告(案) 概要 」) ちなみに、いろいろと検討がなされている情報通信審議会 情報通信技術分科会 衛星通信システム委員会作業班の検討経過はこちら。Starlinkについては、こちらです(技術のページ)

国立国会図書館 調査及び立法考査局の「Title 第 3 章 衛星コンステレーションの可能性と課題」というまとめがあります。ちなみに

コンステレーションのような多数の衛星の周波数調整は、1 つの衛星通信網としてまとめて行うことができる

そうです。

無線インテリジェンス行為と電波法

無線インテリジェンス行為について考えると、その衛星は、受信をすると同時に、その分析したデータを地上に送信することになります。このこの分析する行為が、電波法の「秘密の保護」との関係はどうなるのだろうか、という問題は、一般論からは、明確な回答はないという感じに思えます。ただし、このような衛星からの、インテリジェンス行為については、リモートセンシングとして制定法があるので、そちらとの関係もみます。

2.3 リモートセンシング法との関係

リモートセンシング法の概略

衛星から地上の分析をするということになると、宇宙からの分析については、「衛星リモートセンシング記録の適正な取扱いの確保に関する法律」(平成28年法律第77号)があります。

リモートセンシングについては、「リモートセンシングと放射伝達」(JAXA)。一般財団法人 リモート・センシング技術センター「リモート・センシングとは」

 リモートセンシングとは、遠く離れたところ(リモート)から、対象物に触れずに対象物の形や性質を測定する(センシング)技術のことです。

ということで、制定法をみます。名称は、「衛星リモートセンシング記録の適正な取扱いの確保に関する法律」(平成28年法律第77号)になります。

目的

宇宙基本法(平成二十年法律第四十三号)の基本理念にのっとり、我が国における衛星リモートセンシング記録の適正な取扱いを確保するため、国の責務を定めるとともに、衛星リモートセンシング装置の使用に係る許可制度を設け、あわせて、衛星リモートセンシング記録保有者の義務、衛星リモートセンシング記録を取り扱う者の認定、内閣総理大臣による監督その他の衛星リモートセンシング記録の取扱いに関し必要な事項を定める(同法1条)

定義

衛星リモートセンシング装置とは

 地球を回る軌道に投入して使用する人工衛星(以下「地球周回人工衛星」という。)に搭載されて、地表若しくは水面(これらに近接する地中又は水中を含む。)又はこれらの上空に存在する物により放射され、又は反射された電磁波(以下「地上放射等電磁波」という。)を検出し、その強度、周波数及び位相に関する情報並びにその検出した時の当該地球周回人工衛星の位置その他の状態に関する情報(次号において「検出情報」という。)を電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)として記録し、並びにこれを地上に送信する機能を有する装置であって、これらの機能を適切な条件の下で作動させた場合に地上において受信した当該電磁的記録を電子計算機の映像面上において視覚により認識することができる状態にしたときに判別ができる物の程度(以下この条及び第二十一条第一項において「対象物判別精度」という。)が車両、船舶、航空機その他の移動施設の移動を把握するに足りるものとして内閣府令で定める基準に該当し、かつ、これらの機能を作動させ、又は停止させるために必要な信号及び当該電磁的記録を他の無線設備(電磁波を利用して、符号を送り、又は受けるための電気的設備及びこれと電気通信回線で接続した電子計算機をいう。以下同じ。)との間で電磁波を利用して送信し、又は受信することのできる無線設備を備えるものをいう。

と定義されています。

法的効果

国内に所在する操作用無線設備を用いて衛星リモートセンシング装置の使用を行おうとする者(特定使用機関を除く。)は、衛星リモートセンシング装置ごとに、内閣総理大臣の許可を受けなければならないとされています(4条1項)。

この許可については、その基準として

  1. 衛星リモートセンシング装置の構造及び性能、当該衛星リモートセンシング装置が搭載された地球周回人工衛星の軌道並びに操作用無線設備等及び受信設備の場所、構造及び性能並びにこれらの管理の方法が、申請者以外の者が衛星リモートセンシング装置の使用を行うことを防止するために必要かつ適切な措置が講じられていることその他の国際社会の平和の確保等に支障を及ぼすおそれがないものとして内閣府令で定める基準に適合していること。
  2.  衛星リモートセンシング記録の漏えい、滅失又は毀損の防止その他の当該衛星リモートセンシング記録の安全管理のために必要かつ適切なものとして内閣府令で定める措置が講じられていること。
  3. 申請者(個人にあっては、死亡時代理人を含む。)が、第一号に規定する申請者以外の者が衛星リモートセンシング装置の使用を行うことを防止するための措置及び前号に規定する衛星リモートセンシング記録の安全管理のための措置を適確に実施するに足りる能力を有すること。
  4. その他当該衛星リモートセンシング装置の使用が国際社会の平和の確保等に支障を及ぼすおそれがないものであること。

があげられています。また、使用者については、欠格事由がさだめられています(同法5条)。

この装置の運用に関しては、運用(不正な衛星リモートセンシング装置の使用を防止するための措置.申請に係る軌道以外での機能停止.検出情報電磁的記録の受信に用いる受信設備など)・記録の取扱・記録を取り扱うものの認定・内閣総理大臣によちる監督に関する規定が定められています。

 衛星リモートセンシング法施行規則

衛星リモートセンシング記録の適正な取扱いの確保に関する法律施行規則(平成29年内閣府令第41号)をみます。でもって、上の「対象物判別精度」が、センサーの種類ごとによって定められています(同施行規則2条)。

光学センサー 紫外、可視光、近赤外又は中間赤外領域の電磁波を検出するセンサーをいう。ただし、ハイパースペクトルセンサーを除く。 対象物判別精度が2メートル以下のものであること。
SARセンサー 電波領域の電磁波を検出するセンサーのうち、電波を観測対象に照射し、散乱された電波を受信した後にレンジ圧縮処理及びアジマス圧縮処理を行うことで画像を得るものをいう。 対象物判別精度が3メートル以下のものであること。
ハイパースペクトルセンサー 紫外、可視光、近赤外及び中間赤外領域で四十九以上の波長帯の電磁波を検出するセンサーをいう。 対象物判別精度が10メートル以下のもので、かつ、検出できる波長帯が49を超えるものであること。
熱赤外センサー 熱赤外領域の電磁波を検出するセンサーをいう。 対象物判別精度が5メートル以下のものであること。

だとすると、上のような高周波スペクトラムのセンサーは、この中に入っていないということになるのかと思います。

ちなみに記録については

生データ 光学センサーにより記録 対象物判別精度が2メートル以下であって、記録されてから5年以内のものであること。
生データ SARセンサーにより記録 対象物判別精度が3メートル以下であって、記録されてから5年以内のものであること。
生データ ハイパースペクトルセンサーにより記録 対象物判別精度が10メートル以下かつ検出できる波長帯が49を超え、かつ、記録されてから五年以内のものであること。
生データ 熱赤外センサーにより記録 対象物判別精度が5メートル以下であって、記録されてから5年以内のものであること。
標準データ 光学センサーにより記録 対象物判別精度が25センチメートル未満のものであること。
標準データ SARセンサーにより記録 対象物判別精度が24センチメートル未満のものであること。
標準データ ハイパースペクトルセンサーにより記録 対象物判別精度が5メートル以下であって、検出できる波長帯が49を超えるものであること。
標準データ 熱赤外センサーにより記録 対象物判別精度が5メートル以下のものであること。

と整理できるかと思います(同施行規則3条)。

 無線インテリジェンスの位置づけ

無線インテリジェンス行為についていえば、

地球を回る軌道に投入して使用する人工衛星に搭載されて、地表若しくは水面(これらに近接する地中又は水中を含む。)又はこれらの上空に存在する物により放射され、又は反射された電磁波(以下「地上放射等電磁波」という。)を検出し、その強度、周波数及び位相に関する情報並びにその検出した時の当該地球周回人工衛星の位置その他の状態に関する情報(次号において「検出情報」という。)を電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)として記録し、並びにこれを地上に送信する機能を有する装置

ではあるものの

地上において受信した当該電磁的記録を電子計算機の映像面上において視覚により認識することができる状態にしたときに判別ができる物の程度(以下この条及び第二十一条第一項において「対象物判別精度」という。)が車両、船舶、航空機その他の移動施設の移動を把握するに足りるものとして内閣府令で定める基準

に該当するものではないということがいえるかと思います。

このような無線インテリジェンス行為が、電波法における「秘密の保護」との関係で、電波の存在について窃用になるのではないか、という問題については、上記のようなリモートセンシング法は、なんらの助け等には、ならないといことになります。

3 その他

3.1 自衛隊の活動と電波法

では、実際に、このような無線インテリジェンスをもし、自衛隊が利用するとして、何か、例外規定はないのか、ということで考えると、電波法の適用除外については、自衛隊法が定めています

電波法(昭和二十五年法律第百三十一号)第百四条の規定にかかわらず、同法の規定のうち、無線局の免許、登録及び検査並びに無線従事者に関するものは、自衛隊がそのレーダー及び移動体の無線設備を使用する場合については、適用しない

とあるわけですが、結局、電波における「秘密の保護」の規定の適用については、この除外規定がないことになります。

ただし、国の行為となるので、電波法104条

(国等に対する適用除外)
第百四条 国については第百三条及び次章の規定、独立行政法人通則法(平成十一年法律第百三号)第二条第一項に規定する独立行政法人(当該独立行政法人の業務の内容その他の事情を勘案して政令で定めるものに限る。)については第百三条の規定は、適用しない。ただし、他の法律の規定により国とみなされたものについては、同条の規定の適用があるものとする。

となっており、次章の規定というのは、罰則なので、その

第百九条 無線局の取扱中に係る無線通信の秘密を漏らし、又は窃用した者は、一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

という規定の適用はないことになります。

3.2 結局

いろいろと検討しましたが、結局、無線インテリジェンス行為については、自衛隊がおこなうには、

  • リモートセンシングとしての規制の対象にはならない
  • 秘密の保護との関係で、無線通信の秘密の窃用には、特定の対象との通信の要件に該当はしないと思われるが、明確ではない
  • 自衛隊がおこなう分には、仮に秘密の窃用と解されても、罰則はない

ということになりそうです。が、まだ、はっきりしないところが多いのかなあと思っています。

 

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