「電気通信事業法及び日本電信電話株式会社等に関する法律の一部を改正する法律案」が公表されています。リンクは、こちら。
報道としては、「通信の秘密、域外適用 法案を閣議決定」です。
外国法人に対しての電気通信事業法の改正について検討した私のブログは、「「通信の秘密」外資にも適用の総務省有識者会議の報告書を読む」になります。
概要を見ていきましょう。
そこでは、「外国法人等に対する電気通信事業法の執行には限界があり」とか「外国法人等に対する規律の実効性を強化するため」と記載されていますね。
あと、その下の図ですが、
これは、「日本国内へのサービス提供」という連結点がキモになって、電気通信事業法が適用されますよ、ということをいっているように読めるかと思います。
外国法人(定義としては、外国の法人及び団体並びに外国に住所を有する個人をいうとされています)であっても、実質的な電気通信事業者であれば、登録・届出の義務があるよ、というのが、電気通信事業法の認識であるということになります。この点は、上のブログで触れたように、資金決済法63条の22の理屈と同じということになります。
要は、立法管轄権は、外国法人についても及んでいるんだけど、「執行ができないんだよね」ということをいいたいのが、概要のキモなのかなとか思っています。なので、法律家であれば、「外国法人」に対しても「適用」されるようになった、という表現は、しないようにしましょうね、ということです。
でもって、条文です。
まずは、改正法2条関係で、「外国の法人及び団体並びに外国に住所を有する個人をいう」と外国法人等の定義がなされています。
事業法9条で「電気通信事業を営もうとする者は、総務大臣の登録を受けなければならない。」とされていて、10条で「前条の登録を受けようとする者は、総務省令で定めるところにより、次の事項を記載した申請書を総務大臣に提出しなければならない」とされています。
今回の改正は、この10条2号について
外国法人等(外国の法人及び団体並びに外国に住所を有する個人をいう。以下この章及び第百十八条第四号において同じ。)にあつては、国内における代表者又は国内における代理人の氏名又は名称及び国内の住所
として、外国法人の登録義務を明確にしようというものになります。
要は、登録義務があって、それを懈怠して、わが国の利用者に対して、実質的な電気通信事業サービス(私としては、業として、電気通信役務を他人の需要に応ずる役務を提供することをいうと定義しています)を行うことは許されませんよ、ということになるかと思います。
でもって、検索サービスや電子メールサービスは、この「実質的な電気通信事業サービス」なのかという論点になるのだろうと思います。Gメールは、該当するんじゃないのということは、上のブログで触れておきました。
ところで、メディアなどで、普通にいっている「通信の秘密」は、電気通信事業法4条の(秘密の保護)
「電気通信事業者の取扱中に係る通信の秘密は、侵してはならない。
2 電気通信事業に従事する者は、在職中電気通信事業者の取扱中に係る通信に関して知り得た他人の秘密を守らなければならない。その職を退いた後においても、同様とする。」
になるわけです。
今回、この部分の改正はありません。ところで、1項についていえば、「電気通信事業者の取扱中に係る通信の秘密」なので、外国法人が、上の登録をしていない場合には、この「通信の秘密」の規定の適用の方策がないですね。
というのは、「電気通信事業者 電気通信事業を営むことについて、第九条の登録を受けた者及び第十六条第一項の規定による届出をした者をいう。」(同法2条5号)となるので、登録を受けてなければ適用がなしえないからです。
では、2項は、どうなの、ということになって、これは、1項と2項の関係について、どう考えるのか、ということによるかと思います。高橋説は、1項と2項をわけて考えています。
そのような立場だと我が国の電気通信事業法が日本市場の利用者に密接な関連を有する外国法人に対しても適用しうるということになるので、2項は、登録していない外国法人に対して、他人の秘密を守るべき義務の根拠法制としうるということになりそうです。ここら辺はよくわからないところですね。
基本的には、消費者行政課が、インターネット時代の電気通信事業法の逐条解説をだして、立法管轄権について、どう考えるのか、事業法4条1項2項の解釈をどうするのかとか、明らかになると、もうすこし分かりやすくなるのでしょうね。(混乱が増えるだけかもしれませんが)