「ワッサナーアレンジメント・外為法と安全保障-「留学生へ安保技術 規制」の記事から勉強」をまとめたところ、昔は、ココム違反事件がありましたねという話から思い出して、さらに、いままでどのような事件があったんだろうな、と考えたところ、ちょうど、「警備警察50年 焦点」 の「大量破壊兵器関連物資等の不法輸出の取り締まり」というページを見つけました(平成16年-2004年現在)。
ちなみに、セキュリティに興味のある人間にとっては、ワッサナーアレンジメントは、ブラウザの輸出規制の問題とで、1990年代に、その問題を意識させてくれる枠組ということになります。八田 善明「国家による暗号政策―暗号の戦略性と輸出管理―」という論文をみつけました。
「大量破壊平気関連物資等の不法輸出の取り締まり」というページでは、平成16年までで、
18件の安全保障関連物資不正輸出事件を検挙しています。これら事案の輸出先としては、北朝鮮向け6件、中国向け5件、旧ソ連向け3件、イラン向け3件、旧東ドイツ向け1件です。
だそうです。事件としては、
無許可輸出
「東明商事ココム違反事件」(昭和62年5月)
「東芝機械ココム違反事件」(62年5月)等
この事件は、昭和63年 3月22日 裁判所名 東京地裁 裁判区分 判決 事件番号 昭62(特わ)1547号事件名 外国為替及び外国貿易管理法違反被告事件 〔東芝機械ココム規制違反事件〕ということになります。
大型船舶用プロペラ加工機の部分品及び技術をソ連に輸出、提供したココム規制違反行為につき、外国為替及び外国貿易管理法違反罪の成立が認められた事例
ということになります。
虚偽申告
- 「ダイキン工業ココム違反事件」(平成元年2月)
- 「日本航空電子工業に係る武器部分品不正輸出事件」(平成3年8月)
- 「菱光社等に係る外為法等違反事件(平成11年2月)」等
キャッチオール規制違反事件
- 「直流安定化電源不正輸出事件」(平成15年11月)
- 「アイ・ディー・サポートに係る周波数変換器不正輸出事件」(平成16年1月)
があるそうです。
が、判例データベースでは、上の東芝機械事件が掲載されているにすぎないようです。
平成16年以降の興味深い判決例
ちなみにデータベース(west law)で「外為法 輸出」で検索すると、178件くらい見つかります。平成16年以降で、興味深いものとしては、
ア)令和 2年 3月 5日 裁判所名 広島高裁 裁判区分 判決 事件番号 令元(う)101号 事件名 関税法違反、外国為替及び外国貿易法違反被告事件
外国為替及び外国貿易法48条1項に基づき経済産業大臣の許可を要する貨物として定められた重合体繊維から他の繊維を製造する装置の「部分品若しくは附属品」は、当該「装置」の部分品ないし附属品としての用途以外の用途に用いることができるものに該当しないこと(専用性)を要するとされた事例
イ)平成23年12月19日 裁判所名 東京地裁 裁判区分 判決 事件番号 平23(ワ)20551号 事件名 入学許可等請求事件
被告国立大学法人は、原告がイラン国籍を有していることのみを理由として本件研究所の研究生としての入学を拒否したが、これは平等権の侵害であり、公序良俗に反し無効であるとして、原告が、被告国立大学法人に対し、入学許可や、入学不許可の無効確認、慰謝料の支払等を求めた事案
ウ)平成23年10月11日 裁判所名 東京高裁 裁判区分 判決 事件番号 平23(う)975号 事件名 外国為替及び外国貿易法違反事件
本件装置(a社製造)は,輸出貿易管理令別表第1の16,関税定率法別表第90類の機器(光学機器,写真用機器,映画用機器,測定機器,検査機器,精密機器及び医療用機器並びにこれらの部分品及び附属品)に該当し,いわゆるキャッチオール規制の対象となる貨物であり,これをミャンマー連邦やマレイシア等の貿易管理態勢が十分とはいえないいわゆる非ホワイト国を仕向地として輸出しようとする場合において、最終仕向地をマレイシアと装って輸出申告した事件
エ)平成16年10月15日 裁判所名 東京地裁 裁判区分 判決 事件番号 平15(特わ)3940号 事件名 外国為替及び外国貿易法違反、関税法違反被告事件
推進薬の原料である過塩素酸アンモニウムを粉砕するためのジェットミルである「シングルトラック・ジェットミル-200」1台(販売価格377万2000円)を船積みさせて、イラン・イスラム共和国のバンダーアッバス港に向けて輸出し、もって、通商産業大臣の許可を受けないで貨物を輸出したという事案
などがあります。繊維やジェットミルなどの規制もあるわけですし、また、留学生の入学許可の問題も関連してくるということで、興味深いですし、ある意味、時代の移り変わりを意識させる問題かと思っています。