「暗号資産」の用語について (2)

平成30年9月28日「「暗号資産に関する監督・監視ラウンドテーブル -最近の進展と将来の課題- (“Roundtable on Supervisory Oversight of Crypto-Assets –Recent Developments and Challenges Going Forward-”)」が東京(於:金融庁)で開催されました。[1]

ここで、我が国でも暗号資産という用語を一般的に利用するということが明確になったということになるかと思います。

2018年11月 G20 BUENOS AIRES ACTION PLANが公表されました。このアクションプランにおいては、

「16.技術革新の恩恵をフルに享受するために、暗号資産の潜在的なリスクを監視し、必要に応じて多国間の対応を評価します。 我々は、暗号資産に関連するAML / CFTリスクに対して効果的でグローバルなリスクベースの対応が緊急に必要であることを認識しています。 FATFの支援を得て、暗号およびその他の仮想資産に最近修正されたFATF規格を適用することを約束します。 私たちは、IOSCOが暗号資産プラットフォームに取り組むのを楽しみにしています。 我々はまた、サイバーレジリエンスの強化にも尽力しており、金融機関のサイバーインシデントへの対応及びそれからの回復に関連する効果的な手段を特定するためのイニシアチブに関する進捗状況について2019年サミットに報告するようFSBに依頼します。 Bali Fintech Agendaを歓迎します。」

http://www.g20.utoronto.ca/2018/2018-buenos-aires-action-plan.html

2018年12月21日 「仮想通貨交換業等に関する研究会」で報告書が公表されました。同報告書(31ページ)は、

最近では、国際的な議論の場において、“crypto-asset”(「暗号資産」)との表現が用いられつつある。また、現行の資金決済法において、仮想通貨交換業者に対して、法定通貨との誤認防止のための顧客への説明義務を課しているが、なお「仮想通貨」の呼称は誤解を生みやすい、との指摘もある。

こうした国際的な動向等を踏まえれば、法令上、「仮想通貨」の呼称を「暗号資産」に変更することが考えられる。

https://www.fsa.go.jp/news/30/singi/20181221-1.pdf

新聞報道等でも、「仮想通貨、「暗号資産」に名称変更へ 金融庁  2018/12/17 17:37」という報道がなされたりしていました。

で、「暗号資産」という用語が一般化したか、というと、そうとまでは、言い切れないかもしれません。

2019年1月9日 欧州銀行監督局は、” 「暗号資産」についての欧州委員会助言に関する報告書Report with advice for the European Commission on crypto-assets ” を公表しています。この報告書においては、

暗号資産は、認知される/本質的な価値の一部に関して、暗号技術と分散元帳テクノロジに主に依存する一種の私有資産です。 暗号資産は、種々の形態において存在し、決済/交換型のトークン(例えば、いわゆる仮想通貨 (VC))、投資型のトークン、および商品またはサービスにアクセスするために適用されるトークン(いわゆる「ユーティリティ」トークン)を含む。

と論じられています(要約)。また、その7ページの用語についての表においては、

現在、国際標準設定機関によって使用されている暗号資産の共通の分類法はありません。 しかし、一般的に言えば、暗号資産の基本的な分類法は、暗号資産の3つの主なカテゴリーから構成されています。

とされています。

また、2019年4月には、FATFから報告書が公表されています。

 FATFは、これらの要件の基礎として「仮想資産」という用語を採用することを決定しました。これは、デジタルで取引または移転することができ、支払いまたは投資目的で使用できる価値のデジタル表現として定義されます。 これには、G20で「暗号資産」と呼ばれているテクノロジや、国内法で「仮想通貨」と呼ばれているテクノロジが含まれます。 この用語は、改訂されたFATF勧告が異なる技術に関して中立であることを確実にするのを助け、将来の開発に対応することができます。

同報告書 2頁 注1

これらを見ていくと、「仮想通貨を暗号資産とよびかえる」と単純にいっていいのか、微妙な問題があるといえそうです。仮想通貨は、暗号資産の一類型のみなので、これを暗号資産と呼びかえると(日本において)世界的に語るときには、広義の暗号資産(仮想通貨以外にもデジタルで表象される有価証券的なものなどを含む)と狭義の暗号資産(仮想通貨)が生まれます。暗号資産とクリプトアセットにしましょうかね(あたかも、Personal Dataとパーソナルデータが違う意味をもつように-ここら辺のセンスのなさは、10数年たっても変わらないわけです) 。


[1] https://www.fsa.go.jp/news/30/virtual_currency/20181009.html

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