G20やFATFでの「暗号資産」をめぐる議論をみてきたわけですが、金融の本場、英国において、どのように議論されているか、というのを見ていくことにしたいと思います。
英国では、2018年10月に「暗号資産タスクフォース 最終報告」が公表されています。https://assets.publishing.service.gov.uk/government/uploads/system/uploads/attachment_data/file/752070/cryptoassets_taskforce_final_report_final_web.pdf
この報告書は、 財務省・金融行動監視機構・英国銀行 がまとめたものです。
構成としては、第1章 序章、第2章 主たる概念、第3章 分散台帳技術(以下、DLT)のインパクト 、第4章 暗号資産のインパクト、第5章 結論と反応からなりたっています。
報告書の概観は、1.8に述べられているので、それをみると
第2章では、主要概念の概要を説明し、英国市場の概要を説明し、暗号資産の種類とDLTを区別するためのTaskforceのフレームワークを説明する。 また、現在の規制が種々の暗号資産の利用に対してどのように適用されるかという限界を明らかにしている。第3章では、金融サービスにおけるDLTの影響について考察する。 それは規制当局が、仕事と革新的な会社のそれの両方を通して見た利益を探求して、そしてDLTのさらなる展開への障壁を明らかにしている。
•第4章では、暗号資産に関連するリスクと潜在的な利点について評価する。
•第5章では、タスクフォースの結論と、HM財務省、 金融行動監視機構 、およびイングランド銀行が取るべき行動について説明する。
となっています。この報告書の記述に関して、きわめて参考になるのは、第2章 主たる概念のうちの暗号資産に関する記述であると思われます。
- 2.9 暗号資産はDLTの1つのアプリケーションです。すべての暗号資産が何らかの形式のDLTを利用する一方で、DLTのすべてのアプリケーションが暗号資産を含むわけではありません。現在最も一般的な暗号資産は、パーミッションなしの元帳をもとに発行されています。
- 2.10 暗号資産について広く合意された定義は1つもありません。大まかに言って、暗号資産は、何らかの種類のDLTを使用し、電子的に転送、保管、または取引することができる、暗号化された、価値または契約上の権利のデジタル表現です。暗号資産の例には、BitcoinとLitecoin(およびその他の「cryptocurrencies」)、およびInitial Coin Offering(ICO)プロセスを通じて発行されるもの(「トークン」と呼ばれることが多い)があります(略)。
- 2.11タスクフォースは、大まかにいって3つのタイプの暗号資産があると考えています。
A.決済(Exchange)トークン – Bitcoin、Litecoinなどの「暗号通貨」と呼ばれることがよくある。それらは、DLTプラットフォームを利用しており、中央銀行や他の中央機関による発行/背景がされていない。これらは、証券トークンまたはユーティリティトークンによって提供される種類の権利またはアクセスを提供するのではなく、決済の手段として、または投資のために使用されます。
B.証券トークン – 金融サービス市場法(2000)(規制措置)命令(RAO)に定められている「特定の投資」に相当する。所有権、特定の金額の返戻金、または将来の利益の分配権などの権利を提供する場合がある。それらは、EUの第2次金融商品指令(MiFID II)の市場における譲渡可能な証券または金融商品である可能性もあります。
C.ユーティリティトークン – 通常はDLTプラットフォームを使用して提供される特定の製品またはサービスへのアクセスと引き換えることができる。
そして、この報告書によれば、それぞれの目的等をまとめると上のような図になるといっている。
そして、報告書においては、上の三種類に応じて、現在の英国の規制の状況を概説しているのである(2.24-)
規制の詳細については、省略するが、結局、暗号資産というものが、その表象しているものの性質に応じてきわめて多彩なタイプを含んでいるということは、念頭においてしかるべきものであるように思われる。