英国における暗号資産への規制

前回、ご紹介したタスクフォース報告書は、その2.23以降においては、「暗号資産と金融サービス規制」の考察に移ります。

2.23では、


英国の金融サービス規制は、 金融行動監視機構 (FCA)およびイングランド銀行によって幅広く実施されている(健全性規制機構(PRA)を含む)。
•FCAの規制は、消費者を害から守り、英国の金融サービス部門の完全性を保護し、強化し、そして消費者の利益のために有効な競争を促進することを目的とする。
•イングランド銀行の規制は、(PRAを通じて)企業の安全性と健全性を確保し、(金融政策委員会および当行の金融市場インフラストラクチャの監督を通じて)金融の安定性に脅威を及ぼしかねないシステミックリスクを排除または軽減することを目的とする。

としています。そして、規制を一覧とした表を準備しています(表2.A)。


暗号アセットの一般的な使用方法

規制の枠内(perimeter)か、どうか

詳細

最も一般的なユースケース

交換手段として

暗号資産の種類によって異なる

決済サービス規則 の下での決済サービス規制は、法定通貨ファンドを含む活動のみをカバーしている。したがって、交換手段として使用される暗号資産は規制枠内には入らない。しかし、交換手段として使用される暗号資産には、電子マネーの定義を満たしうるものがある。

BitcoinやLitecoinなどの交換トークンは、商品やサービスの売買を可能にするために使用できうるが、通貨やマネーとは見なされない。例えば、中央によって発行されるなど、特定の方法で構成され、 第三者に受け入れられ ている場合、ユーティリティトークンは電子マネーと考えられうる。

規制された支払いサービスを促進するため。
枠内決済サービス規則 に規定されているように、規制されている決済サービスを容易にするために暗号資産が使用される場合、このサービスを運営する事業は規制枠内に入る。
暗号資産は、国境を越えた取引の媒介として使用できる(例えば、GBP  –  Bitcoin  –  USD)。このようなサービスの側面は決済サービス規則の送金として規制されているが、これには取引の暗号資産部分は含まれない。

暗号資産への直接投資用

暗号資産の種類と投資家の種類による。

暗号資産への直接投資は、暗号資産が証券トークンであるか、または、投資が、投資スキームであるとして規制されていない限り規制枠内に収まらない。

Bitcoin、などの交換トークン、証券、ユーティリティトークンはすべて、企業や消費者によって投資の一形態として保有できる

暗号資産を参照する金融商品を通じてなされる間接投資

範囲内

暗号資産を参照する金融商品は、規制枠内に入る可能性がある。また、 これらの商品は、第2次金融商品指令(MiFID II)に基づく金融商品である可能性もある。

暗号資産を参照する金融商品には、差額契約(CFD)、オプション、先物、取引所債、集団投資スキームの単位、またはオルタナティブ投資ファンドが含まれる

資金調達ツール、または分散ネットワークの作成など、特定のプロジェクトをサポートするために設計されたプロセスの一部として。

証券トークンの場合-範囲内

証券トークンは、RAOに規定されている特定投資に相当する。
例えば、それらは、株式、債券、または集団投資スキームの単位などの有価証券(または、その特性から類似のものであることを意味します)である。それらは、第2次金融商品指令(MiFID II)に基づく譲渡可能な証券または金融商品である可能性もありうる。

証券トークンまたはユーティリティトークンは通常、ICOを通じて発行される。決済トークンはICOを通じて発行することもできる。
同上
ユーティリティトークンの場合-いいえ

ユーティリティトークンは、通常、RAOに規定されている特定投資の特徴を持っていない
同上

暗号資産の定義が「 何らかの種類のDLTを使用し、電子的に転送、保管、または取引することができる、暗号化された、価値または契約上の権利のデジタル表現 」であるということは、前のエントリで触れています。

表現されている価値または契約上の権利がなんであるのか、というのが、金融規制の適用についてきわめて重要な意味を有しているというのが、上の表からわかることになります。

これを図にすると、次のようになるかと思います。暗号資産というのは、英国においては、アンブレラ的な概念であって、電子マネー、仮想通貨、金融商品、特定投資、ユーティリティなどをも含むものということになります。

「価値または権利のデジタル表現」とされているわけですが、まさに表現されている価値・権利が何なのか、ということが、個々のリスクを考えるのに影響を及ぼすということになります。前に、「「仮想通貨を暗号資産とよびかえる」と単純にいっていいのか、微妙な問題があるといえそうです」としたわけですが、むしろ、現在の法体系は、上の図でいう、「仮想通貨」のためのリスク対応体制を整えているので、 呼称の変更は、拙速であるように思えます。

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