前のエントリで、宍戸先生の資料が、憲法の「通信の秘密」の規定がプロバイダへの直接適用を前提としているのではないか、と書いたのですが、宍戸先生より、以下のようなご教示をいただきました。
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通信の秘密について一般論としては直接適用説と間接適用説と2つありうるわけですが、2頁に書いたように少なくとも私人間関係でも趣旨は考慮されるというのが一般的な理解かと思います。そのことを前提に、国が立法により事業者に対して利用者の通信の秘密への侵害を命じるという問題が(ステイトアクション含めいろんな構成があると思いますが)憲法問題になるはずで、その上で具体的な論点にフォーカスするために、捨象した議論をしました。
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とのことでした。(宍戸先生より掲載についてご承諾いただきました)
私も、「私人間関係でも趣旨は考慮される」というのには、異議はありません。ただ、だとすると、「どの程度」趣旨が考慮されるのか、また、どの段階で、趣旨が考慮されるのか、という問題になるかと思います。
無法者(無線法律家のことね)の集まりでは、「法律が命じた段階や裁判所が命じた段階での適用の可能性があるだろう」という議論がなされました。
法律の定めがなされた段階では、抽象的な段階なので、憲法訴訟というのは、考えにくいでしょうし、裁判所が、相対する利益を考えて、法の解釈をした場合にその解釈が、憲法違反であるというのは、実質的には考えにくいかと思います。
そうすると、憲法的な価値観は、個別の事業法の解釈、特に刑事的な適用についての解釈の際に考慮されるということになるのかと思います。
ただ、刑事ですと、起訴するのか、という問題もあるわけで、実際的にはどうなるのか、ということかと思います。
もっとも、オーバーブロッキングの問題、訴訟対応というのは、英国でも実際の問題としても議論されていますね。その際に憲法問題として、議論される、というのは、そのとおりになります。これは、むしろ、裁判所の命令が広汎すぎず、その一方で、裁量を残す形でなされるべき、というきわめて実際的な論点に移ってくるような感じがします。
それはさておき、疑問に対して、詳細に教示いただきました宍戸先生、本当にありがとうございます。「通信の秘密の数奇な運命」の論考を発掘いただき、その上にこの件でも教示いただいて、ブログにても感謝の辞を述べさせていただきます。