一弁のIT法部会や中国のIT法調査でご一緒している北川祥一先生より、「デジタル遺産の法律実務Q&A」を献本いただきました。
ありがとうございます。
「デジタル遺産」といっても、基本的には、通常の民事の応用で対応できるんじゃないの、と感覚的には思っていても、いざ、実際に事件を担当してみない限りは、細かく検討する余裕はないというのが実際のところかと思います。
それを事前に、このように本にまとめてもらえると、非常に助かります。
目次を見ていくと第1章 総論は、概念や検討の範囲を扱っています。また、デジタルフォレンジックや暗号資産まで紹介しています。
第2章は、本人からの相談です。遺言書での対応、死後事務委任契約、生前の対策によるデータ処分、アカウント削除の問題、第三者による訃報コメントのアップロードなどが議論されています。また、遺言、暗号資産の相続、WEbサイトやブログのアカウントの権利の性質と相続なども議論されています。
第3章は、相続人等からの相談です。調査の時期、調査方法、データの権利の問題、パスワードのロック解除の問題、クラウドサービスと相続、エンディングノートとの関係、マイル・ポイントの相続、SNSアカウントの取扱、データの開示請求の問題などが扱われています。
第4章は、コンテンツサービス提供企業からの相談です。具体的には、プロバイダーとしてユーザ死亡後のアカウントについてどのような定めを置くべきか、相続人からの開示の要求に対する対応、本人確認のないサービスの場合、利用規約の問題などが論じられています。
これらの問題は、規約の解釈や、民法の一般原則の対応などから解決が導かれるものといえるでしょうが、通常は、なかなかまとめて検討したりしないので、まとめて検討してもらえているというのは、非常に有意義だと思います。
また、サービスプロバイダーへの指導という観点から、第4章が執筆されているのは、そのような対応を考える立場のひとには、とても役立つものと思われます。
ということで、デジタル遺産に興味のある方は、ぜひとも購入ください。