仮想通貨に関する追跡可能性の動向と韓国における犯罪捜査のチャレンジ

ビットコイン等の仮想通貨(制定法上は、暗号資産)の技術的な基盤としてブロックチェーン(分散台帳技術)が、あるのですが、その技術はサトシナカモトの論文では、

個別の取引の時間やサイズ、「テープ」(筆者注・取引情報(板情報)をさす)は公開されても取引の当事者は明らかにされない証券取引で公表されるのと同等の情報レベルである

と記載されているように、不特定手数の利用者から、分析されうること前提としています。むしろ、それを前提に一定の取引を暗号技術を用いて検証しうるようにしているところが、その信用を基礎づけていることになります。そこで、その技術を利用して、ブロックチェーン上において犯罪行為があった場合に、その犯罪行為者を突き止めるべきであるということになります。

米国のコロニアルパイプライン事件でも、ブロックチェーン上の追跡がなされたことはふれたとおりです。(供述書分析-FBIは、コロニアル・パイプライン社が支払った暗号通貨の大半(約230 万ドル)をどのようにして押収したのか?)

また、我が国でも、コインチェック事件で、その追跡が報道されたりしています。「仮想通貨ウォーズ ネットの闇に迫るホワイトハッカーたちの戦い」

あと、「コインチェック超える“680億円”の仮想通貨盗難、クラッカーが286億円返金したワケ」でもふれられていますが、Poly Network事件においては、

仮想通貨交換業者やブロックチェーンの情報を提供するエクスプローラーなどが一体となって包囲網を敷いており、クラッカーが身動きできないような状況に追い込めている点が、今までのクラッキング事案と異なる。

とされていますし、「暗号資産における取引の追跡困難性と匿名性:研究動向と課題」(宇根正志)という論文なども出ています。

それらの知識を前提に、教えていただいた韓国の状況を見ていくことにします。

韓国において、まずは、「増大する暗号通貨関連犯罪(Cryptocurrency-related crimes on the rise)」という記事があります。

警察庁と科学情報通信省が発表したデータによると、この3カ月間だけで、不正な暗号通貨サイトを利用したサイバー犯罪が32件発生し、2020年全体で報告された合計41件から急増しています。

このような不正サイトは、主にテキストメッセージでURLアドレスを送信することで暗号通貨ユーザーをおびき寄せてログインさせ、リンクをたどると個人情報を盗むというものです。

警察は声明の中で、「暗号市場が過熱する中、偽の仮想通貨交換サイトへのログインを誘う偽のURLアドレスを記載したテキストメッセージの数が急増している」と述べ、このようなサイトにアクセスすると経済的損失を被る可能性があると警告しています。

だそうです。

法執行機関によると、3月1日から5月4日までに114件の関連事件に関与した147人の容疑者を逮捕しました。他にも21件の事件を捜査しているという。

当局は、韓国インターネット・セキュリティ庁と協力して、24時間365日の監視を強化する予定です。

ということで、韓国の警察では、仮想通貨関連の犯罪に対する法執行をすすめようというチャレンジがなされているようです。

また、「違法な暗号行為についてのクラックダウンの開始」という記事もあります。

この記事は、韓国政府は、「違法な暗号ビジネス」だけでなく、暗号通貨を利用したあらゆる形態のマネーロンダリングや詐欺を取り締まることになったという記事です。政府政策協調局(Office for Government Policy Coordination(OPC))が、4月から6月までの「特別施行期間」において、すべての「仮想資産に関わる違法行為」を対象として、執行を強化すると発表しました。OPCの声明は、州のさまざまな機関に、暗号ビジネス、すなわち仮想資産サービスプロバイダー(VASP)を調査、監視、処罰する権限を与えるという宣言になります。

そもそも、韓国では、仮想通貨の交換業者に対する規制は存在しませんでしたが、やっとことしの3月に特定金融取引情報の報告及び利用に関する法律」、通称「金融取引報告法」(FTRA)が施行されました。同法は、仮想資産サービスプロバイダーに金融当局への登録とアンチマネーロンダリング(AML)規制の遵守を求めています。(FTRAが国会で改正されるまで、韓国には暗号取引を定義したり説明したりする特定の法的言語がありませんでした。暗号通貨は金融資産として公式に認められていなかったため(現在も認められていない)、そのように規制する方法がありませんでした。希望者は誰でも取引所を設立することができ、当局への登録も必要ありませんでした。)

この法によってすべての暗号通貨取引所は、金融サービス委員会(FSC)の金融情報ユニット(FIU)に登録する必要があります。FIUはその後、登録内容をFSCに提出し、FSCが登録を承認して初めて正式な登録となります。つまり、政府はこれを「登録プロセス」としてパッケージ化していますが、実際にはFSCが韓国の暗号産業の非公式な国家ライセンサーとなっているのです。

金融サービス委員会(FSC)は、暗号通貨のすべての流入・流出を監視する権限を持っています。FSCのFinancial Intelligence Unit(FIU)は、取引所からのデータを分析し、疑わしい取引があれば検察官、警察の捜査官、国税庁に報告します。

先月、FSCは暗号トレーダーに対し、取引所の「登録状況を確認」するよう「警告」を発し、”長期的に持続可能 “な取引所のみを利用するよう助言しました。これは、業界関係者の間では、多くの仮想資産サービスプロバイダー(VASP)が違法とされ、閉鎖されるという事実上の宣言と読まれています。

韓国では、暗号を利用したマルチ商法や詐欺が相次いで発生しています。これらの詐欺の多くは、被害者に豪華なリターンや投資利息を約束して現金や暗号の預金を引き出すものです。CoinDeskでは、ナイジェリアでの同様の詐欺について報告しています。NPAは、このような暗号関連の犯罪を調査するための独立した部門を設立する予定です。

しかし、法的監督はそれだけではありません。韓国の反トラスト当局である公正取引委員会は、取引所のユーザー契約を見直して、公正取引法に違反していないかどうかを判断することを開始します。韓国の暗号コミュニティの多くは、ほとんどの取引所が来るべき規制の猛攻に耐えられず、市場を独占する少数の巨人だけが残るだろうと考えられています。

ワシントンの連邦通信委員会をモデルにした韓国通信委員会は、違法な暗号取引がないかオンライン活動を監視する任務を負っています。個人情報保護委員会は、首相府が指揮し、VASPの個人情報保護システムを調査します。また、政府の計画では、2022年1月に施行される暗号税法を施行するためのインフラ構築を開始する予定です。

ということで、仮想通貨に対して、韓国でも社会の風向きが変わってきているということがいえるかと思います。

そして、違法な仮想通貨の交換所に対して、捜査の一環として捜索・押収をかけたという記事も公表されています。

「警察が、暗号通貨交換所を捜査、キャッシュの預かり金を凍結」です。

この記事は、今年の5月4日に、韓国の警察が、仮想通貨取引所の不正疑惑に対する捜査の一環として、同取引所に関連する数十カ所を家宅捜索し、同取引所の現金預金を凍結したというものです。

京畿南部警察庁によると、ソウル南部にある取引所の本社を含む22カ所を家宅捜索し、取引所の口座に残っている2400億ウォン(約2億1400万円)を凍結したという。今回の家宅捜索は、CEOの李氏が詐欺行為を行い、無許可での資金調達事業の規制に関する法律に違反したという疑惑を裏付ける証拠を得るために行われた。李氏は、8月以降、4万人から会費として約1兆7000億ウォンを集めた疑いがある。それぞれ600万ウォンの口座を最低1つ開設する必要があった。

というものです。捜査関係者によると、李氏とその共犯者は、他の人を騙してマルチ商法に参加させた場合、当初の投資額の3倍の高額なリターンと紹介料を約束して投資家を誘い、一部の投資家は実際にリターンを受け取っていたが、実際には他の投資家のお金で支払われていたというネズミ講的な仕組みだったようです。


これらから考えると、仮想通貨を支えるブロックチェーンについては、そのもともとの追跡可能性がインプットされているという仕組みから、法的執行が不可能なわけではないこと、また、特に近時、追跡サービスがでていること、各国において、仮想通貨をめぐる犯罪に対しての法執行をいろいろな手法で実現しようとしていること、などのような動きがあります。

個人的には、仮想通貨については、ごきような追跡可能性を前提とした法執行の強化というのがどこまでインパクトを持ちうるのか、アンテナを張っていきたいと思っています。

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