近頃、経済安全保障という用語が語られるようになっていて、新国際秩序創造戦略本部 中間とりまとめ ~「経済財政運営と改革の基本方針2021」に向けた提言~」がまとめられて、昨年12月の自民党の提言がさらに具体化されるに至りました(令和3年5月27日)
その中で、
(3)土地等利用状況調査のための体制整備
安全保障の観点から、土地等の利用状況の調査を行い、重要施設等の機能を阻害する行為を防止するために必要な対応を実施するため、政府は重要土地等調査法案を国会提出した。本法案が成立した場合には、同法に基づく調査や収集した情報の分析を着実かつ的確に行い、勧告・命令等の対応を適時・適切に実施できるよう、十分な体制を早期に確立するべきである。
とされているのですが、その「国家安全保障上重要な土地等に係る取引等の規制等に関する法律」が、6月16日に成立しました。
具体的な法律案は、こちらです。
目的は、
その取引等が国家安全保障(我が国の防衛その他我が国の存立に関わる外部からの脅威等から我が国及び国民の安全を保障することをいう。以下同じ。)の観点から支障となるおそれがある重要な土地等について、自由な経済活動との調和を図りつつ、その取引等に対し必要最小限の規制を行うこと等により、我が国の平和及び安全の確保に資することを目的とする
です(1条)。
個人的には、国家安全保障の定義が出ている点が興味深いです。
第2章は、「基本方針」で、3条で、政府は、規制等の意義、実施すべき施策に関する基本的な方針、指定に関する基本的な事項、重要国土基礎調査に関する基本的な事項などに関する基本方針を定めなければならないとしています。
第3章は、
第一種重要国土区域及び第二種重要国土区域の指定
です。この分類は、図でまとめます。同法4条のこの指定、そのための手続等の規定です。また、5条は、調査のための土地の立ち入り等の権限を定めています。
第4章は、重要国土調査の規定です。内閣総理大臣は、関係行政機関の長及び関係地方公共団体の長と連携して、第一種重要国土区域内及び第二種重要国土区域内に所在する土地の所有者、地番及び地目、利用の実態その他内閣府令で定める事項に関する調査並びに境界及び地積に関する測量を行うものとする、とされています(6条1項)。
第5章は、第一種重要国土区域内に所在する土地等の取引等の規制等です。
第一種重要国土区域内に所在する土地等について取引等(相続その他の場合は別)を行おうとする者は、内閣府令で定めるところにより、あらかじめ、当該取引等について、当事者の氏
名又は名称及び住所、内容、当該土地等の利用の目的、実行の時期その他の内閣府令で定める事項を内閣総理大臣に届け出なければならないとされています(13条1項)。
そして、この届出がなされた場合には、土地等の取引等が国家安全保障の観点から支障を来すおそれがある取引等(以下「国家安全保障に係る土地等取引等」という。)に該当しないかどうかを審査する必要があると認めるときは、調査をします(同5項)。この場合、当該届出に係る土地等の取引等を行ってはならない期間を、当該届出を受理した日から起算して五月以内に限り、延長することができます。
もし、土地等の取引等が国家安全保障に係る土地等取引等に該当すると認めるときは、当該土地等の取引等の届出をした者に対し、内閣府令で定めるところにより、当該土地等の取引等の内容の変更又は中止を勧告することができるとされます(同9項)。
この場合、権利を有する者が、当該変更又は中止により当該土地等の利用等に著しい支障を来すこととなることを理由として、当該土地等に関する権利を買い取るべき旨の申出があった場合においては、特別の事情がない限り、当該土地等に関する権利を時価で買い取るものとする(15条)とされています。
また、土地等(土地収用法第五条に規定する権利を含む。以下この節において同じ。)について、国家安全保障上特に重要であり、かつ、当該土地等を国が取得して管理し、又は使用することが適正かつ合理的であると認めるときは、この節の定めるところにより、これを収用し、又は使用することができる(17条)とされます。
第6章は、第二種重要国土区域内に所在する土地等の取引等の報告です。第二種重要国土区域内に所在する土地等について取引等を行った者は、内閣府令で定めるところにより、当該取引等について、当事者の氏名又は名称及び住所、内容及び時期、当該土地等の利用の目的その他の内閣府令で定める事項を内閣総理大臣に報告しなければならない(27条)とされています。
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「新国際秩序創造戦略本部 中間とりまとめ」もまとまっていて、興味深い事項がたくさん記載されています。それらを深く理解するためにも米国の動向は、フォローしたいところかなあと思っています。
でもって、この法についての新聞記事は、「土地取引規制 安保に直結」になります。
記事としては、
中国を念頭に外国資本が日本の安全保障上、重要な地域の土地を買い、不適切な目的で利用しないようリスクを減らす。世界で規制の流れが強まるが、過度な私権制限に懸念も残る。
ということだそうです。
北海道で航空自衛隊基地などの近くの森林を中国資本が購入したのが明らかになっている。長崎県対馬市では10年以上前から海上自衛隊拠点の隣接地などで韓国資本による土地購入が相次いだ。
という事例があります。また、記事では、他の国でも例などもあげられています。