中野目善則・四方 光編著 「サイバー犯罪対策」(成文堂)を献本いただきました。
構成・叙述ともに、サイバー犯罪対策の決定版となるべき書籍かと思います。「デジタル証拠の法律実務Q&A」について改訂版を出すためのハードルが、二段くらい上がってしまったのではないか、という気がします。
また、 特に「通信の秘密」に関しての私の「数奇な運命」シリーズ(「『通信の秘密』の数奇な運命(制定法)」情報ネットワーク・ローレビュー(第8巻)(情報ネットワーク法学会、商事法務、平成21年)、「『通信の秘密』の数奇な運命(憲法)」情報ネットワーク・ローレビュー(第5巻)(情報ネットワーク法学会、商事法務、平成18年))についてご紹介をいただき、詳しく論じていただいております(111ページ)。(なお、313ページも、憲法21条2項の通信の秘密を「意思伝達の機密性」と解すべきという見解と同一のようにおもえます)
(神足祐太郎「通信の秘密をめぐる議論の諸相」( 出版者 国立国会図書館)DOI 10.11501/11516811は、憲法の「通信の秘密」と事業法上の「秘密の保護」との関係についてふれていないので、ちょっとがっかりしていたところでした)
目次は、
第1部 サイバー犯罪とは
- 第1章 サイバー犯罪の現状と対策研究の意義
- 第2章 サイバー犯罪の犯罪学
第2部 サイバー犯罪実体法
第3章 不正アクセス 渡辺和巳
第4章 刑法上のサイバー犯罪 髙良幸哉
第5章 ネットワーク上の児童被害 髙良幸哉
第6章 ネットワーク上の情報の規制と保護 四方 光
1 はじめに 96
2 犯罪の手段となる情報の規制 96
1 コンピュータ・システムの可用性を害する情報の規制 (96)
2 インターネット上の違法情報 (98)
3 サイバーストーキングの規制 (102)
4 商品の虚偽表示等 (102)
5 違法な情報が掲出されたサイト管理者の責任 (106)
3 重要な情報を保護するための法制 109
1 政府の秘密の保護 (109)
2 通信の秘密の保護 (110)
3 企業秘密の保護 (112)
4 個人の情報の保護 (113)
5 著作権の保護 (114)
第3部 サイバー犯罪手続法
- 第7章 デジタルフォレンジックの基礎 北條孝佳
- 第8章 サイバー犯罪捜査 中村真利子
- 第9章 デジタルデータの証拠法 島田健一
- 第10章サイバー犯罪対策の国際協力の枠組み 川澄真樹
第4部 サイバー犯罪対策
- 第11章 日本のサイバーセキュリティ政策 人見友章
- 第12章 サイバー犯罪の越境捜査とその課題 四方 光
- 第13章 諸外国のサイバー犯罪対策 四方 光・中野目善則・滝沢 誠
- 第14章 日本のサイバー犯罪対策の今後の課題 ―サイバー犯罪の現状から求められる対処の必要― 中野目善則
となっています。
実体法・手続法・デジタルフォレンジックス/そして、日本法・国際的な比較法(アメリカ・ドイツ・サイバー犯罪条約)まで、きちんと参考文献を、しかも最新のまでフォローされていますので、私も非常に調査等に役立つかと考えています。
特に、12章から14章までは、圧巻という感じで読ませていただいています。
ということで、サイバーセキュリティセキュリティ・サイバー犯罪対応などに関わる人は、必読であろうと思います。絶対のおすすめです。