マイナンバーカードで法人の住所変更登記をする

私が、社員を勤めている弁護士法人駒澤綜合法律事務所の法人登記簿上の住所は、世田谷区駒沢1丁目20番8号としか書いていなかったので、弁護士会から、「アトリエ駒澤2階」という表示をつけて、他の記載等と統一してくださいという要請がありました。

そこで、住所の変更をすることにしたのですが、従来どおりに、紙で申請するのも面倒なので、電子申請をしようということにしました。やってみたところ、ちょっと、手間取ったのですが、うまくいきましたので、マイナンバーカードの便利さをちょっとアピールするためと、自分の備忘のためにちょっとメモします。

1  法人の住所変更登記の法的意味

まずは、法人の住所の変更の意味のおさらいです。

法人の登記関係についていえば、「何人も」請求しうる書類については、特に問題がないわけですが、登記の申請については、その本人(これは、実在する人ですね)の意思に基づくものであるかどうかという確認が必要になります。この作業は、申請する私が、実在するエンティティの属性を備えていますよという証明行為によってなされます。この証明するのが、デジタル証明書の添付ということになります。

注意すべきなのは、この証明行為は、私が、申請書データについて、申請する私が、間違いないですといってなす電子署名行為とは、理屈としては別個ということになります。

この区別については、「アシュアランスレベルと法律との関わり-eKYCとIAL/AAL、電子署名法3条ほか」のブログでふれているところです。

でもって、リアルな話になると、商業登記法においては、

(登記申請の方式)
第17条 登記の申請は、書面でしなければならない。
2 申請書には、次の事項を記載し、申請人又はその代表者(当該代表者が法人である場合にあつては、その職務を行うべき者)若しくは代理人が記名押印しなければならない。
一 申請人の氏名及び住所、申請人が会社であるときは、その商号及び本店並びに代表者の氏名又は名称及び住所(当該代表者が法人である場合にあつては、その職務を行うべき者の氏名及び住所を含む。)(以下、略)

となっています。もっとも

同4項で

4 第二項第四号に掲げる事項又は前項の規定により申請書に記載すべき事項を記録した電磁的記録が法務省令で定める方法により提供されたときは、前二項の規定にかかわらず、申請書には、当該電磁的記録に記録された事項を記載することを要しない

となっています。

それでもって平成14年法律第151号 情報通信技術を活用した行政の推進等に関する法律 によるとき

(電子情報処理組織による申請等)
第六条 申請等のうち当該申請等に関する他の法令の規定において書面等により行うことその他のその方法が規定されているものについては、当該法令の規定にかかわらず、主務省令で定めるところにより、主務省令で定める電子情報処理組織(行政機関等の使用に係る電子計算機(入出力装置を含む。以下同じ。)とその手続等の相手方の使用に係る電子計算機とを電気通信回線で接続した電子情報処理組織をいう。次章を除き、以下同じ。)を使用する方法により行うことができる。
(略)
4 申請等のうち当該申請等に関する他の法令の規定において署名等をすることが規定されているものを第一項の電子情報処理組織を使用する方法により行う場合には、当該署名等については、当該法令の規定にかかわらず、電子情報処理組織を使用した個人番号カード(行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律(平成二十五年法律第二十七号)第二条第七項に規定する個人番号カードをいう。第十一条において同じ。)の利用その他の氏名又は名称を明らかにする措置であって主務省令で定めるものをもって代えることができる。

となるので、電子的な申請ができるということになります。「個人番号カードの利用その他の氏名又は名称を明らかにする措置であって主務省令で定めるもの」という定めがなされています。これについては商業登記規則ですと「第三章 電子情報処理組織による登記の申請等に関する特例」で詳細に論じられています。特に申請方法は、102条です

(登記申請の方法)
第102条 前条第一項第一号の規定により登記の申請をするには、申請人又はその代表者若しくは代理人(以下この章において「申請人等」という。)は、法務大臣の定めるところに従い、法令の規定により申請書に記載すべき事項に係る情報に第三十三条の四に定める措置を講じたもの(以下「申請書情報」という。)を送信しなければならない。
2 申請人等は、法令の規定により登記の申請書に添付すべき書面(法第十九条の二に規定する電磁的記録を含む。)があるときは、法務大臣の定めるところに従い、当該書面に代わるべき情報にその作成者(認証を要するものについては、作成者及び認証者。第五項において同じ。)が前項に規定する措置を講じたもの(以下「添付書面情報」という。)を送信しなければならない。ただし、添付書面情報の送信に代えて、登記所に当該書面を提出し、又は送付することを妨げない。
3 申請人等(委任による代理人を除く。)が登記の申請をする場合において、申請書情報を送信するときは、当該申請人等が第一項に規定する措置を講じたものであることを確認するために必要な事項を証する情報であつて次のいずれかに該当するものを併せて送信しなければならない。
一 第三十三条の八第二項(他の省令において準用する場合を含む。)に規定する電子証明書
二 電子署名等に係る地方公共団体情報システム機構の認証業務に関する法律第三条第一項の規定により作成された署名用電子証明書
三 電子署名及び認証業務に関する法律(平成十二年法律第百二号)第八条に規定する認定認証事業者が作成した電子証明書(電子署名及び認証業務に関する法律施行規則(平成十三年総務省・法務省・経済産業省令第二号)第四条第一号に規定する電子証明書をいう。)その他の電子証明書であつて、氏名、住所、出生の年月日その他の事項により当該措置を講じた者を確認することができるものとして法務大臣の定めるもの
四 官庁が嘱託する場合にあつては、官庁が作成した電子証明書であつて、登記官が当該措置を講じた者を確認することができるものとして法務大臣の定めるもの

ちなみに、これを前提にした「商業・法人登記のオンライン申請について」の法務省のページはこちらです。法務省のページによると

(1)商業登記電子証明書 (注1)

(2)公的個人認証サービス電子証明書 (注2)

(3)特定認証業務電子証明書 (注3)

セコムパスポート for G-ID」 (セコムトラストシステムズ株式会社)
  (氏名、住所、出生年月日を確認することができるものに限る。)

(4)官職証明書 (注4)

ア 「政府認証基盤(GPKI)発行の官職証明書

イ 「地方公共団体組織認証基盤(LGPKI)発行の職責証明書

となるわけです。

でもって今回は、(2)のいわゆるマイナンバーカードの証明書を使って、電子署名をします。

2 申請用総合ソフトとJPKI 利用者ソフト

実際に申請を行うにあたっては、申請用総合ソフトを操作して行うことになります。

弁護士法人の住所移転になります。でもって、大体の流れを事前にイメージしておくのは、重要です。

紙による申請だと、

  • 添付書類の準備
  • 申請書類の準備
  • 提出

となるわけです。この必要な書類については、「本店移転したら必ず定款変更?確認すべきポイントを解説」などのブログがあります。これは、電子的なものとしても同様です。

2.1 添付書類の準備

弁護士法人においては、社員が業務執行権限を有します。そこで、業務執行議事録をするわけですが、同一の管轄区域内でする場合については、特に定款変更はいりません。なので、必要書類としては、業務執行議事録だけになります。

ここで、ポイントなのは、

オンライン申請をする場合に、申請書情報及び添付書面情報を登記・供託オンライン申請システムに送信するには、申請人又はその代理人(以下「申請人等」といいます。)は、あらかじめ、次の区分に応じた電子証明書を取得し、その電子証明書を申請書情報及び添付書面情報と共に送信する必要があります。

ということです。

なので、業務執行議事録にマイナンバーカードで、電子署名をしておくことになります。前から、スマートカードリーダーは、もっていたのですが、Windows 10には、対応していなかったので、あたらしいのを買いました。サンワサプライ ADR-MNICU2です。PCにつないで、ICカードリーダ設定を動かして、きんと認識されていることを確認します。

それで、JPKI利用者ソフトで、自分の証明書を見て、きちんと動くことを確認します。

それで、業務執行議事録に電子署名を付すのですが、PDF署名プラグインが準備されています。

このプラグインを利用した場合は、pdfに署名の画像がつくこともできるみたいなので、何か機会があったときには、利用してみたいと思います。私は、この部分を読まないで、総合ソフトのツールでもって、電子署名を付しました。この場合は、フォルダーにpdfのファイルとxmlのファイルができます。

XMLは、

<SignatureValue>nZo+(省略)p8Firtw==</SignatureValue>

<X509Certificate>MIIGyzCCBbOgAwI(省略)</X509Certificate>

などなどのデータが記載されています。

2.2 申請書類の準備

あとは、総合申請ソフトに従って、書類を作成します。まずは、最初の画面。

この画面の申請書作成のところをクリック。すると、申請のための種類を選びます。

法人等用で「登記申請書(法人等用) 会社以外の法人、特定会社等(署名要)を選択。そうすると、このような申請書の登記申請書の様式がでてきます。

これを説明書をみながら、埋めていきます。

ここで、登記すべき事項については、「別紙表示」のところを選択すると、このようなドロンプダウンがでて、選択すると、例文がでてきます。それを参考に文章を作成。

これでもって、申請書は、完成です。

2.3 電子署名の付与と申請

処理状況表示の画面にいって、添付書類をつけます。そして、最後に署名を付与します。

すると、

こんな感じになるので、ICカードで署名。

でもって、終了です。(この時に、添付書類については、電子署名についてのフォルダを添付しました-これがいいのかは、わかりません)

ということで、マイナンバーカードを使うことによって、法務局に出向かないで、変更の登記申請ができたので、面白かったです。

 

関連記事

  1. 小室圭「社会的企業のためのクラウドファンディング法の改革に向けた…
  2. 「『発言者の特定禁止』という謎ルール」の謎を追う-チャタムハウス…
  3. 飯野町「UFO研究所」開所記念-米国 情報長官室のUAP報告書 …
  4. EU「よりよき規制」ガイドライン(Better Regulati…
  5. (東京2020開会式記念)ドローンの通信の傍受の法的位置づけ
  6. MSのTeamsの最高裁判所(ゲスト)アカウントで「このリソース…
  7. WebARENA Suite Xで、独自SSLを導入する(上)
  8. 松尾剛行先生より「法学部生のためのキャリアエデュケーション」をい…
PAGE TOP