無線通信の「通信の秘密」の歴史

ちょっと、「無線通信」についての「通信の秘密」が、米国では、どのように扱われているのかを見ていきたいと思います。

1 日本における無線通信の「秘密の保護」の 解釈論

電波法の「秘密の保護」の条文をおさらいします。同法59条は、

何人も法律に別段の定めがある場合を除くほか、特定の相手方に対して行われる無線通信(電気通信事業法第四条第一項又は第百六十四条第三項の通信であるものを除く。第百九条並びに第百九条の二第二項及び第三項において同じ。)を傍受してその存在若しくは内容を漏らし、又はこれを窃用してはならない。

となっています。この条文は、

  • 「特定の相手方に対して行われる」
  • 無線通信
  • 「傍受してその存在若しくは内容を漏らし」の禁止、または
  • 「窃用」の禁止

となります。以下、解釈論は、今泉至明「電波法要説」によります。

「特定の相手方に対して行われる」

送信者と受信者が特定されていて、その間に特定性または個別性が存在する通信である

とされています。

「無線通信」

「無線通信」とは、電波を使用して行うすべての種類の記号、信号、文言、影像、音響又は情報の送信、発射又は受信をいう。

です(電波法施行規則2条15号)。

「傍受してその存在若しくは内容を漏らし」の禁止
  • 「傍受」とは、積極的意思をもって、自己に宛てられていない無線通信を受信することである。
  • 「存在」とは、その通信の個別性を識別しうる情報を含んだものである必要がある(具体的的には、その周波数、電波の型式、入感時間、電信電話の別等)。
  • 「内容」とは、その通信が伝達しようとしている意思の認識である。
  • 「漏らし」とは、他人に積極的に告げる場合のほか他人の知りうる状態に置くことである

とされています。

「窃用」の禁止

 無線通信の秘密(存在または内容)を発信者または受信者の意思に反してそれを自己または第三者のために利用することである

とされています。

ここで、「窃用」という用語ば結構、重要で、我が国の電気通信事業法の一般的な解釈本では、条文にないのに、権限なき傍受・漏えい以外に「窃用」の禁止を意味するとされています。その一方で、電波法には、窃用の用語が法文で用いられています。で、この窃用の用語がどこから来ているのかというのは、個人的には、ちょっとわかっていないところです。

でもって、総務省・消費者行政か(当時)は、この「窃用」を「(発信者又は受信者の意思に反して)利用することをいう」と解釈していたりするので、よくわからなくなったりします。個人的には、「同意なしでも、公共のために利用できる」のではないか、そこに「窃」の意味があるのではないかとおもっていたりします。

2 無線通信の「秘密の保護」の歴史

無線通信の法規を理解するには、無線通信の条約等などもふまえて歴史的立場から理解しないといけなくなるかと思います。でもって、この点については、「電気通信大学60年史 前編1章  無線電信講習所設立の歴史的背景」をみます。リンクは、こちら。

2.1 電磁波の発見

電磁波の発見については、

その存在をイギリスの物理学者マックスウェルが予言し、1888年にドイツの物理学者ヘルツが証明しました。

とのことです。(日本無線 ■第5回■無線通信の発展と日本無線(その1)) なお、村田製作所(「無線通信の基礎知識 – 無線の仕組み(2)のコラム部分」)

その後、

  • イタリアの発明家マルコーニが、電線を使わずに通信ができる無線電信機を発明(1895年)
  • マルコーニ無線電信社が、1899年に英仏海峡間、1901年には2,700㎞にも及ぶ大西洋を横断する長距離無線電信に成功
  • 逓信省(現・総務省)が無線電信研究所を創設(1896)無線電信機を開発(1897)
  • 1900年(明治33年)10月10日逓信省令第77号(電信法は第2条、第3条、第28条、及第48条を除くの外之を無線電信に準用す。)
  • 1906年(明治39年)10月万国無線電信条約同附属業務規則締結(ベルリンで開催された第1回万国無線電信会議(無線電信連合、加入国27、日本も加入))(公布 1908年6月)
  • 1912年(大正元年)4月タイタニック号事件(上記電気通信大学60年史 参照)
  • 1912年 第2回 万国無線電信会議(ロンドン) 海上人命安全条約の締結
  • 1915年(大正4年)1月 海上人命安全条約 発効
  • 1915年(大正4年)4月 無線電信法 制定(6月公布、11月施行)

となっています

2.2 万国無線電信条約同附属業務規則

でもって、万国無線電信条約(1906)をみます。この際の訓令を見ることができます。「無線電信ニ関スル国際会議ニ委員ヲ参列セシメ及之ニ対シ訓令ヲ附与ス」。

INTERNATIONAL RADIO TELEGRAPH CONVENTION OF BERLIN: 1906 はこちら

でもって、翻訳がみつからないので、DeepLが訳します。

条約 ドイツ、アメリカ合衆国、アルゼンチン、オーストリア、ハンガリー、ベルギー、ブラジル、ブルガリア、チリ、デンマーク、スペイン、トランス、イギリス、ギリシャ、イタリア、日本、メキシコ、モナコ、ノルウェー、オランダ、ペルシャ、ポルトガル、ルーマニア、ロシア、スウェーデン、トルコ、ウルグアイの間で締結された国際無線電信条約。下に署名する、上に列挙した諸国の政府の全権代表は、ベルリンにおいて会議を開き、批准を条件として、次の条約に合意した:


第1条 1. 締約国は、この条約の規定を、締約国により設置され、又は運用される沿岸の無線局及び船舶上の無線局の双方であって、沿岸と海上の船舶との間で公衆の用に供されるすべての無線局に適用することを自らに課する。両締約国は、更に、沿岸と海上の船舶との間の公衆の用に供する無線電信のための沿岸局を設置し、若しくは運用し、又は一般公衆の用に供するか否かを問わず自国の旗を掲げる船舶の船上に無線局を設置し、若しくは運用することを認められた私企業に対し、この規定の遵守を義務づけることを自らに課する。

第2条 「沿岸局」とは、海上の船舶との通信交換のために使用される陸上または常時係留されている船舶に設置されるすべての無線局をいう。 常時係留されていない船舶に設置されたすべての無線局は、「船上局」と呼ばれる。

第3条 沿岸局と船上局とは、当該局が採用する無線方式を区別することなく、ラジオグラムを交換する義務を負う。

第4条 第3条の規定にかかわらず、ある局は、通信の目的または採用された方式とは無関係のその他の事情によって決定される限定された公共サービスのために確保することができる。(5)各締約国は、沿岸局を特殊電線によって電信システムに接続するか、又は少なくとも沿岸局と電信システムとの間の迅速な交換を確保するその他の措置をとることを約束する。

第 6 条約 締約国は、第 1 条に掲げる沿岸局及び船舶上の局の名称並びに規則で定めるところにより、ラジ オグラムの交換を容易にし、及び促進するために必要なすべての情報を相互に通報するものとす る。

第 7 条約 各締約国は、第 1 条に掲げる局において、第 6 条に従ってデータが公表される設置とは別に、特別の無線通信を確立することを目的とするその他の装置の設置及び作動を、その装置の詳細を公表することなく、規定し、又は許可する権利を留保する。

第8条 無線局の業務は、できる限り他の無線局の業務に支障を与えないように組織するものとする。

第9条 無線局は、船舶からの遭難信号を絶対的に優先し、そのような信号に同様に応答し、必要とされる場合にはそのような措置をとる義務を負う。

第10条

ラジオグラムの料金の合計は、次のものから構成されるものとする

1: (a) 沿岸局に課される沿岸料金、(b) 船上局に課される船上料金。
2.電信システムの線路上を伝送するための料金は、一般規則に従って計算される。沿岸局の料金は、沿岸局が属する政府の承認に従うものとし、船舶局の料金は、船舶の旗国の政府の承認に従うものとする。 これらの各料金は、無線業務に対する衡平な報酬を基礎として、純粋かつ単純な 1 語当たりの料金表に従って定め られるものとし、ラジオグラム当たりの最低料金は任意とする。いずれの料率も、締約国が定める最高限度額を超えてはならない。但し、各締約国は、八百キロメートル(四百三十一・六八海里)を超える距離の無線局の場合又は無線局の設置若しくは作業に関する物理的条件のためその作業が著しく困難である無線局の場合には、その上限を超える料金を自由に認可することができる。ある国から発せられ、又はその国に向かつて発せられ、且つ、その国の沿岸局と直接交換される無線電信につい ては、締約国は、その国の電信線路による伝送に適用される料金を相互に通知するものとする。この料金は、沿海局が発信局又は到達局とみなされる原則から生ずる料金とする。

第11条 この条約の規定は、この条約と同一の効力を有し、かつ、この条約と同時に効力を生ずる規則によつて補足する。この条約及びこれに関連する規則の規定は、いつでも、締約国の共通の同意により変更することができる。全権大使会議又は単なる行政会議は、この条約又はこの規則の影響に応じて、随時開催する。

第12条。この会議は、締約国政府の代表で構成する。審議においては、各国は、一票の投票権を有する。ある政府がその植民地、領有地又は保護国のためにこの条約を堅持する場合には、その後の会議は、前項の適用については、その植民地、領有地若しくは保護国又はその一部を一国を形成するものとみなすことを決定することができる。ただし、植民地、領有地または保護領を含めて、一の政府が自由に行使できる票の数は、いかなる場合にも6をこえてはならない。

第13条 国際局は、無線電信に関するあらゆる種類の情報を収集し、調整し、及び公表し、条約又は規則の変更の申請を審査し、採択された改正を公布し、並びに一般に国際無線電信の利益のために付託されたすべての行政事務を行うことを任務とする。この機関の経費は、すべての締約国が負担する。

第14条 各締約国は、この条約の規定の適用を受けない船舶上又は沿岸のいずれかの局から発せられ、又はその局を目的とするラジオグラムを受信する条件を定める権利を留保する。

ラジオグラムを受信する場合には、通常の料金を適用する。

船舶上の局から進行し、かつ、締約国の沿岸局が受信し、又は締約国の行政機関が通過中に受理したラジオグラムは、転送しなければならない。

船舶に向けられたすべてのラジオグラムは、締約国の行政当局がそれを当初に又は非締約国から通過中に受理した場合にも、転送されるものとし、沿岸局は、非締約国の対象となる船舶上の局への転送を拒否する権利を留保する。

第15条 この条約の第八条及び第九条の規定は、第 1 条に掲げる無線設備以外の無線設備にも適用する。

第 16条.この条約の締約国でない政府は、その要請により、この条約に加入することができる。この条約への加入は、外交上の経路を通じて、最後の会議がその領域内で開催された締約国政府に通告されるものとし、締約国政府は、この条約への加入を残りの政府に通告するものとする。この条約への加入は、この条約のすべての条項を全面的に受諾し、かつ、この条約に定 めるすべての利益を享受することを意味する。

「第3条、第5条、第6条、第7条、第8条、第11条、第12条及び第17条の規定は、国際無線電信に適用する。

第18条 この条約又は第11条に掲げる規則の解釈又は実施に関して二以上の締約国政府の間に意見の不一致がある場合には、紛争中の問題は、相互の合意により、仲裁に付することができる。この場合において、関係各国政府は、問題となっている問題に利害関係を有しない他の政府を 選ぶものとする。仲裁人の決定は、投票の絶対多数によって行われる。投票が分かれた場合,仲裁人は,意見の相違を解決するために,同様に,争点となっている問 題に利害関係のない他の締約国を選択しなければならない。選択について合意が得られない場合、各仲裁人は利害関係のない締約国政府を提案 し、提案された政府間でくじを引くものとする。抽選は、第 13 条に規定する国際事務局がその領域内にある政府が行う。
第19条締約国は、この条約の実施を確保するために必要な措置を執り、又はそれぞれの立法府に提案することを拘束する。
第20条 締約国は、この条約の目的に関し自国において既に制定され、又は制定されることがある法令を相互に通報するものとする。
第 21 条 締約国は、第 1 条に定める以外の無線施設、特に、海軍施設及び軍事施設については、自国の全ての自由を保持するものとし、これらの施設は、この条約第 8 条及び第 9 条に定める義務にのみ 従うものとする。但し、それらの施設が一般の公共サービスのために使用される場合には、それらの施設は、そのサービスの実施において、送信の方式及び料金に関する規則の規定に従わなければならない。
第 22 条 この条約は、1908 年 7 月 1 日に効力を生ずるものとし、無期限又はいずれかの締約国によつて批准された日から 1 年を経過するまで効力を有する。この批准の批准は、その批准の名においてなされた政府にのみ影響を及ぼす。他の締約国に関しては、この条約は、なお効力を有する。

第 23 条〔批准 この条約は、できる限り遅滞なく、ベルリンにおいて批准し、且つ、批准書を交換する。この証として、各全権代表は、この条約の写し一通に署名し、この写しは、ドイツ帝国政府の公文書館に寄託し、この写しは、各締約国に送付する。1906年11月3日 ベルリンにて調印


ということで、秘密の保護については、「第 17 条 1875年7月10日から22日までのサンクト・ペテルブルグの国際電信条約第1条、第2条」の準用になります。

同条は、

第2条
両当事者は、通信の秘密及びその安全な伝達を確保するために必要なすべての措置を講じることを自らに課する。

となっています。

2.3 「無線電信法通義」再訪

2.3.1「無線電信法通義」の記載

私のブログでは、無線通信の「通信の秘密」については、

でふれているところです。でもって、その升本・「無線電信法通義」(1918)によるとその第11章罰則・第5節 無線電信による通信の秘密を犯すの罪 で第20条をみます。

同条をひらがなまじり文にすると以下の感じです

第20條
電信官署又は電話官署の取扱中に係る無線電信又は無線電話の通信の秘密を侵したる者は一年以下の懲役又は200円以下の罰金に処す
無線電信又は無線電話の事務に從事する者前項の通信の秘密を漏泄したるときは2年以下の懲役又は、500円以下の罰金に處す
本條の罪は告訴を待て之を論す

となっています。

ちなみに、無線電信法は、

無線電信法は1921年(大正10年)4月、第29条「航空機の無線電信、無線電話への準用」、第30条「本法適用について航空機を船舶と看倣す」及び1927年(昭和2年)ワシントン第3回万国無線電信会議で締結された万国無線電信条約の1929年(昭和4年)発効に伴う一部改正、の2回だけの改正で1950年(昭和25年)6月1日、電波法が施行されるまでの30年余の間無線通信の統制法規として存続した

だそうです。後述「電気通信大学60年史 前編1章  無線電信講習所設立の歴史的背景」(リンク)

米国(1912年8月無線通信取締法)、英国、カナダ(1913年無線電信法)が参照されています

としています。

2.3.2 1912年8月無線通信取締法

米国の1912年8月無線通信取締法の条文を記載します。 ですが、せっかくなので、アメリカは、原文にあたります。アメリカの1912年9月28日の無線通信規制規則についてのHTMLは、こちらです。

「1912年8月無線通信取締法」とされていますが、多分、 August 13, 1912 “An Act to regulate radio communication”. だと思います。リンクは、こちら。

この第4条 19項は、

メッセージの秘密(SECRECY OF MESSAGES.)

第19項 いかなる無線局または無線局の運営に携わる者またはその運営について知る者も、管轄裁判所またはその他の権限ある当局から法的に要求されない限り、その無線局によって送信または受信されたメッセージの内容を、そのメッセージの宛先である個人または個人、もしくはその権限を与えられた代理人、またはそのメッセージを目的地に転送するために雇われた他の無線局以外に、漏洩または公表してはならない。ここに規定されている場合を除き、メッセージを漏洩または公表して有罪となった者は、裁判所の裁量により、250ドル以下の罰金、または3カ月以下の懲役、または罰金と懲役の併科に処せられる。

となっています。「メッセージの内容」と明言されているところが興味深いです。もっとも、これは、主体が、「いかなる無線局または無線局の運営に携わる者またはその運営について知る者」とされていることによるとも思われます。

なお、初期のアメリカの無線通信についての規則等は、このページにまとめられています。

英国とカナダについては、次の機会に。

2.3.3 1927年万国無線通信条約(ワシントン)

1927年万国無線通信条約(ワシントン)は、こちらです。

ここで、第5条で、「通信の秘密(Secrecy of Correspondence) 」が採用されています。

第5条 通信の秘密 不正または欺瞞的な信号
締約国は、次のことを防止するために必要な措置を採択し、又はそれぞれの立法府に提案することを約束する:
(a) 無線電気設備による私的性格の通信(correspondence)の無権限の送信及び受信;
(b) 無線電気設備を用いて不正に傍受された通信の内容の漏えい又は単にその出所(exhence)の漏えい;
(c) 無線電気設備を用いて受信した通信文の不正な公表又は使用;
(d) 虚偽の又は欺瞞的な救難信号又は救難信号を送信し、又は流通させること。

ちなみにQ CODEは、117ページから。

2.3.4 1927年無線通信取締法

1927年法では、27条

第27条 何人も、無線通信を受信し、又は受信を援助してはならない。ただし、その内容、実質、趣旨、効果又は意味(the contents, substance, purport, effect, or meaning)を、許可された送受信経路を通じて、名あて人、その代理人若しくは弁護士以外の者、又は当該無線通信をその目的地に転送するために使用され、若しくは許可された電話、電信、有線若しくは無線局、又は当該無線通信が通過することがある諸通信センターの適正な会計若しくは配給担当官以外の者に漏らし、又は公表してはならない、 また、その権利を有しない者は、無線通信を受信し、又はその受信を援助して、自己の利益のため又はその権利を有しない他人の利益のために、その無線通信又はその中に含まれる情報(the same or any information therein contained)を使用してはならない; また、そのような傍受された無線通信を受信した者又はその内容、実質、趣旨、効果若しくは意味を知った者は、自己の利益のため若しくはその権利を有しない他人の利益のために、その無線通信又はその中に含まれる情報を使用してはならない: ただし、本条は、一般公衆の用に供するため、または遭難船舶に関連して、アマチュアまたはその他の者が放送または送信する無線通信の内容を受信し、漏洩し、公表し、または利用することには適用されない。

とされています。この段階で、一般人に対する規範も明らかにされています。しかも、

自己の利益のため若しくはその権利を有しない他人の利益のために、その無線通信又はその中に含まれる情報を使用してはならない

として、現在、教科書で「窃用」として解かれているものとほとんど同様の内容が条文として記載されているのは、興味深いです。

3 国際電気通信連合(ITU)(1932)

1932年において、1865年パリで創設の万国電信連合と1906年ベルリンで創設の国際無線電信連合がマドリッドにおいて統合され国際電気通信連合(ITU)として発足しました。

1932年の国際電気通信条約は、こちらです。

同条約における「秘密の保護」(Secrecy of Telecommunication)の条項は 24条

電気通信の秘密
§1 締約国は、国際通信の秘密を確保するため、使用する電気通信の方式に適合するすべての可能な措置を採用することを約束する。
§ 2. 但し、締約国は、自国の国内法令の適用又は関係国が締約国である国際条約の履行を確保するため、国際通信を権限のある当局に伝達する権利を留保する。

とされています。

4 米国の現行法について

3.1  1934年通信法

その後、1934年通信法によって、無線通信法が置き換えられることになります。でもって、この規定は、705条 コミュニケーションの無権限公表の規定になります。現在の版は、以下

705条  [合衆国法典第 47 編第 605 条]コミュニケーションの無権限の公表。
(a) 合衆国法典第18編第119章により許可されている場合を除き、有線または無線による州際コミュニケーションまたは外国間コミュニケーションを受信し、受信を援助し、送信し、または送信を援助する者は、その存在、内容、実質、趣旨、効果、または意味を、許可された送受信経路を除き、(1)受取人、その代理人、または弁護士以外の者に漏らしたり、公表してはならない、 (2)当該コミュニケーションを目的地に転送するために雇用され、又は権限を付与された者、(3)当該コミュニケーションが伝達される可能性のある様々なコミュニケーションセンターの適切な経理配給担当官、(4)自己が配属されている船舶の船長、(5)管轄裁判所が発行した召喚状に対する応答、又は(6)その他の合法的な当局の要求による場合を除く。

何人も、発信者の許諾を得ないで、無線コミュニケーションを傍受し、かつ、その存在、内容、実質、趣旨、効果又は意味を何人に対しても漏らし、又は公表してはならない。

無線による州際コミュニケーションまたは外国間コミュニケーションを受信し、または受信を補助する権限を有しない者は、かつ、当該コミュニケーション(またはそこに含まれる情報)を自己または権利を有しない他人の利益のために使用してはならない。

何人も、傍受された無線コミュニケーションを受信し、又は傍受されたことを知りながら当該コミュニケーション(又はその一部)の内容、実質、趣旨、効果若しくは意味を知り得た場合には、当該コミュニケーション(又はその一部)の存在、内容、実質、趣旨、効果若しくは意味を漏らし、若しくは公表し、又は当該コミュニケーション(又はそこに含まれる情報)を自己の利益のため若しくは権利を有しない他人の利益のために使用してはならない。

本条は、船舶、航空機、車両もしくは遭難者に関する、またはアマチュア無線局の運用者もしくは市民バンドの無線運用者によって送信される、一般公衆の利用に供する無線コミュニケーションの受信、漏洩、公表、または内容の利用には適用されない。
(b) (a)項の規定は、個人による傍受もしくは受信、またはそのような傍受もしくは受信の幇助(製造もしくは販売を含む)については適用されない。

(1) 当該番組が暗号化されていない場合。
(2)(A) 以下のような販売システムが確立されていない場合。
(i) 個人による私的視聴を許可する目的で、合法的に指定された代理人がいること。
(ii)かかる承認は、関係する個人が適切な代理人から入手可能であること。
(B) (A)号に記載された販売システムが確立されており、当該番組を受信する個人が、当該システムの下で私的視聴の承認を得ている場合。

(c) 何人も、公共放送サービスの全国番組サービスに含まれ、テレビ放送局による再送信による公衆視聴を目的とする衛星配信番組を暗号化してはならず、また暗号化を続けてはならない。ただし、本節の対象となる番組の暗号化されていない衛星送信が少なくとも1回提供される限り、本節は、同一番組の暗号化された衛星送信を追加することを禁止しない。

(d) 本節においては

(1) 「衛星ケーブル番組」とは、衛星を介して送信されるビデオ番組であって、ケーブル事業者がケーブル加入者に再送信するために直接受信することを主目的とするものをいう;
(2) 個人に関する「代理人」という用語には、当該個人の従業員を含む;
(3) 「暗号化」という用語は、衛星ケーブル放送番組に関して使用される場合、当該番組の聴覚的および視覚的特性(またはその両方)を、当該変更または改変の影響を排除するように設計された認定機器を有しない者による当該番組の不正受信を防止する目的で変更または改変した形態で送信することをいう;
(4) 「私的視聴」とは、衛星から直接衛星ケーブル番組を受信することができる、個人が所有または運営する設備により、個人の住居において私的に視聴することをいう;
(5) 「私的な金銭的利益」という用語には、個人がその使用について許可を得ていない番組を、その個人の住居で私的に使用することによって個人が得る利益は含まれないものとする; また、(e)項の(4)の違反の場合には、衛星ケーブル・プログラミングを認可または受信するために必要な機器の合法的な製造、頒布または販売に従事する者も含まれるものとする。

(e) (1)故意に第(a)項に違反した者は、2,000ドル以下の罰金、または6カ月以下の懲役、またはその両方を科される。
(2) (a)項に故意に、直接的または間接的な商業的利益または私的な金銭的利益を目的として違反した者は、最初の有罪判決に対しては5万ドル以下の罰金または2年以下の禁固刑、あるいはその両方が科され、それ以降の有罪判決に対しては10万ドル以下の罰金または5年以下の禁固刑、あるいはその両方が科される。
(3)(A)第(a)項または本項第(4)号の違反により不利益を被った者は、連邦地方裁判所または管轄権を有するその他の裁判所に民事訴訟を提起することができる。

(B) 裁判所は
(i)第(a)項の違反を防止または抑制するために、裁判所が妥当とみなす条件で、一時的差止命令および終局的差止命令を認めることができる;
(ii) (C)号に記載される損害賠償を認めることができる。
(iii) 勝訴した不利益を被った当事者に合理的な弁護士報酬を与えることを含め、全費用の回収を指示する。

(C)(i)本条に基づき裁判所が裁定する損害賠償は、損害を被った当事者の選択により、以下のいずれかの条項に従って計算されるものとする;
(I) 被害を被った当事者は、違反の結果として被った実際の損害、および実際の損害の計算において考慮されなかった、違反に起因する違反者の利益を回復することができる。違反者の利益を決定する場合、被害を被った当事者は、違反者の総収入のみを証明する必要があり、違反者は、控除可能な経費および違反以外の要因に起因する利益の要素を証明する必要がある。
(II) 被害を被った当事者は、訴訟に関わる第(a)項の各違反に対して、裁判所が正当と考える金額1,000ドル以上10,000ドル以下の法定損害賠償を、また訴訟に関わる本項(4)項の各違反に対して、裁判所が正当と考える金額10,000ドル以上100,000ドル以下の法定損害賠償を、それぞれ請求することができる。
(ii) 法廷が、違反が故意に、直接的または間接的な商業上の利益または私的な金銭的利益を目的として行われたと認定した場合、裁判所は、その裁量により、実際の損害賠償であるか法定損害賠償であるかを問わず、第(a)項の違反1件につき10万ドルを超えない額だけ、損害賠償額を増額することができる。
(iii)裁判所が、違反者がその行為が本条違反であることを認識しておらず、またそう信じる理由がなかったと判断した場合、裁判所はその裁量で、損害賠償額を250ドル以上に減額することができる。

(4) 電子的、機械的、その他の装置または機器を製造、組立て、改造、輸入、輸出、販売、または頒布した者は、その装置または機器が主として衛星ケーブル番組または家庭内衛星直収サービスの不正解読を支援するものであることを知りながら、または知る理由がありながら、または(a)項で禁止されるその他の行為を意図していることを知りながら、1回の違反につき50万ドル以下の罰金、または1回の違反につき5年以下の懲役、またはその両方を科される。本項の違反に対する罰則および救済措置の適用上、各装置に適用される本項に定める禁止行為は、個別の違反とみなされる。

(5) 本款に基づく罰則は、本タイトルの他の規定に基づく罰則に追加されるものとする。

(6) 本款のいかなる規定も、州またはその政治的下位部門が、第(a)項により禁止される無線コミュニケーションの傍受または受信を補助するために使用することを意図する者による機器の輸入、販売、製造または頒布に関する法律を制定または施行することを妨げるものではない。

(f)本節のいかなる規定も、合衆国法典第17編、それに基づく規則、規制、命令、またはその他適用される連邦法、州法、地方法に基づくいかなる権利、義務、責任にも影響を及ぼすものではない。

(g) 委員会は、個人視聴を目的とした衛星ケーブル番組の復号化を可能にする普遍的な暗号化標準の必要性に関する調査を開始するものとする。かかる調査を行うにあたり、委員会は以下を考慮するものとする。

(1) 運用中の機器に対する消費者の投資を含む、かかる標準の消費者コストおよび便益;
(2) 先進的なテレビジョン方式を含む技術的強化の組み込み;
(3) 当該規格が、衛星ケーブル番組の現在および将来の不正解読を効果的に防止するかどうか;
(4) 当該規格が、ケーブルシステムおよび衛星マスターアンテナテレビシステムを含む、暗号化衛星ケーブル番組の他の認定利用者に及ぼす費用および便益;
(5) 復号化機器の製造競争に対する当該基準の影響。
(6) かかる標準の制定に必要な委員会の手続きに伴う時間的遅延の影響 (h) 委員会が、第(g)項に規定される調査から収集した情報に基づき、普遍的な暗号化標準が必要であり、かつ公益に資すると判断した場合、委員会は、かかる標準を制定するための規則制定を開始するものとする。

ということで、(a)の図示をします。

漏えい・公表と「窃用」とでは、その存在部分についての利用が、含まれるかどうかというで用語が異なっていることがわかります。(ただし、厳密にそういえるかは、はっきりしていません)

3.2 1934年通信法の解説

連邦通信委員会(FCC)は、「無線通信の傍受および漏えい(Interception and Divulgence of Radio Communications)」というページを有しています。そこでは、

どのような無線通信の傍受や漏洩が合法なのか?

FCCおよび通信法は、以下のような特定の種類の無線通信の傍受および漏洩を禁じていません:

  • 単なる無線通信の傍受。例えば、コードレス電話で隣人の会話を聞いたり、ラジオ・スキャナーで緊急サービスの報告を聞いたりすること(ただし、電話関連の無線通信を傍受および/または録音することは、他の連邦法または州法に違反する可能性がある)。
  • 公衆が使用するために送信された特定の無線通信の漏洩(放送ラジオやテレビ放送など)。
  • 船舶、航空機、車両、遭難者に関する放送の漏洩。
  • アマチュア無線家または市民バンド無線家による送信の漏洩。

どのような傍受や漏洩が禁止されていますか?

通信法は、傍受した無線通信を自己の利益のために利用することを禁止しており、禁止されている行為としては、

  • タクシー会社が競争上の優位を得るために、ライバル会社の配車係と運転手の無線通信を傍受する。
  • ケーブルテレビや衛星放送などの有料テレビサービスの信号を無許可で傍受すること。
  • 他人の無線電話の会話の録音や内容を販売または出版する者。

無線通信を傍受するための機器についてはどうでしょうか?

  • 国内の携帯電話サービスに割り当てられている周波数で送信を受信できるもの。
  • 携帯電話通信を傍受するために、ユーザーが容易に改造できるもの。
  • デジタル伝送をアナログ音声に変換するように改造できる。

上述のような認可されていない機器を米国内で製造、輸入、販売、リースすることは違法である。

3.3 FCCのグーグル・ストリートビューの判断

FCCが、グーグル・ストリートビューにおいて、WiFiのデータをあつめてたの上記705条との関係であらそわれた事件がありました。その通知はこちらです。この判断についての分析はまたの機会にしたいと思います。

この点についての事案等のリンクは、こちら。

4 ボトムライン

結局、我が国の電波法における「窃用」の用語を直接・示唆するような比較法的な条文は見つからなかったということになりそうです。

 

 

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