「情プラ法」成立とオンライン投資詐欺広告対応への適用を考える

オンライン投資詐欺広告対応をきっかけに、インターネット媒介者の結果責任・対応責任という観点から、アメリカ・イギリス・欧州共同体の法的な枠組をみてきました。

ちょうど、そんなところに「改正プロバイダー責任制限法」(新名称)「情報流通プラットフォーム対処法」が、国会を通過しました。ニュースとしては、「SNS大手に違法投稿の迅速対応を義務付け…改正プロバイダー責任法が成立」(読売新聞)などです。

1  条文

条文等については、こちらになります。(総務省の国会提出法案のページはこちら)

をみていきます。

2 概要をベースに条文をみていく

2.1 概要

概要は、サマリ・背景(状況・課題)・改正の概要からなりたっています。

サマリは

  • 誹謗中傷等のインターネット上の違法・有害情報の流通は、ネット利用が国民生活に浸透する中で社会問題化。これまで、発信者情報開示に係る法改正等、累次の対応を実施。
  •  被害者からの要望が多い投稿の削除に関しては、制度化が進んでおらず、課題が多く存在。
  •  これらの課題に対応するため、大規模プラットフォーム事業者に対し、⑴対応の迅速化、⑵運用状況の透明化の具体的措置を求める制度整備を行う。

になります。

背景は、

  • 誹謗中傷等の状況として相談件数が高止まりする中、被害者が最も求める内容は投稿の削除

が指摘され、そのうえで、

  • 【削除に関する課題】として
    課題例① 削除の申請窓口が分かりづらく、申請が難しい
    課題例② 放置されると情報が拡散するため、被害者は迅速な削除を求めている
    課題例③ 削除申請をしても通知がない場合があり、削除がなされたかが分からない
    課題例④ 事業者の削除指針の内容が抽象的で何が削除されるか分からない

ことが指摘されています。

改正の概要としては

大規模プラットフォーム事業者(迅速化及び透明化を図る必要性が特に高い者として、権利侵害が発生するおそれが少なくない一定規模以上等の者。)に対して、以下の措置を義務づける。

とされ、具体的な措置として(1) 対応の迅速化 (権利侵害情報)(2) 運用状況の透明化となっています。

そして

上記規律を加えるため、法律(特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律 (プロバイダ等の免責要件の明確化、発信者情報開示請求を規定)の題名を「特定電気通信による情報の流通によって発生する権利侵害等への対処に関する法律」に改める。

となっています。

2.2 個々の条文

全体構成

  • 題名の改正(特定電気通信による情報の流通によって発生する権利侵害等への対処に関する法律)
  • 目次の改正(第四章発信者情報開示命令事件に関する裁判手続(第八条―第十九条)・第五章大規模特定電気通信役務提供者の義務(第二十条―第三十四条)・第六章罰則(第三十五条―第三十八条)」

へと改正がなされています。

第1条(目的)

この法律は、特定電気通信による情報の流通によって権利の侵害等があった場合について、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示を請求する権利について定めるとともに、発信者情報開示命令事件に関する裁判手続に関し必要な事項を定め、あわせて、侵害情報送信防止措置の実施手続の迅速化及び送信防止措置の実施状況の透明化を図るための大規模特定電気通信役務提供者の義務について定めるものとする。

ここでの改正点は、

  • 「侵害等」とされた
  • あわせて、侵害情報送信防止措置の実施手続の迅速化及び送信防止措置の実施状況の透明化を図るための大規模特定電気通信役務提供者の義務について定める

が追加されたことになります。

第2条(定義)

変更点は、以下のとおりです。(番号の変更は除く)

  • 3号 特定電気通信役務 特定電気通信設備を用いて提供する電気通信役務(電気通信事業法第二条第三号に規定する電気通信役務をいう。第五条第二項において同じ。)をいう。
  • 4号 特定電気通信役務提供者 特定電気通信役務を提供する者をいう。
  • 7号 侵害情報等 侵害情報、侵害されたとする権利及び権利が侵害たとする理由をいう。
  • 8号 侵害情報送信防止措置 侵害情報の送信を防止する措置をいう。
  • 9号 送信防止措置 侵害情報送信防止措置その他の特定電気通信による情報の送信を防止する措置(当該情報の送信を防止するとともに、当該情報の発信者に対する特定電気通信役務の提供を停止する措置(第二十六条第二項第二号において「役務提供停止措置」という。)を含む。)をいう
  • 14号 大規模特定電気通信役務提供者 第二十条第一項の規定により指定された特定電気通信役務提供者をいう

第3条(損害賠償責任の制限)

ここでの変更点は、2項の

特定電気通信役務提供者は、特定電気通信による情報の送信を防止する措置を講じた場合において、当該措置により送信を防止された情報の発信者に生じた損害については、当該措置が当該情報の不特定の者に対する送信を防止するために必要な限度において行われたものである場合であって、次の各号のいずれかに該当するときは、賠償の責めに任じない。

という規定に関して

二 特定電気通信による情報の流通によって自己の権利を侵害されたとする者から、侵害情報等を示して当該特定電気通信役務提供者に対し侵害情報送信防止措置を講ずる
よう申出があった場合に、当該特定電気通信役務提供者が、当該申出に係る侵害情報の発信者に対し当該侵害情報等を示して当該侵害情報送信防止措置を講ずることに同意するかどうかを照会した場合において、当該発信者が当該照会を受けた日から七日を経過しても当該発信者から当該侵害情報送信防止措置を講ずることに同意しない旨の申出がなかったとき。

と変更されています。これは、定義規定に侵害情報等・侵害情報送信防止措置がはいったことによると思われます。

なお、17条は、当事者に対する住所・氏名等の秘匿の規定ですが、法律の名称の変更によるものなので、省略。

第5章 規模特定電気通信役務提供者の義務

第20条
総務大臣は、次の各号のいずれにも該当する特定電気通信役務であって、その利用に係る特定電気通信による情報の流通について侵害情報送信防止措置の実施手続の迅速化及び送信防止措置の実施状況の透明化を図る必要性が特に高いと認められるもの(以下「大規模特定電気通信役務」という。)を提供する特定電気通信役務提供者を、大規模特定電気通信役務提供者として指定することができる。

一 当該特定電気通信役務が次のいずれかに該当すること。

イ 当該特定電気通信役務を利用して一月間に発信者となった者(日本国外にあると推定される者を除く。ロにおいて同じ。)及びこれに準ずる者として総務省令で定める者の数の総務省令で定める期間における平均(以下この条及び第二十四条第二項において「平均月間発信者数」という。)が特定電気通信役務の種類に応じて総務省令で定める数を超えること。
ロ 当該特定電気通信役務を利用して一月間に発信者となった者の延べ数の総務省令で定める期間における平均(以下この条及び第二十四条第二項において「平均月間延べ発信者数」という。)が特定電気通信役務の種類に応じて総務省令で定める数を超えること。

二 当該特定電気通信役務の一般的な性質に照らして侵害情報送信防止措置(侵害情報の不特定の者に対する送信を防止するために必要な限度において行われるものに限る。以下同じ。)を講ずることが技術的に可能であること。

三 当該特定電気通信役務が、その利用に係る特定電気通信による情報の流通によって権利の侵害が発生するおそれの少ない特定電気通信役務として総務省令で定めるもの以外のものであること。

2 総務大臣は、大規模特定電気通信役務提供者について前項の規定による指定の理由がなくなったと認めるときは、遅滞なく、その指定を解除しなければならない。

3 総務大臣は、第一項の規定による指定及び前項の規定による指定の解除に必要な限度において、総務省令で定めるところにより、特定電気通信役務提供者に対し、その提供する特定電気通信役務の平均月間発信者数及び平均月間延べ発信者数を報告させることができる。

4 総務大臣は、前項の規定による報告の徴収によっては特定電気通信役務提供者の提供する特定電気通信役務の平均月間発信者数又は平均月間延べ発信者数を把握することが困難であると認めるときは、当該平均月間発信者数又は平均月間延べ発信者数を総務省令で定める合理的な方法により推計して、第一項の規定による指定及び第二項の規定による指定の解除を行うことができる。

(コメント)ここでは、「侵害情報送信防止措置(侵害情報の不特定の者に対する送信を防止するために必要な限度において行われるものに限る。以下同じ。)を講ずることが技術的に可能であること。」という要件と「当該特定電気通信役務が、その利用に係る特定電気通信による情報の流通によって権利の侵害が発生するおそれの少ない特定電気通信役務として総務省令で定めるもの以外のものであること。」という要件とが気になります。

前者については、プロバイダ責任制限法逐条解説において、3条の解釈において

そもそも当該情報の不特定の者に対する送信を防止する措置を講ずることが技術的に可能でない場合には、結果回避可能性がなく、関係役務提供者に作為義務が生じることはないことから、それを明確化するものである。

(略)
また、技術的に可能かどうかは客観的に判断されるべきものであり、通常の技術力のある関係役務提供者であれば措置を講じることが可能であるが、当該関係役務提供者
の技術力では必要な限度で措置を講じることは不可能であるというような場合については、本項による責任の制限には該当しないものと解される。

と議論されています。

後者については、「単なる導管」たるインターネットサービスプロバイダー(接続)プロバイダーが指定されるものと考えられます。この点については、我が国では、NTT脅迫電報事件(大阪地判H16.7.7 大阪高判H17.6.3)において示された電気通信事業法34条(役務提供義務)(当時)について同条の提供義務は、

インターネット通信にも適用されると同様

であり、かつ、内容の違法性は、「正当な理由」に該当しないとしています(明言する論者はないようではあります)。

ちなみに、この事案は、ヤミ金融業者から脅迫電報を送りつけられた原告が、被告であるNTT各社に対して、脅迫電報を差し止めるべき義務があったのにこれを怠ったとして、不法行為に基づく慰謝料の支払いを求めた事件です。これに対して、大阪高裁は、

法1条が、同法による『利用者の利益の保護』を、公正な競争を促進して電気通信役務の円滑な提供を実現することによって図ろうとするものであることや、法34条(当時)が、電気通信事業者に電気通信役務の確実かつ安定的な提供を義務付けることによって利用者の利益の保護を図ったものであることからすれば、法34条の「正当な理由」とは、〈1〉天災、地変、事故等により電気通信設備に故障を生じ役務提供が不能の場合、〈2〉役務を契約約款に違反する条件で受けようとする者又は料金滞納者に対する場合、〈3〉その申込みを承諾することにより他の利用者に著しい不便をもたらす場合、〈4〉正常な企業努力にもかかわらず、需要に対して速やかに応ずることができない場合等、電気通信役務の提供をすることが不可能なとき、あるいは、役務を提供することが将来の電気通信役務の確実かつ安定的な提供の妨げとなるときをいうと解するのが相当である。

として、

当該電報の内容がヤミ金融業者等において債務者を脅迫して債権の回収を図ろうとする違法なものであるか否かは、上記各要件のいずれにも該当しないから、当該電報の内容に違法なものが含まれていたとしても、これを受け付け、配達することを拒むことが、法34条所定の「正当な理由」に当たるとはいえない。

としているものです。

当時の規定は、電気通信事業法の全面改正によって、25条「基礎的電気通信役務の範囲」(1項)に限るものとして明確化されました。

第一号基礎的電気通信役務を提供する電気通信事業者は、正当な理由がなければ、その業務区域における当該第一号基礎的電気通信役務の提供を拒んではならない。

となっています。この「第一号基礎的電気通信役務の提供」は、

(基礎的電気通信役務の提供)
第七条 基礎的電気通信役務(国民生活に不可欠であるためあまねく日本全国における提供が確保されるべき次に掲げる電気通信役務をいう。以下同じ。)を提供する電気通信事業者は、その適切、公平かつ安定的な提供に努めなければならない。
一 電話に係る電気通信役務であつて総務省令で定めるもの(以下「第一号基礎的電気通信役務」という。)

となっています。この総務省令は、昭和60年郵政省令第25号 電気通信事業法施行規則になりますが、14条(第一号基礎的電気通信役務の範囲)

第14条 法第七条第一号の総務省令で定める電話に係る電気通信役務は、次に掲げるもの(卸電気通信役務に該当するものを含む。)とする。
一 アナログ電話用設備なので省略
二 第一種公衆電話機(社会生活上の安全及び戸外での最低限の通信手段を確保する観点から、公道上、公道に面した場所その他の常時利用することができる場所又は公衆が容易に出入りすることができる施設内の往来する公衆の目につきやすい場所に設置される公衆電話機であつて、市街地(最近の国勢調査の結果による人口集中地区をいう。)においてはおおむね一キロメートル四方に一台、それ以外の地域(世帯又は事業所が存在する地域に限る。)においてはおおむね二キロメートル四方に一台の基準により設置されるものをいう。以下同じ。)を設置して提供する音声伝送役務(なので略)動
二の二 災害時に(略)
三 第一号に掲げる電気通信役務を提供する電気通信事業者が、事業用電気通信設備規則第三条第二項第六号に規定するインターネットプロトコル電話用設備(電気通信番号規則(令和元年総務省令第四号)別表第一号に掲げる固定電話番号を使用して音声伝送役務の提供の用に供するものに限る。以下この号において同じ。)を設置して提供する音声伝送役務であつて、次のイ及びロに掲げるもの
イ インターネットプロトコル電話用設備である固定端末系伝送路設備(当該設備に係る回線の全ての区間が光信号伝送用であるもの(共同住宅等(一戸建て以外の建物をいう。以下同じ。)内にVDSL設備その他の電気通信設備を用いるものを含む。)に限る。以下同じ。)のみを用いて提供される電気通信役務(インターネットプロトコル電話用設備である固定端末系伝送路設備に対応する部分に係るもの(当該電気通信役務がその他の電気通信役務と併せて一の種類の電気通信役務として提供されている場合であつて、当該一の種類の電気通信役務に係る固定端末系伝送路設備の大部分がインターネットプロトコル電話用設備である固定端末系伝送路設備で提供されているときは、当該一の種類の電気通信役務に係るものを含み、それ以外のときは、その種類の電気通信役務に係るものを除く。以下「光電話役務」という。)であつて、次のいずれかに掲げるものに限る。)
(1) 基本料金(利用者が電気通信役務の利用の程度にかかわらず支払を要する一月当たりの料金(付加的な機能に係るものその他これに類するものを除く。)をいう。以下このイ、次号イ、第二十三条の四第二項第十号の四及び第二十三条の九の五第一項第十二号の二において同じ。)の額(当該光電話役務の契約において、当該光電話役務以外の役務の契約(以下「他の役務契約」という。)が必要とされる場合にあつては、当該他の役務契約により利用者が支払うこととなる基本料金を合算した額とする。)が次のいずれかで提供されるもの
(イ) 第一種適格電気通信事業者が提供する第一号イに掲げる電気通信役務のうち、住宅用として提供されるもの(施設設置負担金(電気通信事業者が電気通信役務の提供を承諾する際に利用者から交付を受ける金銭をいう。以下このイ及び次号イにおいて同じ。)の支払を要しない契約に係るものを除く。)の基本料金(以下「月額住宅用基本料金」という。)の最高額を超えない額
(ロ) 当該光電話役務の提供に係る区域における第一種適格電気通信事業者が提供する第一号イに掲げる電気通信役務(施設設置負担金の支払を要しない契約に係るものを除く。)の基本料金の額(押しボタンダイヤル信号とそれ以外とに区分されている場合は押しボタンダイヤル信号に係る額とし、住宅用とそれ以外とに区分されている場合は利用の態様に応じた区分に係る額とする。)を超えない額((イ)に掲げるものを除く。)
(2) 地方公共団体(地方公共団体が出資する法人を含む。)が所有する電気通信設備に長期かつ安定的な使用権を設定することにより提供される光電話役務であつて、(1)に規定する基本料金の額が、月額住宅用基本料金の最高額に当該額の一割に相当する額を加えた額未満で提供されるもの
(3) 光電話役務の提供区域における当該電気通信事業者以外の者が提供する他の役務に係る事情、提供の方法等からみて(1)又は(2)に規定する光電話役務に相当するものとして別に告示で定めるもの
ロ インターネットプロトコル電話用設備である固定端末系伝送路設備(イに該当する電気通信役務に係るものに限る。)に係る緊急通報(警察機関、海上保安機関又は消防機関への緊急通報に係るもの(イに掲げるものを除く。)に限る。)
四 第一号に掲げる電気通信役務を提供する電気通信事業者が、ワイヤレス固定電話用設備を用いて提供する音声伝送役務であつて、次のイ及びロに掲げるもの
イ ワイヤレス固定電話用設備である端末系伝送路設備のみを用いて提供される電気通信役務(ワイヤレス固定電話用設備である端末系伝送路設備に対応する部分に係るものであつて、基本料金の額が当該電気通信役務の提供に係る区域における第一種適格電気通信事業者が提供する第一号イに掲げる電気通信役務(施設設置負担金の支払を要しない契約に係るものを除く。)の基本料金の額(押しボタンダイヤル信号とそれ以外とに区分されている場合は押しボタンダイヤル信号に係る額とし、住宅用とそれ以外とに区分されている場合は利用の態様に応じた区分に係る額とする。)を超えない額で提供されるものに限る。)
ロ ワイヤレス固定電話用設備に係る緊急通報(警察機関、海上保安機関又は消防機関への緊急通報に係るもの(イに掲げるものを除く。)に限る。)

となっています。

ちなみに令和4年の電気通信事業法の改正によって、高速ブロードバントは、

一定品質以上の高速度データ伝送電気通信役務を「第二号基礎的電気通信役務」として基礎的電気通信役務に位置付けることとしている

となっています。なお、参考として「電気通信事業法の一部を改正する法律」


第21条(大規模特定電気通信役務提供者による届出)

大規模特定電気通信役務提供者は、前条第一項の規定による指定を受けた日から三月以内に、総務省令で定めるところにより、次に掲げる事項を総務大臣に届け出なければならない。

一 氏名又は名称及び住所並びに法人にあっては、その代表者の氏名
二 外国の法人若しくは団体又は外国に住所を有する個人にあっては、国内における代表者又は国内における代理人の氏名又は名称及び国内の住所
三 前二号に掲げる事項のほか、総務省令で定める事項

2 大規模特定電気通信役務提供者は、前項各号に掲げる事項に変更があったときは、遅滞なく、その旨を総務大臣に届け出なければならない。

第22条(被侵害者からの申出を受け付ける方法の公表)
 大規模特定電気通信役務提供者(前条第一項の規定による届出をした者に限る。以下同じ。)は、総務省令で定めるところにより、その提供する大規模特定電気通信役務を利用して行われる特定電気通信による情報の流通によって自己の権利を侵害されたとする者(次条において「被侵害者」という。)が侵害情報等を示して当該大規模特定電気通信役務提供者に対し侵害情報送信防止措置を講ずるよう申出を行うための方法を定め、これを公表しなければならない。

2 前項の方法は、次の各号のいずれにも適合するものでなければならない。
一 電子情報処理組織を使用する方法による申出を行うことができるものであること。
二 申出を行おうとする者に過重な負担を課するものでないこと。
三 当該大規模特定電気通信役務提供者が申出を受けた日時が当該申出を行った者(第二十五条において「申出者」という。)に明らかとなるものであること。

(コメント)この条文については

  • 自己の権利を侵害された者

という点について考えてみます。

権利を侵害された者

これについては、プロバイダー責任制限法の解釈がそのまま適用されることになるはずです。上述のプロバイダ責任制限法逐条解説において、

「情報の流通により」としているのは、権利の侵害が「情報の流通」自体によって生じたものである場合を対象とするものであることを示すためであり、例えば詐欺に関する情報の場合には、権利の侵害が「情報の流通」自体によって生じたものとはいえないので、対象とならない。

とされています。比較法的には、概念について、権利侵害情報に限定するというようなアプローチはあまりとっていないといえるでしょう。

英国では、「違法コンテンツ」は、テロリズム、児童の性的搾取・虐待、自殺幇助、殺害予告、公序良俗違反(嫌がらせ、ストーカー行為、暴力の恐怖・挑発(憎悪犯罪を含む))、薬物・精神作用物質、銃器その他の武器の供給、不法移民の幇助、性的搾取、ポルノ(リベンジポルノを含む)、犯罪幇助、詐欺に関するもの。「有害なコンテンツ」とは、年齢不相応のもの、ポルノコンテンツに関するもの、または犯罪の閾値は満たさないが、自殺、自傷行為、摂食障害を助長・奨励・指示するもの、深刻な暴力を描写・奨励するもの、および/またはいじめに関するものである(詳細の規定あり)。また、欧州では、「違法コンテンツ」には、EU法または加盟国の法律に準拠しない情報または活動(製品の販売やサービスの提供を含む)が含まれ、その法律の正確な対象は問わない。したがって、DSAは、コンテンツだけでなく、物理的な商品や商行為(商品の販売やサービスの提供を含む)にも適用されます。しかしながら、DSAは有害なコンテンツを対象としていない。ただし、何が違法コンテンツとなるかの閾値は加盟国によって異なります。

我が国では、これに対して、「権利侵害情報」という概念が準備されています。表は、以下のとおりです。

項目 小項目
違法情報( 法令に違反したり、他人の権利を侵害したりする情報) 権利侵害情報(流通により他人の権利を侵害する情報) 名誉毀損情報、プライバシ侵害情報、著作権侵害情報等
その他の違法情報(法令に違反する情報) わいせつ情報、違法薬物の販売広告情報等
有害情報 公共の安全や秩序に対する危険を生じさせるおそれのある情報 爆発物の製造方法に関する情報、人を自殺に誘引する情報等
特定の者にとって有害と受け止められる情報 違法ではないアダルト情報等

ここで、権利侵害情報に限定されることになるので、英国における対象がテロリズム、児童の性的搾取・虐待、自殺幇助、殺害予告とうに及ぶとされること、欧州における違法コンテンツ一般に及んでいることと比較すると、限定がなされているということは一般論としてはいえます。

なお、ここにいう「権利が侵害された」とは、不法行為を規定する民法(明治29年法律第89号)第709条の「他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した」と同趣旨
であり、名誉毀損、プライバシー侵害、著作権侵害等、保護される法益の範囲に限定はない。
ないような場合には、これに含まれない

一般論として限定がなされているといえるとしても、著名人のパブリシティ権を侵害するような情報に対しても、この規定が適用されることなります。この点について論じられているかというのは、ちょっと調べていませんが、解釈論としては、当然に、今回の改正によって、メタに対して、オンライン詐欺広告対応のための相当な措置をしろということは当然にできることになると思います。

第23条(侵害情報に係る調査の実施)

大規模特定電気通信役務提供者は、被侵害者から前条第一項の方法に従って侵害情報送信防止措置を講ずるよう申出があったときは、当該申出に係る侵害情報の流通によって当該被侵害者の権利が不当に侵害されているかどうかについて、遅滞なく必要な調査を行わなければならない。

(コメント)配給者責任をもとに考えるとき、本来は、侵害情報送信防止措置を講ずるよう申出があった場合、これを怠れば、配給者は、法的な結果責任を負うべきものとなるはずです。それに対して、そのような結果責任によるインセンティブが効きにくいことから、むしろ、法的な(対応)義務として定めているということになります。もっとも、23条については、28条の透明性措置の対象にはなっていますが、これに対して、報告の徴収(29条)、勧告および命令(30条)の対象になるものではないです。

第24条(侵害情報調査専門員)
大規模特定電気通信役務提供者は、前条の調査のうち専門的な知識経験を必要とするものを適正に行わせるため、特定電気通信による情報の流通によって発生する権利侵害への対処に関して十分な知識経験を有する者のうちから、侵害情報調査専門員(以下この条及び次条第二項第二号において「専門員」という。)を選任しなければならない。2 大規模特定電気通信役務提供者の専門員の数は、当該大規模特定電気通信役務提供者の提供する大規模特定電気通信役務の平均月間発信者数又は平均月間延べ発信者数及び種別に応じて総務省令で定める数(当該大規模特定電気通信役務提供者が複数の大規模特定電気通信役務を提供している場合にあっては、それぞれの大規模特定電気通信役務の平均月間発信者数又は平均月間延べ発信者数及び種別に応じて総務省令で定める数を合算した数)以上でなければならない。

3 大規模特定電気通信役務提供者は、専門員を選任したときは、総務省令で定めるところにより、遅滞なく、その旨及び総務省令で定める事項を総務大臣に届け出なければならない。これらを変更したときも、同様とする。

(コメント)コモンローでは配給者責任の要件が、「現実の悪意」(actual knowledge)であり、欧州では、証拠を添えた通知とされており、とくにVSLPにおいては、「信頼された旗手」での判断が求められているのに比して、侵害情報専門員となっているということかと思います。

第25条(申出者に対する通知)

大規模特定電気通信役務提供者は、第二十三条の申出があったときは、同条の調査の結果に基づき侵害情報送信防止措置を講ずるかどうかを判断し、当該申出を受けた日から十四日以内の総務省令で定める期間内に、次の各号に掲げる区分に応じ、当該各号に定める事項を申出者に通知しなければならない。ただし、申出者から過去に同一の内容の申出が行われていたときその他の通知しないことについて正当な理由があるときは、この限りでない。
一 当該申出に応じて侵害情報送信防止措置を講じたとき その旨
二 当該申出に応じた侵害情報送信防止措置を講じなかったとき その旨及びその理由

2 前項本文の規定にかかわらず、大規模特定電気通信役務提供者は、次の各号のいずれかに該当するときは、第二十三条の調査の結果に基づき侵害情報送信防止措置を講ずるかどうかを判断した後、遅滞なく、同項各号に掲げる区分に応じ、当該各号に定める事項を申出者に通知すれば足りる。この場合においては、同項の総務省令で定める期間内に、次の各号のいずれに該当するか(第三号に該当する場合にあっては、その旨及びやむを得ない理由の内容)を申出者に通知しなければならない。
一 第二十三条の調査のため侵害情報の発信者の意見を聴くこととしたとき。二 第二十三条の調査を専門員に行わせることとしたとき。三 前二号に掲げる場合のほか、やむを得ない理由があるとき。

第26条(送信防止措置の実施に関する基準等の公表)

大規模特定電気通信役務提供者は、その提供する大規模特定電気通信役務を利用して行われる特定電気通信による情報の流通については、次の各号のいずれかに該当する場合のほか、自ら定め、公表している基準に従う場合に限り、送信防止措置を講ずることができる。この場合において、当該基準は、当該送信防止措置を講ずる日の総務省令で定める一定の期間前までに公表されていなければならない。

一 当該大規模特定電気通信役務提供者が送信防止措置を講じようとする情報の発信者であるとき。

二 他人の権利を不当に侵害する情報の送信を防止する義務がある場合その他送信防止措置を講ずる法令上の義務(努力義務を除く。)がある場合において、当該義務に基づき送信防止措置を講ずるとき。

三 緊急の必要により送信防止措置を講ずる場合であって、当該送信防止措置を講ずる情報の種類が、通常予測することができないものであるため、当該基準における送信防止措置の対象として明示されていないとき。

(コメント)デューディリジェンスの法理による対応責任が、インターネット媒介者の法律問題でのキーポイントであるとした場合に、対応する権利というのは、あるのか、ということになります。そもそも、「単なる導管」たるプロバイダであったとしても、自らのサービスが権利侵害情報の伝達に利用されるのを認容してはならないとしても、その一方で、通信の公平な取扱の要請はどうなるのかということになります。公表している基準がある場合には、いいのではないかとか、また、上記各号の場合も同様だろうということもいえます。「導管」の場合はさておくとしても、大規模特定電気通信役務提供者について公表している基準にもとづくことを条件としてデューデリジェンスによる送信防止権限が認められたということになります。この権限は、特別に「大規模特定電気通信役務提供者について」の特則なのか、ホスティングプロバイダについての基本的な権利(利用約款・ポリシ等で明らかにされているはず)ではあるものの確認的な位置づけで定められたとなるかについては、解釈として争われうることになると思われます。

2 大規模特定電気通信役務提供者は、前項の基準を定めるに当たっては、当該基準の内容が次の各号のいずれにも適合したものとなるよう努めなければならない。
一 送信防止措置の対象となる情報の種類が、当該大規模特定電気通信役務提供者が当該情報の流通を知ることとなった原因の別に応じて、できる限り具体的に定められていること。
二 役務提供停止措置を講ずることがある場合においては、役務提供停止措置の実施に関する基準ができる限り具体的に定められていること。
三 発信者その他の関係者が容易に理解することのできる表現を用いて記載されていること。
四 送信防止措置の実施に関する努力義務を定める法令との整合性に配慮されていること。

3 大規模特定電気通信役務提供者は、第一項第三号に該当することを理由に送信防止措置を講じたときは、速やかに、当該送信防止措置を講じた情報の種類が送信防止措置の対象となることが明らかになるよう同項の基準を変更しなければならない。

4 第一項の基準を公表している大規模特定電気通信役務提供者は、おおむね一年に一回、当該基準に従って送信防止措置を講じた情報の事例のうち発信者その他の関係者に参考となるべきものを情報の種類ごとに整理した資料を作成し、公表するよう努めなければならない。

第27条発信者に対する通知等の措置)

大規模特定電気通信役務提供者は、その提供する大規模特定電気通信役務を利用して行われる特定電気通信による情報の流通について送信防止措置を講じたときは、次の各号のいずれかに該当する場合を除き、遅滞なく、その旨及びその理由を当該送信防止措置により送信を防止された情報の発信者に通知し、又は当該情報の発信者が容易に知り得る状態に置く措置(第二号及び次条第三号において「通知等の措置」という。)を講じなければならない。この場合において、当該送信防止措置が前条第一項の基準に従って講じられたものであるときは、当該理由において、当該送信防止措置と当該基準との関係を明らかにしなければならない。
一 当該大規模特定電気通信役務提供者が送信防止措置を講じた情報の発信者であるとき。
二 過去に同一の発信者に対して同様の情報の送信を同様の理由により防止したことについて通知等の措置を講じていたときその他の通知等の措置を講じないことについて正当な理由があるとき。

第28条 措置の実施状況等の公表)

大規模特定電気通信役務提供者は、毎年一回、総務省令で定めるところにより、次に掲げる事項を公表しなければならない。

一 第23条の申出の受付の状況
二 第25条の規定による通知の実施状況
三 前条の規定による通知等の措置の実施状況
四 前3号に掲げる事項のほか、大規模特定電気通信役務提供者がこの章の規定に基づき講ずべき措置の実施状況を明らかにするために必要な事項として総務省令で定める事項

第29条(報告の徴収)

総務大臣は、第22条、第24条、第25条、第26条第1項若しくは第3項、第27条又は前条の規定の施行に必要な限度において、大規模特定電気通信役務提供者に対し、その業務に関し報告をさせることができる。

第30条 (勧告及び命令)

総務大臣は、大規模特定電気通信役務提供者が第22条、第24条(侵害情報調査専門員)、第25条(申出者に対する通知)、第26条(送信防止措置の実施に関する基準等の公表)第1項若しくは第3項、第27条(発信者に対する通知等の措置)又は第28条(措置の実施状況等の公表)の規定に違反していると認めるときは、当該大規模特定電気通信役務提供者に対し、その違反を是正するために必要な措置を講ずべきことを勧告することができる。(理解の便宜のために条文にタイトルをつけました)

2 総務大臣は、前項の規定による勧告を受けた大規模特定電気通信役務提供者が、正当な理由がなく当該勧告に係る措置を講じなかったときは、当該大規模特定電気通信役務提供者に対し、当該勧告に係る措置を講ずべきことを命ずることができる。

第31条(送達すべき書類)第20条第1項の規定による指定、第29条の規定による報告の徴収、前条第1項の規定による勧告又は同条第2項の規定による命令は、総務省令で定める書類を送達して行う。

2 第20条第1項の規定による指定又は前条第2項の規定による命令に係る行政手続法(平成5年法律第88号)第30条の規定による通知は、同条の書類を送達して行う。この場合において、同法第31条において読み替えて準用する同法第15条第3項の規定は適用しない。

第32条(送達に関する民事訴訟法の準用)->省略

第33条(公示送達)
総務大臣は、次に掲げる場合には、公示送達をすることができる。

一 送達を受けるべき者の住所、居所その他送達をすべき場所が知れない場合
二 外国においてすべき送達について、前条において読み替えて準用する民事訴訟法第108条の規定によることができず、又はこれによっても送達をすることができないと認めるべき場合
三 前条において読み替えて準用する民事訴訟法第108条の規定により外国の管轄官庁に嘱託を発した後六月を経過してもその送達を証する書面の送付がない場合

2 公示送達は、送達をすべき書類を送達を受けるべき者にいつでも交付すべき旨を総務省令で定める方法により不特定多数の者が閲覧することができる状態に置くとともに、その旨が記載された書面を総務省の掲示場に掲示し、又はその旨を総務省の事務所に設置した電子計算機の映像面に表示したものの閲覧をすることができる状態に置く措置をとることにより行う。
3 公示送達は、前項の規定による措置を開始した日から二週間を経過することによって、その効力を生ずる。
4 外国においてすべき送達についてした公示送達にあっては、前項の期間は、六週間とする。

(コメント)公示送達の規定が入っているのは、最初は、それほど、注目していなかったのですが、よく考えれば、外国法人から提供されるサービスに対しての送達の確保の問題があるなあと考えました。この点については、「外国法人等が電気通信事業を営む場合における電気通信事業法の適用に関する考え方 」がありました。国内向けにサービスを提供する意図を有していることが明らかであるかを基準とし、提供の意図を有していることが明らかであると判断され得る要素としては、客観的な外形的事実から意図を推認できることが適当と考え、(1)サービス提供の言語(サービスを日本語で提供していること)、(2)決済通貨(有料サービスの決済通貨に日本円があること)、(3)国内向けの販売促進行為の有無(国内におけるサービスの利用について、広告や販売促進等の行為 を行っていること)が要素となります。

ちなみに、独占禁止法に関する事件では、外国法人に関して、

  • マリンホース事件(2008)-公示送達
  • BHPビリトン=リオ・ティント事件(2008-10)
  • ブラウン管事件(2009)

があります(域外適用とされた例です)。

民事訴訟法108条は、

第108条 外国においてすべき送達は、裁判長がその国の管轄官庁又はその国に駐在する日本の大使、公使若しくは領事に嘱託してする

です。ご案内のように欧州ですと、域内に代理人をおかないといけないという規定が入るところですが、日本において、そのような規定がはいるものでもなく、公示送達の規定が整備されたということでしょうか。

第34条(電子情報処理組織の使用)->省略

2.3 図解

今回の改正の条文を図解してみたいと思います。

我が国においては、ホスティングプロバイダーの責任の根拠が不明確であり、また、権利侵害情報に対する通常のプロバイダーの対応権限が不明確です。その一方で、対応の基準の作成を義務づけ、対応を義務づけているのは、権利侵害情報に対してのインターネット媒介者の対応責任(ひいては、その対応へのインセンティブの設定)ということになり、望ましい方向性ということがいえるかと思います。

残された課題としては、

  • 単なる導管とされるようなプロバイダーであっても、対応の責任と権限があるのではないか、とくに権限ある当局からの命令に対してはこれに従うべきではないか、という議論
  • 大規模特定電気通信役務提供者ではないプロバイダーの送信防止措置等の権限の問題についての認識

になるように思います。

 

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