「シリア攻撃、「人道的措置」か「国際法違反」か 専門家に聞く」という日経新聞の記事が出ています。
サイバー領域に関する武力紛争法を研究していくと、このような国際人道法(International Humanitarian law)の観点を勉強することになります。
この記事では、ふれられていませんが、学問的には、このような介入(intervention)は、人道的介入(humanitarian intervention)といわれています。
外国の報道でも、この国際法上の議論についての紹介がなされているので、わが国でも、この議論が紹介されているのは、すごくいいことかとおもいます。
(たとえば、Syria, chemical weapons and the limits of international law
とか
Did air strikes on Syria break international law? The questions Corbyn must ask May
ですね)
教科書的には、1980年代までは、あまり明確に国家実行としては、意識されてはいませんでしたが、1990年代以降に国家実行として意識されるようになってきたとされます(日本の教科書、結構、このあたり冷淡ですね。Christine Gray “International Law and the Use of Force”33以下は、きちんと論じています)。
日本的には、この上野先生のページが詳しいですね。
まず、アメリカとフランスがクルド(Kurds)/シーア派(Shiittes)に対する人道的支援の根拠(1991)としてこの理論が用いられたそうです。
その後、イギリスが、人道的介入を明確な根拠として援用するようになってきたそうです。
そのあと、コソボが代表的な人道的介入の事例としてあげられています。
上野先生の事例だと、ユーゴ、ルワンダなどの例もあげられています。
日経は、違法とする立場にも結構、分量をさいていますけど、個人的には、人道的介入を認める立場のほうが、多数説かなと思っています。どうでしょうか。
サイバードメインを利用しての人道的な問題が発生する状況というのは、なかなか、考察しがたいかと思います。その意味では、サイバー法で、人道的介入が議論される状況は、生じないかと思いますが、内戦状況にある国において、あるところで、インフラの途絶が発生した場合には、それに対して、武力による介入が正当化されないのか、もしくは、サイバー力(たとえば、攻撃サイトに対して、これを封じ込める)による介入というのは、発生しうるのか、ということが、あとすこしすると議論されるようになるのかもしれません。