ロシア連邦のウクライナ侵略に対しては、国際法的な立場から、いろいろいとブログのエントリを纏めてきました。纏めると以下のようになります。
- ロシアのウクライナ侵略に対する日本政府の対応の法的位置づけ
- 武力紛争における非正規戦闘員の攻撃参加の法律問題
- ロシアのウクライナ侵略における宇宙の武力紛争法の論点
- 米国の適格中立性の概念-ロシアのウクライナ侵略行為に対する「中立性」の問題-戦時の法の概観とともに
- ジェノサイドの罪の防止及び処罰に関する条約に基づくジェノサイドの疑惑(ウクライナ対ロシア連邦)の判決(全文訳)
しかしながら、国連自体が、どのような決議をなしているのか、というのについては、纏めていなかったので、特に総会決議を全訳しておきたいと思います。
3月2日の総会決議のリンクはこちらになります。
第11回緊急特別会合
議題5
安全保障理事会議長宛のウクライナ国連常駐代表からの2014年2月28日付書簡(S/2014/136)
2022年3月2日に総会が採択した決議
[主委員会に言及せず(A/ES-11/L.1)、A/ES-11/L.1/Add. 及び A/ES-11/L.1/Add.1)]
ES-11/1.ウクライナに対する侵略
総会は、
国家間の法の支配の促進における国際連合憲章の最も重要性を再確認し、
憲章第2条に基づくすべての国の義務として、その国際関係において、いずれかの国の領土保全又は政治的独立に対する武力の威嚇又は使用を避け、又は国際連合の目的と矛盾するその他の方法を避け、平和的手段によりその国際紛争を解決することを想起する。
すべての加盟国は、その加盟国から生ずる権利及び便益を確保するために、この憲章に従ってその負う義務を誠実に履行しなければならないという憲章第二条(2)に基づく義務も想起する。
文書S/Agenda/8979に含まれる問題を検討するために総会の緊急特別会合を招集した2022年2月27日の安全保障理事会決議2623(2022)に留意し、
「平和のための団結」と題する1950年11月3日の総会決議377A(5)を想起し
また、1970年10月24日の決議2625(XXV)において、国際連合憲章に基づく国家間の友好関係及び協力に関する国際法の原則に関する宣言を承認し、そこに含まれる、一国の領土が武力の威嚇又は使用により他国による獲得の目的となってはならない原則を再確認していることを思い起こし、また、文書S/議題/8979に含まれる問題を検討する。
さらに、1974年12月14日の決議3314(XXIX)は、侵略を他国の主権、領土保全又は政治的独立に対する国家の武力行使又はこの憲章と矛盾するその他の方法によるものと定義していることを想起し、この憲章の目的及び原則と相容れないことを確認する。
自由、平等、正義及び人権の尊重を基礎とする国際平和を維持し強化すること並びにその政治的、経済的及び社会的制度又はその発展の程度にかかわりなく国家間の友好関係を発展させることの重要性に留意し、
1975年8月1日にヘルシンキで署名された「欧州安全保障協力会議最終法案」と1994年12月5日の「核兵器不拡散条約へのウクライナの加盟に関連した安全保障に関する覚書(ブダペスト覚書)」を想起し、
ロシア連邦による2022年2月24日の「特別軍事作戦」宣言を非難し、
ウクライナにおける 武力による威嚇または行使の結果として生じるいかなる領土獲得も合法と認められないことを再確認し、
住宅、学校、病院などの民間施設への攻撃、および女性、高齢者、障害者、子どもを含む民間人の犠牲者の報告について重大な懸念を表明し、
ウクライナの主権領域内でのロシア連邦の軍事作戦は国際社会が欧州で過去数十年間に見られなかった規模であり、戦争の惨劇からこの世代を救うために緊急の行動が必要であることを認識し、
一国が他国に対して武力を行使することは、すべての国が守ることを約束した原則を否定することであり、ロシア連邦の現在の軍事攻撃は憲章に反することを想起した2022年2月24日の事務総長の声明を支持し、
ロシア連邦がその核戦力の準備を強化する決定を行ったことを非難し、
国内避難民や難民の数が増加し、人道支援を必要としていることに重大な懸念表明し
ウクライナとその地域は穀物と農産物の輸出において世界で最も重要な地域の一つであり、世界のいくつかの地域で数百万人が飢饉やその危険に直面しているか深刻な食糧不安を経験していること、またエネルギー安全保障に影響を及ぼす可能性があることについても懸念を表明し、
事務総長、欧州安全保障協力機構及びその他の国際・地域機関によるウクライナに関する状況の緩和を支援するための継続的努力を歓迎し、対話の継続を奨励し、
1. 国際的に認められた国境内、その領海にまで及ぶウクライナの主権、独立、統一及び領土保全へのコミットメントを再確認し、
2.ロシア連邦が憲章第2条(4)に違反してウクライナに対して行った侵略を最も強い言葉で非難し、
3. ロシア連邦がウクライナに対する武力行使を直ちに停止し、いかなる加盟国に対してもこれ以上不法な武力による威嚇または行使を行わないことを要求し、
4.また、ロシア連邦が国際的に承認された国境内のウクライナの領域から直ちに、完全かつ無条件にすべての軍事力を撤退させることを要求する。
5. ウクライナのドネツクおよびルハンスク地域の特定の地域の地位に関連するロシア連邦による2022年2月21日の決定を、ウクライナの領土保全と主権に対する侵害であり憲章の原則と矛盾していると慨嘆し、
6. ロシア連邦に対し、ウクライナのドネツク及びルハンスク地域の特定の地域の地位に関連する決定を即時かつ無条件に撤回することを要求する。
7. ロシア連邦に対し、憲章及び友好関係に関する宣言に定められた原則を遵守することを求める
8. 締約国に対し、ミンスク合意を遵守し、その完全実施に向けてノルマンディー方式および日中韓コンタクトグループを含む関連する国際的枠組みにおいて建設的に作業するよう要求する;
9.すべての当事者に対し、ウクライナ国外への安全かつ自由な通行を許可し、ウクライナで支援を必要としている人々のための人道支援への迅速かつ安全で妨げられないアクセスを促進し、人道支援関係者や女性、高齢者、障害者、先住民、移民、子どもを含む脆弱な状況にある人々を含む民間人を保護し、人権を尊重するよう要求し
10. ベラルーシの、ウクライナに対する今回の不法な力の行使への関与を慨し、その国際義務を遵行することを求め
11. 国際人道法のあらゆる違反および人権の侵害と濫用を非難し、すべての当事者に対し、1949年のジュネーブ条約2および1977年のその追加議定書3を含む国際人道法の関連規定を厳格に尊重し、国際人権法を尊重することを求め、この点で、すべての当事者に対し、医療業務のみに従事するすべての医療従事者および人道支援者、それらの輸送手段および設備、ならびに病院およびその他の医療施設に対する尊重と保護を確保することをさらに要求し、
12. すべての締約国に対し、国際人道法に基づく、民間人および民間人の物を免れる義務を完全に遵守し、民間人の生存に不可欠な物に対する攻撃、破壊、除去または無用の長物化を行わず、人道支援活動に使用する人道的要員と委託物資を尊重し保護することを要求し、
13. 緊急援助調整官に対し、本決議書の採択後30日以内に、ウクライナの人道的状況及び人道的対応に関する報告書を提出するよう要請し、
14. ロシア連邦とウクライナの間の紛争を政治対話、交渉、調停及びその他の平和的手段により直ちに平和的に解決するよう要請し、
15.事務総長、加盟国、欧州安全保障協力機構、その他の国際・地域機関が、現状のデスケーリングを支援するための努力を継続し、また、ロシア連邦による侵略が生み出した人道的・難民的危機に対応するための国連ウクライナ危機調整官を含む国連と人道支援組織の努力を歓迎し、強く要請する;
16.第11回緊急特別総会を一時的に閉会し、加盟国の要請があれば総会議長に会合を再開する権限を与えることを決定する。
第 1 回総会 2022 年 3 月 2 日