続いて、サイバー作戦への対応、国際人道法および国際人権法の分析を見ていきます。
サイバー作戦への対応
まず、返報(retorsion)と区別することについての注意から分析が端待っています。
その活動が国際的に不正な行為に該当するかどうかにかかわらず、国家は常に悪意のある国家のサイバー活動に対して政治的責任を負うことができ、常に返報(国際法と矛盾しない非友好的な行為)で対応することができます。
国際的違法行為に該当する場合には、国家に責任が帰属することが前提となります。これについては、ニュージーランドは、国連の国際法委員会の国家責任案に則っています。
ニュージーランドは、証拠を開示する必要はないこと、司法手続きにおいて求められるわけではないことを述べています。また、対抗措置については、武力の行使レベルになることはできないことを述べています。
また、ニュージーランドの声明が、非外国が責任国に対して、対抗措置をとる意思があることを通知し、対抗措置をとる前に 交渉を申し出ることを提案する義務があることをのべていない。また、ニュージーランドは、集団的対抗措置を認める可能性があることをのべています。
サイバースペースにおける国際法の遵守に対する集団的な関心と、悪意のある国家と被害者国家の間の潜在的な非対称性を考慮すると、ニュージーランドは、被害者国家が、限られた状況下で、国際法に違反して行動している国家の遵守を誘導するために比例した対抗措置を適用する際に、他の国家に援助を要請することができるという提案を受け入れている。
このコメントについてシュミット先生は、
両者の立場には正論があるが、ニュージーランドの立場は法的には健全であり、実効性のあるサイバー対策を実施する能力が十分にない国には、確かに望ましいものである。
とコメントしています。
国際人道法および国際人権法
ニュージーランドの声明は、国際人道法および国際人権法を強調しています。
シュミット先生の分析によれば、ニュージーランドが、国際人道法における「攻撃」というのを機能の損傷に広げれたときに、1949年のジュネーブ条約追加議定書の49条にいう攻撃となるか、という論点については、まだ未解決であるとされています。
国際人権法についていえば、サイバースペースにおける活動は、表現の自由とプライバシーの権利などの人権を守る義務に従うことになります。
ニュージーランドは、この問題は “現在は未解決であり、多国間フォーラムでの更なる議論が有益であろう “と指摘している。これは賢明な助言である。実際、このような規範化の努力の間に議論する価値のある関連テーマは、オンラインでの権利の享受と行使を保護するために人権法の下で国家が負う積極的な義務である(パンデミックの文脈では、こちらを参照)。
結論
ここで、シュミット先生の結論をそのまま訳しておくことにしましょう
ニュージーランドは、サイバー空間における国際法の適用可能性について意見を述べただけでなく、非常に建設的にそうしており、それは称賛されるべきである。デューデリジェンスや人権の治外法権と同様に、法律が未解決であり、更なる検討が必要な場所を強調するその努力は、各国が困難なテーマに取り組むことを奨励することで、国際的な対話を前進させている。また、主権、デューデリジェンス、集団的対抗措置のような争点に立ち向かうニュージーランドの意欲は、特に称賛に値するものである。これは他の国が見習うべきことである。
となります。非常に、現時点おける種々の法と政策についてのコメントで注目すべきものということができるでしょう。