今年も、3月末までは、いろいろな調査関係で、結構、忙しかったわけですが、法律のチャットボットを作ってみたいなあと漠然と思っていました。
4月になって、作ろうと決意して、いろいろと調べてみると、いろいろとおもしろいことを感じたので、その備忘もかねて、すこし書きとめて置こうかと思います。
基本的には、クラウドまでは、新規技術も実際に体感していたけど、人工知能は、自分でいじってなかったので、あまり語れない(ただ、統計学は、きちんとわかるけどね)から、お勉強としていじってみましょ、というところです。
1 イメージ
最終的なイメージは、事務所のホームページのお問い合わせのページに、リンクをおいておいて、いろいろいなプラットフォームから、チャットで問いあわせしてもらって、それに対して、自動的に回答して、最後は、事務所への依頼に誘導して、その上に、事務所に依頼してもらうというしくみです。最終的に依頼してもらえる段階では、弁護士が、いろいろとどんな場合にも必要になるような一般的な質問に対しては、事前に回答してもらって、細かい点や困難な点について依頼者からききとりをすればいいというようなレベルまで準備ができているという仕組みです。
でもって、最初に準備する項目は、駒澤綜合法律事務所での得意分野である相続、離婚、債務、交通事故、不動産を必須にして、それ以外については、今後、追って準備するのがいいかな、ということです。
2 論点
このように考えたときに、具体的に、(1)どのプラットフォームに、(2)どのような仕組みを作っていって、(3)どこで仕組みの構築にかかる費用をマネタイズするか、ということ一緒に考えることなります。
(1)プラットフォーム
プラットフォームですが、とにかく、利用者が多くて、セキュアなメッセージ通信ができるものがいいです。わが国でいえば、Line、FaceBook,(Microsoft)Skypeあたりでしょうか。あと、できれば、プログラミングなしでできるといいなあ、ということになります。
(2)仕組み
実際に作っていきながら、わかったのは、(A)事前に法律相談のシナリオを作っていって、それをもとに、選択肢をしめして、そこから選んでもらうシナリオ方式にするのか(人工無脳?)、(B)相談者に自由に発言させて、それを人工知能で認識するのか、とい基本的に二つの方法があるということです。
特に、今回、シナリオベースで作ってみて、人工無脳(?)というものを、単なる定義の問題としてではなくて、実際の感覚として理解できたのは、よかったです。
あと、watsonの仕組みをいじってみると、a)intendとentityから、表現の意味を判断して、b) その意味に適する回答を自律的に準備するというのがチャットボットにおける人工知能と定義できるのかなと感じることができました。そうだとすると、「intendとentityから、表現の意味を判断して」なんていうのよりも、「相談したいのは、何」と聞いて、「相続、離婚、債務、交通事故、不動産、その他」から、タップしてもらったほうがはるかに効率的です。表現の意味の自律的判断もしくは回答の自律的準備がない場合を人工無脳(?)と定義することができるかと思います。
このように考えると、法律相談チャットボットの場合には、人工無脳(?)のほうが効率的であるということがいえます。
そもそも、法律は、これこれの事実があるときに、この効果が発生するとできているので、それらの事実がありますか、と聞いたほうがはるかに早いです。普通の人間の会話のなかで、もっともアルゴリズム的な処理に適している会話なような気がします。ということで、シナリオ式を優先するということにしました。
マネタイズは、よくわからないわけですが、法律のチャットボットは、事務所の宣伝ツールとしても、また、法律サービスのポータルのツールとしても可能性は高いと思います。たとえば、交通事故のチャットをしていて、最後は、この問題に詳しい交通事故専門の弁護士を探しますとかいわれて、近くの弁護士は誰々です、とでると、ホームページで探すのよりも、なぜか親近感がわきそうな気がします。
あと、今一つ実感したことですが、事務所にとっても、きわめて事務の効率化を図れるということです。チャットの情報を依頼者がみずから、データとして入力してくれる/揃えておいてほしい書類を準備して相談にきてくれるというのは、事務所を経営している身にとっては、非常に助かるかと思います。
3 ツールから考える
Chat botを作るためのツールは、たくさん、発表されています。
今回、作成するために試したものでも
などがあります。これらのツールの具体的な使い方やら評価は、またの機会にしたいと思います。
ということで、とりあえず、法律相談支援チャットボットが完成して、事務所のホームページからメッセージを送れるようにしておきました。
4 人工無脳の意義について
5月8日追記です
なお、上記では、シナリオ的なものをすべて、人工無脳として、記載していますが、人と知的な会話のシュミレートという要素を備えていないので、人工無脳ともいえないのではないかという指摘を受けました。
今回のツールは、まずは、チャットボットという形式を法律相談に利用してみたら、何が見えるのかという実験になるので、その意味で、人工無脳という定義にも該当しないのであれば、それは、それでいいかなと思います。それに伴って、タイトル等も人工無脳(?)に変更しました。