電子署名法2条の定義は、非常に幅広いものだったのではないか、という話を書きましたが、登記の際に、それでだせたら、印鑑証明つけられるのとバランスがおかしくないのという話があるので、すこしまとめました。
まずは、申請書に添付すべき電磁的記録は、商業登記法19条の2
登記の申請書に添付すべき定款、議事録若しくは最終の貸借対照表が電磁的記録で作られているとき、又は登記の申請書に添付すべき書面につきその作成に代えて電磁的記録の作成がされているときは、当該電磁的記録に記録された情報の内容を記録した電磁的記録(法務省令で定めるものに限る。)を当該申請書に添付しなければならない。
となっています。これは、商業登記規則36条1項で
第十九条の二の法務省令で定める電磁的記録は、第三十三条の六第四項第一号に該当する構造の電磁的記録媒体でなければならない。
とされています。そして、同じく4項
4 第一項の電磁的記録には、当該電磁的記録に記録された次の各号に掲げる情報の区分に応じ、当該情報の作成者が前項の措置を講じたものであることを確認するために必要な事項を証する情報であつてそれぞれ当該各号に定めるものを、法務大臣の指定する方式に従い、記録しなければならない。
一 委任による代理人の権限を証する情報 次に掲げる電子証明書のいずれか
イ 第三十三条の八第二項(他の省令において準用する場合を含む。)に規定する電子証明書
ロ 電子署名等に係る地方公共団体情報システム機構の認証業務に関する法律(平成十四年法律第百五十三号)第三条第一項の規定により作成された署名用電子証明書
ハ 氏名、住所、出生の年月日その他の事項により当該措置を講じた者を確認することができるものとして法務大臣の指定する電子証明書
二 前号に規定する情報以外の情報 次に掲げる電子証明書のいずれか
イ 前号イ、ロ又はハに掲げる電子証明書
ロ 指定公証人の行う電磁的記録に関する事務に関する省令(平成十三年法務省令第二十四号)第三条第一項に規定する指定公証人電子証明書
ハ その他法務大臣の指定する電子証明書
さらに印鑑を提出している場合には、5項
前項の場合において、当該作成者が印鑑の提出をした者であるときは、当該電磁的記録に記録すべき電子証明書は、同項第一号イに掲げる電子証明書に限るものとする。ただし、第三十三条の三各号に掲げる事項がある場合は、この限りでない。
となります。「イ 第三十三条の八第二項(他の省令において準用する場合を含む。)に規定する電子証明書」って何とみると
2 前項の規定により送信する情報(以下この章において「電子証明書」という。)には、法務大臣の指定する方式に従い、次に掲げる事項を表さなければならない。
一 第三十三条の六第五項第一号から第三号まで及び第六項の規定により同条第一項の電磁的記録に記録された事項
二 電子証明書の番号
三 電子証明書の作成年月日時
四 法第十二条の二第一項の登記所
五 電子認証登記所及び登記官
六 その他法務大臣の指定する事項
ちなみに、「第三十三条の六第五項第一号から第三号まで及び第六項の規定により同条第一項の電磁的記録に記録された事項」
は、
5 第一項の電磁的記録には、法務大臣の指定する方式に従い、次に掲げる事項を記録しなければならない。
一 第二項第一号及び第三号に掲げる事項(出生の年月日を除く。)
二 第三十三条の四の附属書Dに定める公開かぎの値
三 第三十三条の四に定める措置を特定する符号として法務大臣の指定するもの
四 法務大臣の指定する方式に従つて申請人が定める識別符号(第三十三条の十三第一項の規定による届出をする者を他の者と区別して識別するためのもの)
となります。
ここで、「第三十三条の四に定める措置を特定する符号として法務大臣の指定するもの」ということが、議事録署名人の秘密鍵ということになりそうです。(すみません。ここら辺は、まだ、確認してません)
でここで、33条の4の
法第十二条の二第一項第一号の法務省令で定める措置は、電磁的記録に記録することができる情報に、産業標準化法(昭和二十四年法律第百八十五号)に基づく日本産業規格(以下「日本産業規格」という。)X五七三一―八の附属書Dに適合する方法であつて同附属書に定めるnの長さの値が二千四十八ビットであるものを講ずる措置とする。
がでてきます。
JIS X5731-8 の付属書Dですが
規格番号 | JISX5731-8 | ||
---|---|---|---|
規格名称 | 開放型システム間相互接続-ディレクトリ-第8部 認証の枠組み | ||
主務大臣 | 経済産業 | ||
制定年月日 | 1997/10/20 | ||
最新改正年月日 | 2003/10/20 | 最新確認年月日 | 2019/10/21 |
となります。付属書Dは、Privilege Policy and Privilege Attribute Definition Examplesを引いています。
現行は、こちら。ISO/IEC 9594-8:2017
Information technology — Open Systems Interconnection — The Directory — Part 8: Public-key and attribute certificate frameworks
ということで、商業登記は、きちんとJISにのっとった仕組みとして完成しているわけです。なので、電子署名法の解釈で登記の話を出してくるのは、ちょっと場違いということになります。