ニュージーランド政府が「サイバー空間における国家行為に対する国際法の適用に関する声明」を公表しています。
原文は、こちらです。丸山さん(a.k.a まるちゃん )の解説・翻訳は、こちら。
当社のブログでも、サイバースペースにおける国家行為の位置づけについての各国の立場については、いくつか紹介しています。
タリンマニュアルまわりは、パネル紹介はこちら。
英国のコメントはこちら。
フランスのコメントはこちらです。
エストニアの立場は、こちらです。
シュミット先生の主権侵害についての講義は、こちら。
このニュージーランドの声明については、世界的にみて、きわめて一般的な立場をとっていると評価しうるものとみれると思っています。(なお、世界的な国際法コミュニティの対応については、まだ、調べていませんのでご容赦のほどを)
現在の一番の論点は、主権侵害の適用があるかということかと思いますが、この点について、ニュージーランドは、
サイバーの領域では、主権の原則は武力行使の禁止と内政不干渉の規則によって効力を発揮する。ニュージーランドは、領土主権単独の規則はサイバーの文脈でも適用されると考えているが、その適用の正確な境界線を明確化するためには、更なる国家の実践が必要であると認めている。
として、主権概念を武力行使の禁止概念と内政不干渉の原則の上位概念においています。もっとも、主権概念から、国際法上の具体的な規範が導かれることを否定する(英国は、否定しているように思えます)わけではなく
サイバースペースにおける領土主権の規則の適用は、サイバースペースを物理的な領域と区別するいくつかの重要な特徴を考慮に入れなければならない。特に、i) サイバースペースには明確な領土的リンクを持たない仮想的な要素が含まれていること、ii) サイバー活動には、複数の領土や拡散した管轄区域で同時に動作するサイバーインフラが含まれている可能性があること、iii) サイバースペースには物理的な距離がないため、悪意のある行為者は警告なしに標的に瞬時に影響を与えることができることを意味している。これらの特徴は、悪意のある行為者にとってはユニークな機会であり、国家にとっては防衛上の重要な課題でもある。また、悪意のあるサイバー活動が自国の領土から、あるいは領土を経由して行われるのを防ぐことも困難である。
として
ニュージーランドは、領土主権は、国家がサイバー手段を使用して他国の領土に顕在化した重大な有害な影響を引き起こすことを禁止するものであると考える。
という結論をとっています。
(翻訳は、まるちゃんのものをおかりしました。ありがとうございます)
シュミット先生的には、主権侵害がそれ自体、規範としての効力を持つだろうといっているわけですが、だからといって、すべての国内法違反行為が、主権侵害になるわけではありません。そのような見解を国家の声明として位置づけたという印象をもっています。(個人的には、主権概念と内政干渉禁止の概念を上位と下位規範に位置づけた点で分かりやすいなあと思っています)
ということで、シュミット先生のコメントを待ちたいところですが、今のところ、まだ、サイバー国際法のまわりでは、この声明が話題になっていなかったりします。ツイッターでふっておきました。