当社は、従前から、プライバシの実証的な分析に注力してきています。
IPA 「eID に対するセキュリティとプライバシに関するリスク認知と受容の調査報告」
岡田仁志・高橋郁夫「コンジョイント方式によるプライバシー分析 -携帯電話電子マネーの位置情報の認知の実証的検証を例に-」
このような見地から、実証的なプライバシ論を提示するサマリがあります。
EMCのプライバシーインデックス エグゼクティブサマリは、
1 すべてが欲しいパラドックス
2 何もしないパラドックス
3 ソーシャル環境というパラドックス
の三つがあると分析しています。
この調査の発表は、2014年7月だそうです。
学術的には、質問紙法での調査であり、トレードオフの実際を出すものとはいえないと考えていますが、問題点をきちんと分析している点は、評価すべきサマリかと思います。
ブログで触れられている時もありますね。「プライバシー・パラドックスとSNS利用」というブログで、アカデミックな文脈が、簡単に紹介されています。
一方、異なった意味で、「プライバシのパラドックス」という用語が使われることがあります。
「プライバシーのパラドックス: 尊重するほど多くの情報が手に入る」では、主体のプライバシを守れば、信頼が生まれ、たくさん利用してくれますよという意味で、このパラドックスという言葉を利用しています。EUのデータ保護論は、このようなスタンスを明確にすることも多いです。
ただし、実証的な分析からは、このようなデータは、得られない、具体的には、個人のプライバシが重要だと思う割合と、コンジョイント方式によって、得られる個人別のプライバシ要素に対する重要度は、相関関係にない、ということがいえます。学術的には、反証可能な論ということができるかもしれません。