ロシアのウクライナ侵略に対する日本政府の対応の法的位置づけ

ロシアのウクライナ侵略に対しての日本政府の対応を法的な見地からまとめたいと思います。

国際法的なタイムライン

  • 2月24日 ロシアがウクライナ各地で砲撃や空襲を開始
  • 2月25日 国連安全保障理事会 武力行使の即時停止と撤退の決議案の採決-ロシアが拒否権を行使
  • 3月2日 第11回国際連合緊急特別総会で、ロシアを非難し、軍の即時撤退などを求める決議案が賛成多数で採択
  • 3月16日 国際司法裁判所が、ロシアに対してウクライナでの軍事行動を即事停止するよう命じる仮保全措置

国際法的には、ロシアが国際的な違法行為を行っていることになります。これに対して、我が国は、一定の措置をとることができます。

(注)前に対抗措置をとることができるとして、「いままでのブログを参照ください。代表的なものとして「国際法上の対抗措置の概念」があります。」としたのですが、対抗措置は、被害国のとりうる措置になります。なので、この一定の措置の国際法上の位置づけは、今後の課題とさせてください。

国内的な行為

これについては、外務省の「ウクライナ情報に関する対応」のページがまとめています。また、ビジネスローヤーズでは、「日本政府による対ロシア経済制裁」が、経済制裁という観点からまとめています。経済産業省の関連をまとめたページは、こちらです

なお、ウクライナ侵攻以前から、2014年の「クリミア併合」に関して日本政府は、ロシアに対する経済制裁を導入し、継続しています。この件については、上記ビジネスローヤーズをご覧ください。

外務省のプレスリリースを時系列的に追うと以下のようになります。

1) 2月24日 ロシアによる「ドネツク人民共和国」及び「ルハンスク人民共和国」の「独立」承認並びに両「共和国」との条約批准等を受けた制裁措置(外務大臣談話)

  •  「ドネツク人民共和国」及び「ルハンスク人民共和国」関係者に対して、日本への査証の発給停止及び我が国国内に有する資産の凍結など
  • 「ドネツク人民共和国」及び「ルハンスク人民共和国」との輸出入の禁止措置を導入
  • ロシア政府による新たなソブリン債の我が国における発行・流通等を禁止/証券の発行等を禁止しているロシアの特定の銀行について、より償還期間の短い証券も対象に加える

2)2月25日 ロシアによるウクライナへの軍事行動の開始を受けた制裁措置

外務大臣談話「ロシアによるウクライナへの軍事行動の開始を受けた制裁措置」

 この軍事行動は、明らかにウクライナの主権及び領土の一体性を侵害し、武力の行使を禁ずる国際法の深刻な違反であり、国連憲章の重大な違反です。力による一方的な現状変更は断じて認められず、これは、欧州にとどまらず、アジアを含む国際社会の秩序の根幹を揺るがす極めて深刻な事態であり、我が国は最も強い言葉でこれを非難します。ロシアに対し、即時に攻撃を停止し、部隊をロシア国内に撤収するよう強く求めます。

  • 第一に、ロシアの関係者に対して、日本への査証の発給を停止するとともに、関係者・団体に対して我が国国内に有する資産の凍結などを行います。
  • 第二に、ロシアの3金融機関(開発対外経済銀行(VEB)、 Promsvyazbank、Bank Rossiya)に対して、我が国国内に有する資産の凍結などを行います。
  • 第三に、ロシアの軍事関連団体に対する輸出、国際的な合意に基づく規制リスト品目や半導体など汎用品のロシア向け輸出に関する制裁を行います。

上の制裁措置についてまとめているのが、外務省・財務省・経済産業省「ウクライナ情勢に関する外国為替および外国貿易法に基づく措置について」(2月26日)になります

(1)資産凍結等の措置

外務省告示(2月26日公布)により「ドネツク人民共和国」(自称)及び「ルハンスク人民共和国」(自称)(以下「両「共和国」」という。)関係者として指定された24個人及び資産凍結等の措置の対象となるロシア連邦の団体として指定された1団体に対し、(ⅰ)及び(ⅱ)の措置を実施します。

(ⅰ) 支払規制
外務省告示により指定された者に対する支払等を許可制とします。
(ⅱ) 資本取引規制
外務省告示により指定された者との間の資本取引(預金契約、信託契約及び金銭の貸付契約)等を許可制とします。
(注)ロシア連邦の団体として指定された1団体に対する資産凍結等の措置は令和4年3月28日から実施します。

(2)両「共和国」との輸出入禁止措置

ウクライナ(「ドネツク人民共和国」(自称)又は「ルハンスク人民共和国」(自称)を原産地及び仕向地とする場合に限る。)との輸出入を禁止する措置を導入します。

(3)ロシア連邦政府等による我が国における新規の証券の発行・流通禁止措置

(ⅰ) 証券の発行又は募集に係る規制
外務省告示(2月26日公布)により指定されたロシア連邦の政府その他政府機関等(以下「ロシア連邦政府等」という。)による本邦における新規の証券の発行又は募集を許可制とします。
(ⅱ) 証券の取得又は譲渡に係る規制
ロシア連邦政府等が新規に発行した証券の居住者による非居住者からの取得又は非居住者に対する譲渡を許可制とします。
(ⅲ) 役務取引規制
ロシア連邦政府等が本邦において新規に証券を発行し、又は募集するための居住者による労務又は便益の提供を許可制とします。

(4)ロシア連邦の特定の銀行による我が国における証券の発行等の禁止措置

本邦における証券の発行等を禁止しているロシア連邦の特定の銀行について、より償還期間の短い証券(30日超)を当該禁止措置の対象とします。

(5)国際輸出管理レジームの対象品目のロシア連邦向け輸出の禁止等に関する措置

国際輸出管理レジームの対象品目のロシア連邦向け輸出及び役務の提供について、審査手続を一層厳格化するとともに、輸出の禁止等に関する措置を導入します。

3) 3月1日 「ロシア連邦関係者及びロシア連邦の特定銀行に対する資産凍結等の措置等について」(令和4年3月1日付)

閣議了解「ロシア連邦関係者及びロシア連邦の特定銀行に対する資産凍結等の措置等について」(令和4年3月1日付)を行い、これに基づき、外国為替及び外国貿易法による次の措置を実施することとしています。

措置の内容

(1)資産凍結等の措置

 外務省告示(3月1日公布)により資産凍結等の措置の対象者として指定されたロシア連邦関係者(6個人)及びロシア連邦の特定銀行(3団体)に対し、(ⅰ)及び(ⅱ)の措置を実施する。
(ⅰ)支払規制
外務省告示により指定された者に対する支払等を許可制とする。
(ⅱ)資本取引規制
外務省告示により指定された者との間の資本取引(預金契約、信託契約及び金銭の貸付契約)等を許可制とする。
(注)資産凍結等の措置の対象となるロシア連邦の特定銀行として新たに指定された団体(ロシア連邦中央銀行を除く。)に対する資産凍結等の措置は令和4年3月31日から実施する。

(2)ロシア連邦の特定団体への輸出等に係る禁止措置

 外務省告示(3月1日公布)により「ロシア連邦の特定団体」として指定された49団体への輸出等に係る禁止措置を導入する。
先ずは、同団体への輸出に係る支払の受領等の禁止措置を令和4年3月8日から実施する。

(3)ロシア連邦の軍事能力等の強化に資すると考えられる汎用品の輸出等の禁止措置

 ロシア連邦の軍事能力等の強化に資すると考えられる汎用品の輸出等の禁止措置を導入する。

4) 3月3日 ロシア連邦、ベラルーシ共和国並びに「ドネツク人民共和国」(自称)及び「ルハンスク人民共和国」(自称)の関係者等に対する資産凍結等の措置等

閣議了解「ロシア連邦、ベラルーシ共和国並びに「ドネツク人民共和国」(自称)及び「ルハンスク人民共和国」(自称)の関係者等に対する資産凍結等の措置等について」(令和4年3月3日付)を行い、これに基づき、外国為替及び外国貿易法による次の措置を実施することとした。

措置の内容
(1)資産凍結等の措置

外務省告示(3月3日公布)により資産凍結等の措置の対象者として指定されたロシア連邦関係者(18個人)、ロシア連邦の特定銀行(4団体)、ベラルーシ共和国関係者(7個人・2団体)、「ドネツク人民共和国」(自称)及び「ルハンスク人民共和国」(自称)の関係者(30個人)に対し、(ⅰ)及び(ⅱ)の措置を実施する。
(ⅰ)支払規制
外務省告示により指定された者に対する支払等を許可制とする。
(ⅱ)資本取引規制
外務省告示により指定された者との間の資本取引(預金契約、信託契約及び金銭の貸付契約)等を許可制とする。
(注)資産凍結等の措置の対象となるロシア連邦の特定銀行として新たに指定された団体に対する資産凍結等の措置は令和4年4月2日から実施する。

(2)国際輸出管理レジームの対象品目のベラルーシ共和国向け輸出の禁止等に関する措置

国際輸出管理レジームの対象品目のベラルーシ共和国向け輸出及び役務の提供について、審査手続を一層厳格化するとともに、輸出の禁止等に関する措置を導入する。

5)3月8日 ロシア連邦及びベラルーシ共和国の関係者等に対する資産凍結等の措置等について

閣議了解「ロシア連邦及びベラルーシ共和国の関係者等に対する資産凍結等の措置等について」(令和4年3月8日付)を行い、これに基づき、外国為替及び外国貿易法による次の措置を実施することとした。

措置の内容
(1)資産凍結等の措置

外務省告示(3月8日公布)により資産凍結等の措置の対象者として指定されたロシア連邦関係者(20個人・2団体)及びベラルーシ共和国関係者(12個人・10団体)に対し、(ⅰ)及び(ⅱ)の措置を実施する。

(ⅰ) 支払規制
外務省告示により指定された者に対する支払等を許可制とする。
(ⅱ) 資本取引規制
外務省告示により指定された者との間の資本取引(預金契約、信託契約及び金銭の貸付契約)等を許可制とする。

(2)ロシア連邦向け石油精製用の装置等の輸出等の禁止措置

ロシア連邦向け石油精製用の装置等の輸出等の禁止措置を導入する。

(3)ベラルーシ共和国の特定団体への輸出等に係る禁止措置

外務省告示(3月8日公布)により「ベラルーシ共和国の特定団体」として指定された2団体への輸出等に係る禁止措置を導入する。
先ずは、同団体への輸出に係る支払の受領等の禁止措置を令和4年3月15日から実施する。

(4)ベラルーシ共和国の軍事能力等の強化に資すると考えられる汎用品の輸出等の禁止措置

ベラルーシ共和国の軍事能力等の強化に資すると考えられる汎用品の輸出等の禁止措置を導入する。

6)3月11日「ベラルーシ共和国の特定銀行に対する資産凍結等の措置について」

閣議了解「ベラルーシ共和国の特定銀行に対する資産凍結等の措置について」(令和4年3月11日付)を行い、これに基づき、外国為替及び外国貿易法による次の措置を実施することとした。

措置の内容

資産凍結等の措置
外務省告示(3月11日公布)により資産凍結等の措置の対象者として指定されたベラルーシ共和国の特定銀行(3団体)に対し、(ⅰ)及び(ⅱ)の措置を実施する。
(ⅰ)支払規制
外務省告示により指定された者に対する支払等を許可制とする。
(ⅱ)資本取引規制
外務省告示により指定された者との間の資本取引(預金契約、信託契約及び金銭の貸付契約)等を許可制とする。
(注)資産凍結等の措置の対象となるベラルーシ共和国の特定銀行として新たに指定された団体に対する資産凍結等の措置は令和4年4月10日から実施する。

7)3月14日 ウクライナをめぐる現下の国際情勢を踏まえた対応について(要請)

金融庁と財務省は、国内の暗号資産の交換業者に対し、ロシアの制裁対象者との取引を停止するよう要請。

令和2年 10 月 20 日、外為法の解釈運用通達を改正し、外為法第16 条第1項に規定する支払等には、暗号資産の移転を含むことを明確化しており、外為法に基づく資産凍結等の措置の対象者として外務省告示により指定された者(以下、資産凍結等の措置の対象者という。)に対する暗号資産の移転に係る支払も支払規制の対象とされている。

暗号資産交換業者においては、この趣旨を踏まえ、暗号資産交換業の適正かつ確実な遂行を確保する観点から、以下の措置を実施していただきたい。
なお、その実施に当たっては、別紙についても留意いただきたい。

① 顧客が指定する受取人のアドレスが資産凍結等の措置の対象者のアドレスであると判断した場合には、顧客に外為法の支払許可義務が課されていることを踏まえ、暗号資産の移転を行わないこと。顧客が指定する受取人のアドレスが資産凍結等の措置の対象者のアドレスである疑いがあると判断した場合には、資産凍結等の措置の対象者のアドレスでないことを確認した後でなければ、暗号資産の移転を行わないこと。

② 顧客から依頼を受けて暗号資産を移転した場合であって、暗号資産の移転先が資産凍結等の措置の対象者であることが判明したときは、金融庁、財務省等に速やかに報告すること。

③ 上記①②の措置の実効性を高めるため、暗号資産に係る取引について、モニタリングを強化すること

8)3月15日「 ロシア連邦関係者に対する資産凍結等の措置について」

これは、閣議了解「ロシア連邦関係者に対する資産凍結等の措置について」(令和4年3月15日付)を行い、これに基づき、外国為替及び外国貿易法による次の措置を実施することとした、として外務省告示(3月15日公布)により資産凍結等の措置の対象者として指定されたロシア連邦関係者(17個人)に対し、(ⅰ)支払規制及び(ⅱ)資本取引規制の措置を実施するというものです。

9)ロシアへの貿易上の優遇措置「最恵国待遇」を撤回する方針の表明

3月16日、岸田首相は、記者会見でロシアへの貿易上の優遇措置「最恵国待遇」を撤回する方針を表明しました

10)3月18日 「ロシア連邦関係者に対する資産凍結等の措置について」

これは、閣議了解「ロシア連邦関係者に対する資産凍結等の措置について」(令和4年3月18日付)を行い、これに基づき、外国為替及び外国貿易法による次の措置を実施することとしたとして、外務省告示(3月18日公布)により資産凍結等の措置の対象者として指定されたロシア連邦関係者(15個人・9団体)に対し、(ⅰ)支払規制及び(ⅱ)資本取引規制の措置を実施するというものです。

11)3月25日「ロシア連邦関係者に対する資産凍結等の措置等について」

これは、閣議了解「ロシア連邦関係者に対する資産凍結等の措置等について」(令和4年3月25日付)を行い、これに基づき、外国為替及び外国貿易法によって、(1)資産凍結等の措置
外務省告示(3月25日公布)により資産凍結等の措置の対象者として指定されたロシア連邦関係者(25個人)に対し、(ⅰ)支払規制(外務省告示により指定された者に対する支払等を許可制とする。) (ⅱ)資本取引規制(外務省告示により指定された者との間の資本取引(預金契約、信託契約及び金銭の貸付契約)等を許可制とする。)
(2)ロシア連邦の特定団体への輸出等に係る禁止措置
外務省告示(3月25日公布)によりロシア連邦の特定団体として指定された81団体への輸出等に係る禁止措置を実施する。
(3)ロシア連邦への奢侈品の輸出禁止措置
ロシア連邦に対する奢侈品の輸出を禁止する措置を導入する。

を行うものです。

12)4月12日「ロシア連邦関係者に対する資産凍結等の措置等について」

これは、閣議了解「ロシア連邦関係者に対する資産凍結等の措置等について」(令和4年4月12日付)を
行い、これに基づき、外国為替及び外国貿易法にもとづいて

  • (1)資産凍結等の措置
    外務省告示(4月12日公布)により資産凍結等の措置の対象者として指定されたロシア連邦関係者(398個人・28団体)に対し、(ⅰ)支払規制及び(ⅱ)資本取引規制の措置を実施する。
  • (2)ロシア連邦向けの新規の対外直接投資の禁止措置
  • (3)ロシア連邦からの一部物品の輸入禁止措置
    をなすものです。

これらの処分の法的根拠をみてみます。全体のイメージは、こんな感じです

1 資産凍結等の措置-支払規制

これは、外為法16条1項によるものです。同項は

第十六条 主務大臣は、我が国が締結した条約その他の国際約束を誠実に履行するため必要があると認めるとき、国際平和のための国際的な努力に我が国として寄与するため特に必要があると認めるとき、又は第十条第一項の閣議決定が行われたときは、支払等が、これらと同一の見地から許可又は承認を受ける義務を課した取引又は行為に係る支払等である場合を除き、政令で定めるところにより、本邦から外国へ向けた支払をしようとする居住者若しくは非居住者又は非居住者との間で支払等をしようとする居住者に対し、当該支払又は支払等について、許可を受ける義務を課することができる。

となっています。

ここで、10条1項の閣議決定ですが、

我が国の平和及び安全の維持のため特に必要があるときは、閣議において、対応措置(この項の規定による閣議決定に基づき主務大臣により行われる第十六条第一項、第二十一条第一項、第二十三条第四項、第二十四条第一項、第二十五条第六項、第四十八条第三項及び第五十二条の規定による措置をいう。)を講ずべきことを決定することができる。

となっています。

2 資本取引規制

2.1 序

これは、外為法21条1項によります。同項は

第二十一条 財務大臣は、居住者又は非居住者による資本取引(前条に規定する資本取引をいい、第二十四条第一項に規定する特定資本取引に該当するものを除く。次条第一項、第五十五条の三及び第七十条第一項において同じ。)が何らの制限なしに行われた場合には、我が国が締結した条約その他の国際約束を誠実に履行することを妨げ、若しくは国際平和のための国際的な努力に我が国として寄与することを妨げることとなる事態を生じ、この法律の目的を達成することが困難になると認めるとき、又は第十条第一項の閣議決定が行われたときは、政令で定めるところにより、当該資本取引を行おうとする居住者又は非居住者に対し、当該資本取引を行うことについて、許可を受ける義務を課することができる。

となっています。

ところで、「資本取引」というのは、前条に規定する資本取引になるので、外為法20条で定義がなされています。

資本取引とは、次に掲げる取引又は行為(第二十六条第一項各号に掲げるものが行う同条第二項に規定する対内直接投資等に該当する行為を除く。)をいう。
一 居住者と非居住者との間の預金契約(定期積金契約、掛金契約、預け金契約その他これらに類するものとして政令で定めるものを含む。以下同じ。)又は信託契約に基づく債権の発生、変更又は消滅に係る取引(以下「債権の発生等に係る取引」という。)
二 居住者と非居住者との間の金銭の貸借契約又は債務の保証契約に基づく債権の発生等に係る取引
三 居住者と非居住者との間の対外支払手段又は債権の売買契約に基づく債権の発生等に係る取引
四 居住者と他の居住者との間の預金契約、信託契約、金銭の貸借契約、債務の保証契約又は対外支払手段若しくは債権その他の売買契約に基づく外国通貨をもつて支払を受けることができる債権の発生等に係る取引
五 居住者による非居住者からの証券の取得(これらの者の一方の意思表示により、居住者による非居住者からの証券の取得が行われる権利の当該一方の者による取得を含む。)又は居住者による非居住者に対する証券の譲渡(これらの者の一方の意思表示により、居住者による非居住者に対する証券の譲渡が行われる権利の当該一方の者による取得を含む。)
六 居住者による外国における証券の発行若しくは募集若しくは本邦における外貨証券の発行若しくは募集又は非居住者による本邦における証券の発行若しくは募集
七 非居住者による本邦通貨をもつて表示され、又は支払われる証券の外国における発行又は募集
八 居住者と非居住者との間の金融指標等先物契約に基づく債権の発生等に係る取引
九 居住者と他の居住者との間の金融指標等先物契約に基づく外国通貨をもつて支払を受けることができる債権の発生等に係る取引又は金融指標等先物契約(外国通貨の金融指標(金融商品取引法第二条第二十五項に規定する金融指標をいう。)に係るものに限る。)に基づく本邦通貨をもつて支払を受けることができる債権の発生等に係る取引
十 居住者による外国にある不動産若しくはこれに関する権利の取得又は非居住者による本邦にある不動産若しくはこれに関する権利の取得
十一 第一号及び第二号に掲げるもののほか、法人の本邦にある事務所と当該法人の外国にある事務所との間の資金の授受(当該事務所の運営に必要な経常的経費及び経常的な取引に係る資金の授受として政令で定めるものを除く。)
十二 前各号に掲げる取引又は行為に準ずるものとして政令で定めるもの

ここで、大蔵省告示99号(外国為替及び外国貿易法第二十一条第一項の規定に基づく財務大臣の許可を受けなければならない資本取引を指定する件(平成十年三月大蔵省告示第九十九号)によると財務大臣の許可を受けなければならない資本取引として、以下のものがあがっています。

一 法第二十条第一号に規定する資本取引のうち、居住者と次に掲げる非居住者との間の預金契約(ロを除き、当該居住者が当該非居住者から受け入れるものを除く。)に基づく債権の発生、変更又は消滅に係る取引(以下「債権の発生等に係る取引」という。)(略)

二 法第二十条第一号に規定する資本取引のうち、居住者と次に掲げる非居住者との間の信託契約(ロを除き、当該居住者が当該非居住者から受託するものを除く。)に基づく債権の発生等に係る取引(略)

三 法第二十条第二号に規定する資本取引のうち、居住者による次に掲げる非居住者に対する金銭の貸付契約に基づく債権の発生等に係る取引(略)

四 法第二十条第二号に規定する資本取引のうち、居住者による次に掲げる非居住者からの金銭の借入契約又は当該非居住者に対して債務の保証をする契約に基づく債権の発生等に係る取引。(略)

五 法第二十条第五号に規定する資本取引のうち、居住者による非居住者(イラン政府、イラン国籍を有する自然人、イランの法令に基づいて設立された法人その他の団体(当該法人その他の団体の外国にある支店、出張所その他の事務所を含む。)若しくはイラン以外の地域に主たる事務所を有する法人その他の団体のイラン内の支店、出張所その他の事務所又はこれらのものにより実質的に支配されているものに限る。)に対する会社(国際連合安全保障理事会の事前承認により加盟国が許可することが可能となる、核技術等に関連するイランによる投資の対象となる業種として外務大臣が定めるもの(国際連合安全保障理事会決議に基づき、国際連合安全保障理事会の事前承認により加盟国が許可することが可能となる、核技術等に関連するイランによる投資の対象となる業種を指定する件(平成二十八年一月外務省告示第十九号)で定めるものをいう。)に属する事業を営む会社に限る。)の株式又は持分の譲渡

六 法第二十条第五号に規定する資本取引のうち、証券の発行等の禁止措置の対象となるロシア連邦の政府その他政府機関等として外務大臣が定めるもの(国際平和のための国際的な努力に我が国として寄与するために講ずる証券の発行等の禁止措置の対象となるロシア連邦の政府その他政府機関等を指定する件(令和四年二月外務省告示第八十号で定めるものをいう。以下「ロシア連邦政府等」という。)が令和四年二月二十六日以 後に発行した証券の居住者による非居住者からの取得又は居住者による非居住者に対する譲渡

七  法第二十条第六号に規定する資本取引のうち、非居住者(証券の発行等の禁止措置の 対象となるロシア連邦の団体として外務大臣が定めるもの(国際平和のための国際的な努力に我が国として寄与するために講ずる証券の発行等の禁止措置の対象となるロシア 連邦の団体を指定する件(平成二十六年九月外務省告示第三百十四号)で定めるものを いう。)に限る。)による本邦における証券(償還期限の定めのある証券にあっては、 当該償還期限が三十日を超えるものに限る。)の発行又は募集

八 法第二十条第六号に規定する資本取引のうち、非居住者(ロシア連邦政府等に限る。) による本邦における証券の発行又は募集

九 法第二十条第二号、第五号又は第十一号に規定する資本取引のうち、居住者による対外直接投資(法第二十三条第二項に規定する対外直接投資をいう。)に該当するもので あって、ロシア連邦において行われる事業に係るもの又はロシア連邦の法令に基づいて設立された法人(当該法人の外国(ロシア連邦を除く。以下この号において同じ。)に ある支店、出張所その他の事務所を含む。)若しくは当該法人に実質的に支配されている法人により外国において行われる事業に係るもの

十 前各号に掲げるもののほか、法第二十条第一号から第三号まで、第五号から第八号ま で又は第十号から第十二号までに規定する資本取引のうち、北朝鮮の核関連、弾道ミサ イル関連又はその他の大量破壊兵器関連の計画又は活動に貢献し得る活動として外務大臣が定めるもの(国際連合安全保障理事会決議に基づく資産の移転等の防止措置の対象 となる北朝鮮の核関連、弾道ミサイル関連又はその他の大量破壊兵器関連の計画又は活動に貢献し得る活動を指定する件(平成二十一年七月外務省告示第三百六十五号)で定 めるものをいう。)に寄与する目的で行うもの

2.2 預金契約、信託契約及び金銭の貸付契約

資本取引(預金契約、信託契約及び金銭の貸付契約)等を許可制とする(上記1号ないし3号)

2.3 ロシア連邦政府等による日本における新規証券の発行・流通禁止等

上の政令99号でもわかるように平成二十六年九月外務省告示第三百十四号によって、証券の発行等の禁止措置の 対象となるロシア連邦の団体として外務大臣が定めるもの(国際平和のための国際的な努力に我が国として寄与するために講ずる証券の発行等の禁止措置の対象となるロシア 連邦の団体を指定する件で、主要な5銀行(ズベルバンク、対外貿易銀行(VTB)、ロシア対外経済銀行、ガスプロムバンク、ロシア農業銀行)が定められていたのですが(7号)、還期限の定めのある証券にあっては、 当該償還期限が30日を超えるものに限ると短縮されています。

  • ロシア連邦政府等にによる本邦における証券の発行又は募集(8号)も追加されています。

2.4 居住者による対外直接投資の制限

4月12日に(2)ロシア連邦向けの新規の対外直接投資の禁止措置とされています。これも上の政令99号でもわかるものだと考えられます。

  • 居住者による対外直接投資に該当するものであって、ロシア連邦において行われる事業に係るもの又はロシア連邦の法令に基づいて設立された法人(略 )若しくは当該法人に実質的に支配されている法人により外国において行われる事業に係るものであって、金銭の貸借契約又は債務の保証契約に基づく債権の発生等に係る取引(20条2号)、居住者による非居住者からの証券の取得(略)又は居住者による非居住者に対する証券の譲渡(略)(20条5号)、居住者による外国にある不動産若しくはこれに関する権利の取得又は非居住者による本邦にある不動産若しくはこれに関する権利の取得(同10号)

3 輸出入関連規制

METI のページに輸出入規制に関してもまとまっています

3.1 輸入禁止措置

この制裁は、外為法52条によるものです。同法は、輸入の承認を定めており、

外国貿易及び国民経済の健全な発展を図るため、我が国が締結した条約その他の国際約束を誠実に履行するため、国際平和のための国際的な努力に我が国として寄与するため、又は第十条第一項の閣議決定を実施するため、貨物を輸入しようとする者は、政令で定めるところにより、輸入の承認を受ける義務を課せられることがある。

としています。この政令は、輸入貿易管理令となり、その4条(輸入の承認)は、

第四条 貨物を輸入しようとする者は、次の各号のいずれかに該当するときは、経済産業省令で定める手続に従い、経済産業大臣の承認を受けなければならない。
一 当該貨物の輸入について第九条第一項の規定による輸入割当てを受けることを要するとき。
二 当該貨物の品目について、貨物の原産地又は船積地域が前条第一項の規定により公表された場合において、その原産地を原産地とする貨物を輸入し、又はその船積地域から貨物を輸入しようとするとき。
三 前二号に掲げる場合のほか、当該貨物の輸入について必要な事項が前条第一項の規定により公表されているとき。

となっています。

でもって、経済産業省告示24号によって「輸入貿易管理令(昭和二十四年政令第四百十四号)第三条第一項の規定に基づき、昭和四十一年通商産業
省告示第百七十号(輸入割当てを受けるべき貨物の品目、輸入の承認を受けるべき貨物の原産地又は船積地域その他貨物の輸入について必要な事項の公表)の一部を次のように改正する。」となり、輸入公表の二の表の第1のウクライナ(クリミア自治共和国、セヴァストーポリ特別市、「ドネツク人民共和国」(自称)又は「ルハンスク人民共和国」(自称)を原産地とする場合に限る。)の項に追加された「ドネツク人民共和国」(自称)、「ルハンスク人民共和国」(自称)を原産地とする全ての貨物については、令和4年2月26日以降、二号承認を受けるべき貨物となりました。
これについては、通達がなされています

上の2月26日の(2)両「共和国」との輸(出)入禁止措置の法的背景ということになります。

3.2 輸出等に係る禁止措置

輸出の許可等についての規定は、外為法48条(輸出の許可等)になります。同条は、

第四十八条 国際的な平和及び安全の維持を妨げることとなると認められるものとして政令で定める特定の地域を仕向地とする特定の種類の貨物の輸出をしようとする者は、政令で定めるところにより、経済産業大臣の許可を受けなければならない。
2 経済産業大臣は、前項の規定の確実な実施を図るため必要があると認めるときは、同項の特定の種類の貨物を同項の特定の地域以外の地域を仕向地として輸出しようとする者に対し、政令で定めるところにより、許可を受ける義務を課することができる。
3 経済産業大臣は、前二項に定める場合のほか、特定の種類の若しくは特定の地域を仕向地とする貨物を輸出しようとする者又は特定の取引により貨物を輸出しようとする者に対し、国際収支の均衡の維持のため、外国貿易及び国民経済の健全な発展のため、我が国が締結した条約その他の国際約束を誠実に履行するため、国際平和のための国際的な努力に我が国として寄与するため、又は第十条第一項の閣議決定を実施するために必要な範囲内で、政令で定めるところにより、承認を受ける義務を課することができる。

となります。

輸出貿易管理令は、

(輸出の許可)
第一条 外国為替及び外国貿易法(昭和二十四年法律第二百二十八号。以下「法」という。)第四十八条第一項に規定する政令で定める特定の地域を仕向地とする特定の種類の貨物の輸出は、別表第一中欄に掲げる貨物の同表下欄に掲げる地域を仕向地とする輸出とする。
2 法第四十八条第一項の規定による許可を受けようとする者は、経済産業省令で定める手続に従い、当該許可の申請をしなければならない。

(輸出の承認)
第二条 次の各号のいずれかに該当する貨物の輸出をしようとする者は、経済産業省令で定める手続に従い、経済産業大臣の承認を受けなければならない。
一 別表第二中欄に掲げる貨物の同表下欄に掲げる地域を仕向地とする輸出
一の二 別表第二の二に掲げる貨物(別表第二の一、三六、三九から四一まで及び四三から四五までの項の中欄に掲げる貨物を除く。)の北朝鮮を仕向地とする輸出
一の三 別表第二の三(第二号フ及び第三号を除く。)に掲げる貨物(別表第二の二〇から二一の三まで、二五、三五から三五の四まで、四四及び四五の項の中欄に掲げる貨物を除く。)のベラルーシを仕向地とする輸出
一の四 別表第二の三に掲げる貨物(別表第二の一、二〇から二一の三まで、二五、三五から三七まで、四〇、四一及び四三から四五までの項の中欄に掲げる貨物を除く。)のロシアを仕向地とする輸出
一の五 ウクライナ(ドネツク州及びルハンスク州の区域のうち、経済産業大臣が告示で定める区域に限る。第四条第二項第二号ヘにおいて同じ。)を仕向地とする貨物(別表第二(三四の項を除く。)中欄に掲げる貨物を除く。)の輸出
一の六 ベラルーシを仕向地とする貨物(別表第二(三四の項を除く。)中欄及び別表第二の三(第二号フ及び第三号を除く。)に掲げる貨物を除く。)の輸出(経済産業大臣が告示で指定する者との直接又は間接の取引によるものに限る。)
一の七 ロシアを仕向地とする貨物(別表第二(三四の項を除く。)中欄及び別表第二の三に掲げる貨物を除く。)の輸出(経済産業大臣が告示で指定する者との直接又は間接の取引によるものに限る。)
二 外国にある者に外国での加工を委託する委託加工貿易契約(当該委託加工貿易契約に係る加工の全部又は一部が経済産業大臣が定める加工(以下「指定加工」という。)に該当するものに限る。)による貨物(当該委託加工貿易契約に係る加工で指定加工に該当するものに使用される加工原材料のうち、経済産業大臣が指定加工の区分に応じて定める加工原材料で当該指定加工に該当する加工に係るものに限る。)の輸出

となっています。

ビジネスローヤーズによりますと、特定資本取引(上の2.1参照)を許可の対象としていた(①ロシア連邦の特定団体については2022年3月1日付の制裁、②ベラルーシ共和国の特定団体については2022年3月8日付の制裁)ところ、3月11日付けで、輸出貿易管理令(昭和 24 年政令第 378 号)の一部を改正する政令が閣議決定されたことによって輸出禁止措置が 3月18日より実施されることになったわけです。

この改正政令は、政令第五十九号で「輸出貿易管理令の一部を改正する政令」となり、内閣は、

外国為替及び外国貿易法(昭和24年法律第228号)第48条第3項及び第69条の5の規定に基づき、この政令を制定する

ということになります。

具体的には、輸出貿易管理令(昭和24年政令第378号)の

  • 第2条第1項第1号の2の次に5つの号を追加
  • 第4条第2項第2号に追加

などの改正によって

(1)国際輸出管理レジームの対象品目※のロシア及びベラルーシ向け輸出の禁止に関する措置
※対象品目:工作機械、炭素繊維、高性能の半導体等
(2)ロシア及びベラルーシの特定団体※への輸出に係る禁止措置
※対象団体:ロシア国防省、ロシアの航空機メーカー等
(3)ロシア及びベラルーシの軍事能力等の強化に資すると考えられる汎用品※の両国向け輸出の禁止措置
※対象品目:半導体、コンピュータ、通信機器等の一般的な汎用品
(4)ロシア向け石油精製用の装置等の輸出の禁止措置
(5)「ドネツク人民共和国」(自称) 及び「ルハンスク人民共和国」(自称)への輸出の禁止措置

がとられました。

また、3月15日には、上の政令等を実施するために、関連する省令及び告示1を官報に掲載するとともに、関連する通達が経済産業省 HP に掲載されています。

3.2.1 輸出貿易管理令別表第2の3の規定に基づき貨物を定める省令

リンクはここです。

二 次に掲げる貨物であつて、経済産業省令で定めるもの(前号に掲げる貨物を除く。)
イ 集積回路、アナログデジタル変換器、マイクロ波用機器及びミリ波用機器の部分品、弾性波を利用する信号処理装置及びその部分品、一次セル、二次セル、太陽電池セル、超電導電磁石、超電導材料を用いた装置並びに放電管(以下、略)

となっているので、この省令でもって、別表第二の三第二号に掲げる貨物であって、経済産業大臣が省令で定めるものは、次のいずれかに該当するものとするとして具体的に定められているということになります。

なお、経済産業省令16号は、輸出許可・承認申請書等の様式を定めています。

また、貨物の取引については、

経済産業大臣の承認の対象となる輸出につき「指定者との直接又は間接の取引によるもの」とされており(改正後の輸出貿易管理令2条1項1の6および1の7)、指定者が直接の輸出先でなくとも最終の受領者が指定者である場合等において適用になる可能性があることにつき注意が必要です。

とされています。上記ビジネスローヤーズ参照。

3.2.2 外国為替令第十八条第三項の経済産業大臣が指定する役務取引等の一部を改正する件

これは、外国為替令第18条第3項の経済産業大臣が指定する役務取引等の一部を次のように改正するという経済産業省告示44号になります。 

外国為替令第18条は、外為法25条を受けています。外為法25条は

(役務取引等)
第25条 国際的な平和及び安全の維持を妨げることとなると認められるものとして政令で定める特定の種類の貨物の設計、製造若しくは使用に係る技術(以下「特定技術」という。)を特定の外国(以下「特定国」という。)において提供することを目的とする取引を行おうとする居住者若しくは非居住者又は特定技術を特定国の非居住者に提供することを目的とする取引を行おうとする居住者は、政令で定めるところにより、当該取引について、経済産業大臣の許可を受けなければならない。
2 経済産業大臣は、前項の規定の確実な実施を図るため必要があると認めるときは、特定技術を特定国以外の外国において提供することを目的とする取引を行おうとする居住者若しくは非居住者又は特定技術を特定国以外の外国の非居住者に提供することを目的とする取引を行おうとする居住者に対し、政令で定めるところにより、当該取引について、許可を受ける義務を課することができる。
3 経済産業大臣は、次の各号に掲げる場合には、当該各号に定める行為をしようとする者に対し、政令で定めるところにより、当該行為について、許可を受ける義務を課することができる。
一 第一項の規定の確実な実施を図るため必要があると認めるとき 同項の取引に関する次に掲げる行為

イ 特定国を仕向地とする特定技術を内容とする情報が記載され、又は記録された文書、図画又は記録媒体(以下「特定記録媒体等」という。)の輸出
ロ 特定国において受信されることを目的として行う電気通信(電気通信事業法(昭和五十九年法律第八十六号)第二条第一号に規定する電気通信をいう。以下同じ。)による特定技術を内容とする情報の送信(本邦内にある電気通信設備(同条第二号に規定する電気通信設備をいう。)からの送信に限る。以下同じ。)

二 前項の規定の確実な実施を図るため必要があると認めるとき 同項の取引に関する次に掲げる行為

イ 特定国以外の外国を仕向地とする特定記録媒体等の輸出
ロ 特定国以外の外国において受信されることを目的として行う電気通信による特定技術を内容とする情報の送信

4 居住者は、非居住者との間で、国際的な平和及び安全の維持を妨げることとなると認められるものとして政令で定める外国相互間の貨物の移動を伴う貨物の売買、貸借又は贈与に関する取引を行おうとするときは、政令で定めるところにより、当該取引について、経済産業大臣の許可を受けなければならない。

5 居住者は、非居住者との間で、役務取引(労務又は便益の提供を目的とする取引をいう。以下同じ。)であつて、鉱産物の加工その他これに類するものとして政令で定めるもの(第三十条第一項に規定する技術導入契約の締結等に該当するものを除く。)を行おうとするときは、政令で定めるところにより、当該役務取引について、主務大臣の許可を受けなければならない。ただし、次項の規定により主務大臣の許可を受ける義務が課された役務取引に該当するものについては、この限りでない。

6 主務大臣は、居住者が非居住者との間で行う役務取引(特定技術に係るもの及び第三十条第一項に規定する技術導入契約の締結等に該当するものを除く。)又は外国相互間の貨物の移動を伴う貨物の売買、貸借若しくは贈与に関する取引(第四項に規定するものを除く。)(以下「役務取引等」という。)が何らの制限なしに行われた場合には、我が国が締結した条約その他の国際約束を誠実に履行することを妨げ、若しくは国際平和のための国際的な努力に我が国として寄与することを妨げることとなる事態を生じ、この法律の目的を達成することが困難になると認めるとき、又は第十条第一項の閣議決定が行われたときは、政令で定めるところにより、当該役務取引等を行おうとする居住者に対し、当該役務取引等を行うことについて、許可を受ける義務を課することができる。

となっています。

外国為替令第18条は、

第十八条 法第二十五条第五項に規定する政令で定める役務取引は、鉱産物の加工若しくは貯蔵、放射線を照射した核燃料物質の分離若しくは再生又は放射性廃棄物の処理に係る役務取引(当該役務取引の当事者、内容その他からみて法の目的を達成するため特に支障がないものとして財務省令又は経済産業省令で定めるものを除く。)とする。

2 居住者が法第二十五条第五項の規定による財務大臣又は経済産業大臣の許可を受けようとするときは、当該居住者は、財務省令又は経済産業省令で定める手続により、当該許可の申請をしなければならない。

3 財務大臣又は経済産業大臣は、法第二十五条第六項の規定に基づき居住者が役務取引等(同項に規定する役務取引等をいう。以下この条及び第十八条の三において同じ。)を行うことについて許可を受ける義務を課する場合には、あらかじめ、告示により、その許可を受けなければならない役務取引等を指定してするものとする(以下、略)

となっています。

ここで、外国為替令18条3項に関するので、上の法25条6項の「役務取引(略)又は外国相互間の貨物の移動を伴う貨物の売買、貸借若しくは贈与に関する取引(略)(以下「役務取引等」という。)が何らの制限なしに行われた場合には、我が国が締結した条約その他の国際約束を誠実に履行することを妨げ、若しくは国際平和のための国際的な努力に我が国として寄与することを妨げることとなる事態を生じ、この法律の目的を達成することが困難になると認めると」になります。

また、この役務取引については、外国為替及び外国貿易法第25条第6項の規定に基づくロシア又はベラルーシに係る役務取引許可について」という通達がでています(3月15日 施行3月18日)。

4  暗号資産の取引について

4.1  制裁対象者との取引停止の要請

金融庁と財務省は、国内の暗号資産の交換業者に対し、ロシアの制裁対象者との取引を停止するよう要請したのは、上でみたとおりです。

外為法第16 条第1項に規定する支払等には、暗号資産の移転を含むことを明確化

とされています。まず、外為法16条ですが

(支払等)
第十六条 主務大臣は、我が国が締結した条約その他の国際約束を誠実に履行するため必要があると認めるとき、国際平和のための国際的な努力に我が国として寄与するため特に必要があると認めるとき、又は第十条第一項の閣議決定が行われたときは、支払等が、これらと同一の見地から許可又は承認を受ける義務を課した取引又は行為に係る支払等である場合を除き、政令で定めるところにより、本邦から外国へ向けた支払をしようとする居住者若しくは非居住者又は非居住者との間で支払等をしようとする居住者に対し、当該支払又は支払等について、許可を受ける義務を課することができる。

となっています。

「外国為替法令の解釈及び運用について」の一部については、こちらです。

これの16-1等は、

16-1等
「支払」及び「支払の受領」とは、次に掲げる行為をいう。
1 当事者間において支払手段を移転する行為(支払手段と同視し得る、暗号資産(資金決済に関する法律(平成21年法律第59号)第2条第5項に規定する暗号資産をいう。以下同じ。)、貴金属その他の財産的価値を移転する行為を含む。)
2 1に掲げるものを除くほか、当事者間において証券、動産、不動産に係る権利その他の支払手段以外の財産的価値の移転により債権債務を消滅させる行為(現物決済又は代物弁済により債権債務を消滅させる行為及び贈与を含む。)
3 相殺及び貸借記並びに当事者間の合意に基づき財産的価値の移転を伴わず債権債務を消滅させる行為

と定めています。従って、外為法に基づく資産凍結等の措置の対象者として外務省告示により指定された者(以下、資産凍結等の措置の対象者という。)に対する暗号資産の移転に係る支払も支払規制の対象とされているとされ、

顧客が指定する受取人のアドレスが資産凍結等の措置の対象者のアドレスであると判断した場合には、顧客に外為法の支払許可義務が課されていることを踏まえ、暗号資産の移転を行わないこと。

4.2 外為法改正案について

「関税暫定措置法の一部を改正する法律案」及び 「外国為替及び外国貿易法の一部を改正する法律案」についての財務省のホームページは、こちらです具体的な法案等は、こちら。

この外為法改正案についての解説については、中崎先生の資料を参照ください。

従来、適用がなされていないものとされていた法17条(適法性確認義務)、18条(国際的な支払等を取扱銀行等の本人各人義務)、21条(制裁対象者との間の資本取引などの許可制)、22条の2(国際的な資本取引を取り扱う銀行等の本人確認義務)、55条の3(国際的な資本虜引きを行う者の報告義務)が改正の対象となり、暗号資産交換業者も対象になったとのことです。

成立日:令和4年4月20日
公布日:令和4年4月20日
施行日:令和4年5月10日(特段の定めがあるものを除く)

 

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