サイバー攻撃にも集団的自衛権 政府「武力行使しうる」という記事がでています。(朝日は、こちら。ハフィントンポストは、こちら。)
この記事は、きちんと前提を読まないと引っかかります。
「米国がサイバー攻撃を受けた場合、我が国の存立が脅かされる明白な危険があるなどの「武力行使の新3要件」を満たせば」ということなので、これは、米国に対して、「武力の行使」があったこと(国連憲章51条)が前提の場合になります。でもって、サイバー攻撃が、そのレベルにたっした上で、国内法的にも要件を満たしたならば、武力行使(敵対行為-hostilities)が可能ということでしょう。これは、武力攻撃があったならば、国連の集団安全保障体制が発動されるまでは、固有の権利としての自衛権を発動するねということで国際法的には当然の話に思えます。
サイバー攻撃のみ(たとえば、エストニア2007)の場合に、武力攻撃レベル(NATO5条)を越すかというのは、越さないね、ということになっているので、新聞レベルでの「サイバー攻撃」では、武力攻撃にはなりません。しかも、国際法の通説では、武力(Force)の行使(国連憲章2(4))のレベルの中でも特に熾烈なレベルを武力攻撃(同51)というので、このレベルを超えることは容易ではないと思います。
タリンマニュアル31条は、人の生命・傷害・物の損壊を及ぼす場合のみを「サイバー攻撃」というべきだと提唱しています(ユス・イン・ベロの場合)。
悪意をもって考えると、一般人の広範な「サイバー攻撃」というイメージを逆手にとって、集団的自衛権に対しての「やりすぎ」イメージをあおる意図があるのではないかと勘繰ってしまう書き方ということはいえるかと思います。
国際社会は、これらの要件をきちんと議論して、敵対行為の発生を予防しようと試みています。それらを無視して、わが国では、机上の空論レベルのデマの拡散がなされているように思えます。