続・宇宙-サイバーセキュリティ法の最後のフロンティア その8

 でもって、以下のようなTTXを作ってみました。TTXというのは、机上演習のことですが、単なる説明問題というほうが正確ですね。

A国においては、国内に宗教の教義の独自解釈に基づくテロリストおよびテロ行為が跋扈していた。また、政治的には、A国は、隣国Bと国境であるC地域をめぐって、常に領有権をめぐる紛争が存在している(いままでに、軍事紛争も経験している)。おりしも、このテロリストの集団I(構成員は、A国国民であるが、民族的には、隣国であるB国と同一)が、A国の打ち上げたGPS衛星に対して、その地上システムからのアップリンクを操作することによって、GPS衛星の信号を変更した。

(a) その結果、A国内の通信を変更することに成功した。そのために、A国内の経済は、壊滅的な打撃を受けた。

(b)従来から、B国と敵対関係にあった超大国Uの通信を攪乱することに成功して、超大国Uの株式市場を大混乱に陥れることになった。

 
(1)テロリストの集団Iを隣国Bが支援していた場合はどうか
(2)テロリスト集団Iに対して、武力による制圧行為をとることはできるのか
(3)このようなGPSの乗っ取りを防止するためにA国は、そもそも、どのような法的整備をしなければならないといえるのか。

このような質問に対して、どのような回答ができるでしょうか。

まず、宇宙条約7条および宇宙損害責任条約が定める損害賠償責任の守備範囲はどうか? という問題があります。
A国が打ち上げているので、宇宙損害責任条約「打上げ国は、自国の宇宙物体が、地表において引き起こした損害又は飛行中の航空機に与えた損害の賠償につき無過失責任を負う。」という規定が適用されるのかという問題です。
打ち上げの有体物から生じる物としての安全面に関する国際的な責任を規定したものということになるので、この規定によってA国がU国の市場に生じた責任をとらなければならないということはありません。

(1)隣国Bがテロリストの集団Iを支援していた場合、どうか、という問題があります。前のエントリでふれた効果的なコントロールがあった場合については、燐国Bの国家責任を生じさせる行為になります。

A国の経済が、壊滅的な打撃を受ければ、場合によっては、武力攻撃のレベルをこえるかもしれません。その場合には、国連憲章のパラダイムに則って、安全保障理事会によって対応が図られますし、それまで武力による防衛も正当化されるということになります。
武力攻撃のレベルを超えなければ、違法な介入行為(interference)ということになるでしょう。A国は、B国の国際的違法行為として、種々の対抗措置をとることができます。

(2)テロリストに対する制圧行為については、安保理の決議によって、加盟国が、軍事的措置を行うことも国際法的には、許容されることになります(平和に対する脅威としての認定)。この類型だと、リビア、スーダン、アフガニスタンの実行が参考になります。
また、安保理の決議が得られない場合においても、国の同意がある場合には、軍事的措置もしくはサイバー作戦等の強制的な手法による対応も可能になります。イラク政府は2014年9月20日の安保理議長宛の所管において、米国に対して、明示的同意に基づいてISILの拠点および軍事要塞を攻撃する国際的努力を主導することを要請しており、米国は、かかる明示的な同意に基づいて軍事的措置を行っており、これと同様の法理に基づくことになります。

(3)国内法の整備としては、「ロケット安全基準」「施設安全基準」をはじめとした衛星システムの安全基準が、サイバーセキュリティからみても堅固であることが必要とされます。その意味で、宇宙がサイバーセキュリティの最後のフロンティアであるといわれることなります。

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