アルテミスアコードの具体的な原則を見たわけですが、では、具体的に、国際宇宙(公)法との関係はどうなのでしょうか。
この点についての記事としては、Johnson准教授の「SpaceWatchGL Feature: The Space Law Context Of The Artemis Accords 」(Part 1)(2) や前のブログで紹介したBorgen教授の記事、ライデン大学のブログ(Artemis Accords: Star Trek or Star Wars?)などがあります。
Johnson准教授の分析を紹介してみましょう。同准教授によれば、存在する宇宙法を確認するものと新たな月についての規範を定立しよういうものとに分かれることになります。
存在している宇宙法の確認
NASAの役人によると、アルテミスアコードは宇宙条約への叙情詩(ode)だそうで、同条約における基本的な原則の再確認のものがあります。具体的には、平和目的、宇宙資源へのアクセスおよび利用、緊急支援、宇宙物体の登録、透明性、科学データの公表がそれらです。
平和目的は、宇宙条約4条に記載されており、
月その他の天体は、もっぱら平和目的のために、条約のすべての当事国によって利用されるものとする。天体上においては、軍事基地、軍事施設及び防備施設の設置、あらゆる型の兵器の実験並びに軍事演習の実施は、禁止する。科学的研究その他の平和的目的のために軍の要員を使用することは、禁止しない。月その他の天体の平和的探査のために必要なすべての装備又は施設を使用することも、また、禁止しない。
とされています。なので、宇宙軍における月基地構築は、根拠がないことになります。
宇宙資源へのアクセスおよび利用に関しては、宇宙条約2条によっては、禁止されていないと解するのが米国の立場になります。そもそも、宇宙条約は、「月その他の天体を含む宇宙空間の探査及び利用における国家活動を律する原則に関する条約」ですし、また,探索、アクセス、利用、有効化は、領域の専有(appropriation)のレベルには、至っていないと解されているのです。
もっとも、議論を呼ぶところでもあり、国連のCOPUOS委員会でも議論されるだろうということだそうです。
緊急支援は、宇宙条約の5条に記されており、1968年の宇宙救助返還協定(宇宙飛行士の救助および送還並びに宇宙空間に打ち上げられた物体の返還に関する協定)においても明確にされています。
宇宙物体の登録は、1975年の登録条約で義務づけられており、2020年において69国が批准しています。
透明性は、宇宙条約の11条において
月その他の天体を含む宇宙空間における活動を行う条約の当事国は、宇宙空間の平和的な探査及び利用における国際協力を促進するために、その活動の性質、実施状況、場所及び結果について、国際連合事務総長並びに公衆及び国際科学界に対し、実行可能な最大限度まで情報を提供することに合意する
とされているのにも対応しています。また、科学データの公表も同様です。
次は、先進的な性格については、次のエントリでみていきましょう。