米国宇宙政策2020年-原則とゴール

12月9日に米国の宇宙政策が公表されています。ちょっと見ていきたいと思います。宇宙政策のページは、こちらです

宇宙政策自体は、序、原則、ゴール、クロスセクターガイドライン、セクターガイドラインからできています。

序においては、米国は、将来の活動のために宇宙を保全し、維持するために、また、すべての国とすべての人々が宇宙から恩恵を受け、地球と宇宙での私たちの生活を向上させるために、永続的な国際的なパートナーシップを主導し、強化していくことが述べられています。

宇宙空間を探索し、利用する権利を認めた上で、米国は、国家と同盟国の安全保障のために宇宙空間を利用し続けます。いかなる敵対者も、私たち全員が宇宙から得られる利益を危険にさらす脅威にさらされた場合、米国は、国力のあらゆる要素を用いて、宇宙での、宇宙からの、そして宇宙を通じた敵対的な活動を抑止し、必要に応じて、それに打ち勝つために努力する。

という意図が明確にされています。

原則

米国の宇宙活動(space operation)が遵守する原則として、

宇宙空間で宇宙活動の安定性、安全性、長期的な持続可能性の確保するために責任を持って行動することは、すべての国の共通の利益です。そして、それは、開放性、透明性、予測可能性を持って活動します。

堅牢で、革新的で、競争力のある商業宇宙部門は宇宙分野での継続的な進歩と米国のリーダーシップの持続的な維持のための源であるここと。

宇宙開発が復活するこの時代に、米国は民主主義的な価値観、人権を尊重し 経済的自由を共有する国々と一緒に、そのリーダーシップを拡大します。

があげられていて、さらに国際法の尊重、準拠法に基づく開発・利用の権利、宇宙システムに対して干渉の禁止があげられています。これらは、法的にも興味深いので、訳出してみます。

国際法で定められているように、月をはじめとする天体を含む宇宙空間 は、主権の主張、利用または占領、またはその他の手段による国家的利用( national appropriation )の対象とはならない。米国は、法律を遵守し、抽出と宇宙資源の利用を追求するが、これは、持続可能な探査、科学的発見、商業的活動に不可欠なものとして認識しています。

すべての国は、適用される法に従って、平和的な目的のために、すべての人類の利益のために宇宙を探査し、利用する権利を有します。その原則と一致し、 米国は固有の自衛権の行使を含む国家安全保障活動のために宇宙を利用し続ける。自由なアクセスと宇宙で活動する自由は重要な国益である。

米国は、すべての国の宇宙システムは、宇宙空間を通過(pass through)し、運用を行うのに際して干渉されない権利を持っていると考えています。宇宙システムに対しての意図的な干渉は、国家の権利に対して侵害と考えられます。米国は、これらの権利の防衛と整合的に、米国およびその同盟国の国益に敵対する宇宙領域の脅威を抑止し、対抗し、打ち負かすことを追求します。国の権利に直接影響を及ぼす米国またはその同盟国の宇宙システムに対する故意の干渉または攻撃に対しては、私たちが選んだ時、場所、方法、ドメインにおいて、意図的に対応する。

とされています。準拠法に基づく開発・利用の権利においては、アルテミス合意が、法的に、民間の利用を前提としていること、また、宇宙システムに対しての干渉の禁止が、サイバー領域における対抗措置の原則などとシンクロしていることは興味深いかと思います。

ゴール

米国の宇宙政策のゴールとしては、以下の8つのものがあげられています。

  1. 民間産業の促進とインセンティブ付与
  2. 責任ある宇宙利用と平和利用のための国家の権利の促進と維持
  3. 国際協調の引率、促進および拡充
  4. 安全、確実、セキュアな、維持可能な環境の創造
  5. 国家の重要な機能の保証の増大
  6. 深宇宙への経済活動の展開
  7. すべての人類の生活の質の向上
  8. 米国のリーダーウップの維持および拡大

ということで、さらにクロスセクター、個々のセクターのガイドラインと続きます。

ちなみに、これらの背景については、「新政権で米宇宙政策はどうなる? NASA「アルテミス計画」 次期長官の動向にも注目集まる」という記事も参考になるかと思います。

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