日本銀行金融研究所より「中央銀行テジタル通貨に関する法律問題研究会」報告書が公開されています。
岡田先生・山﨑先生とともに、「仮想通貨」を2015年に出版させてもらいましたが、そこでは、仮想通貨の法的な性質について、学説的な感じで、明確に論じていなかったので、わかりにくかったかな、という反省があります。
その意味で、この報告書は、論者の差異の部分について丁寧に論じている点で、仮想通貨の法的性質について、決定的なものとなるかな、と評価しています。
まずは、5頁「金銭的価値が 組み込まれた媒体を「通貨媒体」とし、通貨媒体を移転させる方法を「通貨手段」 として、両者の組合せによって、各種決済手段の私法上の位置付けを論じる見解 がある。このような整理は、CBDC の法的性質を議論する際にも用いることがで きると考えられる」という記載がされています。
なお、仮想通貨(2015)においては、11章 1.2で「「決済手段の電子化」と「決済方法の電子化」」という用語で、この点を分析しています。
報告書6頁「トークン型の CBDC にもあてはめれば、データに対する排他的支配を基準に CBDC の帰属を決定することが考えられる」となっています。
仮想通貨(2015)においては、ブロックチェーン利用のような仮想通貨においては、ブロックチェーンの記載とそれに対する信頼が、価値を表象するといえるでしょう(第5章 2.1で「技術的に言うと、貨幣的価値を有しているのは、ブロックチェインによって非可逆性が保証された状態の「取引記録」です。としています)。
報告書17頁からは、法貨性や受容性についての議論がなされています。また、私法上の論点として、移転時期、不正取得、データの偽造・複製の問題、データの消滅、強制執行について、それぞれが議論されています。
また、報告書25頁からは、中央銀行型通貨(CDBC)の日本銀行法上の論点、取引条件をめぐる法的論点が記載されています。
このなかで、興味深いので、この型が、情報を取得するのが前提となっていて、「日本銀行が CBDC の発行を通じて取得しうる情報にはど のようなものがあり、仮にそれらを活用しようとする場合には、どのような法的 課題があるか等」が論点となっているということかと思います。
仲介機関が、KYCのいわばハブとなる構想かと思います(36頁)。
また、CDBCの取引に関するデータの利活用の点についてまで分析しているは、非常に興味深いです。essential facility理論から、きちんと分析しているのは評価すべきだと思います。
ということで、「仮想通貨」(2015)を新版にするとすれば、世界的なインシデントのフォローと制定法の分析が必要になるなあ、と思っていたのですが、それにCDBCの分析までいれなければならない、ということになりそうです。
ほとんど不可能という感じなのかもしれませんが、何か機会があれば、チャレンジしてみたいところです。