暗号資産課税 見直しとDAOの法律問題のスライド-期末の時価評価の根拠条文等

読売新聞に「暗号資産課税 見直し-新興企業 海外流失防ぐ」という記事がでています(2022年8月24日)。リンクは、こちら。

このテーマは、「8月23日渋谷で、DAO法(日本版DAO法を考える)第2回「DAOの税制について」でお話しします。」で案内しましたDAO法勉強会で、柚木庸輔先生が「DAOに関する税制の考察」という講演でちょうど解説された論点です。

一番の問題点は、法人税の課税の問題なになります。

法人税の課税に関していえば、

  • 暗号資産の購入時→法人税はかからない
  • 暗号資産の保有時→期末において時価評価が必要となる。
  • 暗号資産の売却時→売却益が雑所得に区分される

となります。

ここで、一番問題となるのが、

暗号資産の保有時→期末において時価評価が必要となる。

となるもので、これは、法人税法61条に関するものです。(以下、税金関係の記述になりますので、この部分は、最終確認は、税の専門家の方に聞いてください。)

同61条2項は

 内国法人が事業年度終了の時において有する短期売買商品等(暗号資産にあつては、活発な市場が存在する暗号資産として政令で定めるものに限る。以下第四項までにおいて同じ。)については、時価法(事業年度終了の時において有する短期売買商品等をその種類又は銘柄(以下この項において「種類等」という。)の異なるごとに区別し、その種類等の同じものについて、その時における価額として政令で定めるところにより計算した金額をもつて当該短期売買商品等のその時における評価額とする方法をいう。)により評価した金額(次項において「時価評価金額」という。)をもつて、その時における評価額とする。

としています。これは、「期末において保有する仮想通貨を時価評価するのか、原価で評価するのか」という論点に関して平成31年4月の改正で明らかになったもののようです。記事としては、「仮想通貨に関する法人税法改正を解説」があります。

3 内国法人が事業年度終了の時において短期売買商品等を有する場合(暗号資産にあつては、自己の計算において有する場合に限る。)には、当該短期売買商品等に係る評価益(当該短期売買商品等の時価評価金額が当該短期売買商品等のその時における帳簿価額(以下この項において「期末帳簿価額」という。)を超える場合におけるその超える部分の金額をいう。次項において同じ。)又は評価損(当該短期売買商品等の期末帳簿価額が当該短期売買商品等の時価評価金額を超える場合におけるその超える部分の金額をいう。次項において同じ。)は、第二十五条第一項(資産の評価益の益金不算入等)又は第三十三条第一項(資産の評価損の損金不算入等)の規定にかかわらず、当該事業年度の所得の金額の計算上、益金の額又は損金の額に算入する。

となっているので、活発な市場がある場合には、時価法により評価されるので、評価益又は評価損をその事業年度の益金の額又は損金の額に算入すること、になります。

そうすると、DAOが成立したばっかりで、まだキャッシュも生んでいないのに、いきなり利益が時価評価で、請求されて、DAOのキャッシュがバーンアウトするのではないか、ということで、この部分の改正がいわれていたわけです。

この部分を詳しく論じているのは、「暗号資産に関する税務上の取扱いについて(情報) 」になります。

その質問22は、

22 暗号資産の期末時価評価
問 当社は、事業年度終了の時に暗号資産を保有していますが、期末に何らかの処理をする必要はありますか。

答 法人が事業年度終了の時において有する暗号資産(活発な市場が存在する暗号資産(注)(本問において「市場暗号資産」といいます。)に限ります。)については、時価法により評価した金額(本問において「時価評価金額」といいます。)をもってその時における評価額とする必要があります。

昭和四十年政令第九十七号 法人税法施行令をみます。
法令 118 の7(時価評価をする暗号資産の範囲)

法第61条第2項(短期売買商品等の譲渡損益及び時価評価損益)に規定する政令で定めるものは、内国法人が有する暗号資産のうち次に掲げる要件の全てに該当するものとする。

一 継続的に売買の価格(他の暗号資産との交換の比率(次条第一項第四号において「交換比率」という。)を含む。以下この条及び同項第三号において「売買価格等」という。)の公表がされ、かつ、その公表がされる売買価格等がその暗号資産の売買の価格又は交換の比率の決定に重要な影響を与えているものであること。
二 継続的に前号の売買価格等の公表がされるために十分な数量及び頻度で取引が行われていること。
三 次に掲げる要件のいずれかに該当すること。

イ 第一号の売買価格等の公表が当該内国法人以外の者によりされていること。
ロ 前号の取引が主として当該内国法人により自己の計算において行われた取引でないこと

118 の8(短期売買商品等の時価評価金額)

第118条の8 法第61条第2項(短期売買商品等の譲渡損益及び時価評価損益)に規定する政令で定めるところにより計算した金額は、内国法人が事業年度終了の時において有する短期売買商品等(暗号資産にあつては、市場暗号資産(同項に規定する政令で定めるものに該当する暗号資産をいう。以下この項において同じ。)に限る。以下この項及び次条において同じ。)をその種類又は銘柄(以下この項において「種類等」という。)の異なるごとに区別し、その種類等を同じくする短期売買商品等ごとに、公表最終価格等(市場暗号資産以外の短期売買商品等にあつては第1号又は第2号に掲げるいずれかの金額をいい、市場暗号資産にあつては第3号又は第4号に掲げるいずれかの金額をいう。)にその短期売買商品等の数量を乗じて計算した金額とする。

一 価格公表者(商品(商品先物取引法(昭和二十五年法律第二百三十九号)第二条第一項(定義)に規定する商品をいう。以下この号及び次号において同じ。)の売買の価格又は気配相場の価格を継続的に公表し、かつ、その公表する価格がその商品の売買の価格の決定に重要な影響を与えている場合におけるその公表をする者をいう。同号において同じ。)によつて公表された当該事業年度終了の日における短期売買商品等の最終の売買の価格(公表された同日における最終の売買の価格がない場合には公表された同日における最終の気配相場の価格とし、その最終の売買の価格及びその最終の気配相場の価格のいずれもない場合にはその短期売買商品等の同日における売買の価格に相当する金額として同日前の最終の売買の価格又は最終の気配相場の価格が公表された日で当該事業年度終了の日に最も近い日におけるその最終の売買の価格又はその最終の気配相場の価格を基礎とした合理的な方法により計算した金額とする。同号において「最終価格」という。)
二 価格公表者によつてその価格を公表される短期売買商品等又はこれに類似する商品の最終価格にこれらの品質、所在地その他の価格に影響を及ぼす条件の差異により生じた価格差につき必要な調整を加えて得た金額
三 価格等公表者(市場暗号資産の売買価格等を継続的に公表し、かつ、その公表する売買価格等がその市場暗号資産の売買の価格又は交換の比率の決定に重要な影響を与えている場合におけるその公表をする者(その公表をする売買価格等に係る前条第二号の取引が主として当該内国法人が自己の計算において行つた取引である場合には、当該内国法人を除く。)をいう。次号において同じ。)によつて公表された当該事業年度終了の日における当該市場暗号資産の最終の売買の価格(公表された同日における最終の売買の価格がない場合には、同日前の最終の売買の価格が公表された日で当該事業年度終了の日に最も近い日におけるその最終の売買の価格)
四 価格等公表者によつて公表された当該事業年度終了の日における市場暗号資産の最終の交換比率(公表された同日における最終の交換比率がない場合には、同日前の最終の交換比率が公表された日で当該事業年度終了の日に最も近い日におけるその最終の交換比率)に、その交換比率により交換される他の市場暗号資産に係る前号に掲げる価格を乗じて計算した金額
2 内国法人は、法第六十一条第二項に規定する政令で定めるところにより計算した金額を計算する場合において、前項第一号の合理的な方法によつたときは、その方法を採用した理由及びその方法による計算の基礎とした事項を記載した書類を保存しなければならない。

118 の9(短期売買商品等の評価益又は評価損の翌事業年度における処理等)

 内容は省略

となります。この部分の改正がなされることになったのは何よりだろうと思います。

ちなみに、DAO法勉強会での私の担当は、法的な問題を全体像を見るというものでした。そのスライドは、こちらです(Slideshare)。

勉強会では、いろいろな議論がでましたが、基本的には、トークン、トークンといっているけど、法的には、それが何なのか、きちんと考えてみましょう、ということなのだろうと思います。

共益権なのか自益権なのか、はたまたDAOの有している財産を表彰しているのか、法的には、そのような理屈なので、それをNFTの法律といってみても仕方がないのだろうと思います。

あと、山崎先生のスライドは、こちらです。https://www.slideshare.net/enquetemiroze/daopptx

 

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