日弁連(ex)コンピュータ委員会のシンポジウムの歴史

民事裁判のIT化に関して弁護士については、オンライン提出の義務化がなされる日が近づいています。ところで日弁連には、コンピュータ委員会というのがあって、1990年代から、2011年まで、活発な活動をしていました。

特に私は、2000年頃に参加したという記憶があるのですが、それ以来、特にシンポジウムでは、企画・コーディネイトを熱心に行ってきました。ある意味、ネットワーク社会化の進展を法律の面から切り取ることが成功していたのではないかという自負もあります。しかしながら、平成23(2011年)にコンピュータ委員会が、廃止されてしまってからは、日弁連においては、社会と法律のかかわりに関する弁護士の議論や意見集約の場が、存在していないという状況になっています。

そこで、どのような活動をしていたか、とくに、毎年、シンポジウムでどのようなテーマを取り扱っていたかをまとめておきます。なお、その後、第一東京弁護士会では、IT研究会ができて、シンポジウムを開催しています。その歴史は、私もブログにしています。

前に、2012年に当時の個人のウェブページで、コンピュータ委員会の歴史は、アップしていたかと思いますが、ウェブページの引っ越し等で、アクセスできなくなっているので、再度、アップします。

なお、日弁連でも若干の資料は残っています(リンク)

なお表現等は、若干、修正しています。

1 コンピュータ・デモンストレーション時代

コンピュータ研究委員会(当時)は、従来から、弁護士の業務に利用しうるコンピュータ応用ソフトの紹介等を中心にコンピュータ・デモンストレーションをおこなっていました。

しかしながら、Windows95発売以降、インターネットブームなどから、弁護士の間でのコンピュータ利用が一定の成果をあげてきたことから、単にコンピュータの利用法のデモというよりも、実際の利用に際して、留意すべき点をプレゼンテーション形式で参加者にデモンストレーションすべきではないかという議論になりました。このような意識から、従来のセッションに並行して、シンポジウム部門が併設されました。このような形で平成13年(2001年)、14年(2002年)のコンピュータ・デモンストレーションは、おこなわれました。

1.1 コンピュータ・デモンストレーション01

コンピュータ・デモンストレーション01は、平成13年12月4日に開催されました。

当時のコンピュータ・デモンストレーションは、浅尾委員「独断と偏見によるパソコン超初心者のための基礎講座」、藤原委員「歩く法律事務所」、 藤本・早稲田委員「表計算ソフト・データベースをこき使おう」、高橋委員 「弁護士業務のためのインターネット活用法」、小松委員「桐による管理(小松システム)」などの各アプリの紹介のブースと、シンポジウム部門が並行しておこなわれました。

シンポジウム部門は、午後1時30分から2時間、「IT時代に求められる弁護士のスタンダード-e-Japan 戦略下における弁護士の信頼と安全-」といタイトルで、 仲田 聰氏(日本アイ・ビー・エム株式会社)および本田委員から、主として情報セキュリティに関する観点からプレゼンテーションがおこなわれました。

1.2 コンピュータ・デモンストレーション02

コンピュータ・デモンストレーション02は、平成14124日におこなわれました。

この年から、委員会のデモの準備は、シンポジウム部門に注力がなされるようになっていきました。

この年のシンポジウムのテーマは、「ネットトラブルと弁護士の役割わかりやすいネット法集中講座」でした。

コンピュータデモのブースは、午前11時から午後5時までであり、シンポジウムは、午後3時から午後5時までなされました。

プレゼンテーションは、「ネット上の名誉毀損に対する法的対応-プロバイダー責任法の効用と限界-」(町村助教授)「社内メールの閲覧と従業員のプライバシー」(高橋委員)などの報告をもとにパネルディスカッションがおこなわれました。


参加者は、155名でした

これは、会場で記名した人数(内訳は、一弁23名、二弁41名、東弁41名、埼玉4名、名古屋3名、横浜5名、大阪3名、千葉2名、岡山1名、広島2名、山形1名、空欄4名、その他一般25名(合計155名))。なお、記名しなかった人数を含めると200名ほどにのぼるものと思われます。ECOMや総務省の大須賀氏(プロバイダ責任制限法の起案者・裁判官から出向中)も訪問したことから、きわめて注目を浴びたものであることがわかります。特に一般参加者25名がおり、企業から、きわめて参考になったという意見がありました。今後の方向性にとっての転機となるシンポジウム部門であったということができるでしょう。

 

2 シンポジウムの起点

従前は、コンピュータ研究委員会といっていたのですが、平成15年6月からコンピュータ委員会に名称を変更しています。また、同時期に委員会の資料を電子配布に変更し、コスト削減・委員会運営の合理化にいち早く着手しています。コンピュータ自体を研究するというよりも、より広く社会の変革と法へのインパクトを研究するというような方向性になったことをりゆうとしたような記憶があります。

2.1 コンピュータ委員会シンポジウムへの名称変更

コンピュータ・デモンストレーション02は、シンポジウム部門は大成功でした。しかし、それに比較して、アプリのデモのブースが、訪問者がきわめて減少したという点で問題を残しました。

その結果、むしろ、デモの部門は、弁護士にコンピュータの利用を啓発・促進させるという役割を一定達成したものとして終了し、シンポジウム部門のみに特化し、さらに、企業法務などにも直接貢献しうるものにレベルを上げておこなうこととしようということになりました。
特に、IT企業のコンサルタントと法律家の共同でなすパネルディスカッションが、きわめて好評だったことから、そのようなIT分野に生じている、もしくは、生じるであろう問題を法律家と技術者とのディスカッションのなかから解決の糸口を見いだすというテーマ設定をもとにシンポジウムのテーマを決めていくことになりました。

これを機に、タイトルも、コンピュータ委員会シンポジウムという名称となり、このスタイルが、その後のシンポジウムの基本的なものとなりました。

また、この年から、プロのアナウンサーの方をMCとしてお願いすることになりました。商用のシンポジウムなどに多数出席している私(高橋)の観点からすると、MCの効果は、絶大であり、シンポジウムにしまりを与えてくれます。弁護士さんの間で、なかなかこの効用が理解されずに、毎年、MCの費用をめぐって、弁護士会とその必要性で議論がなされていました。

現在は、コロナ禍を経て、リアルでのシンポジウムというのは、なかなか集まっていただけない感じになっていますが、また、リアルで、インパクトのあるシンポジウムに携わりたいという気持ちもあります。

2.2 コンピュータ委員会シンポジウム03

コンピュータ委員会シンポジウム03は、平成15(2003)年12月3日 に「ネットワーク時代における個人情報保護の最前線」をテーマにおこなわれました。

町村泰貴南山大学教授による「2003年主なネットワーク法判例」の解説、北岡弘章弁護士の「個人情報保護法の全容」、佐藤慶浩氏(日本ヒューレットパッカード)より「企業における個人情報保護の保護体制」の各基調報告と、その後、高橋郁夫副委員長の司会によるパネルディスカッションがなされました。

参加人数は209名でした。このシンポジウムは、日弁連のホームページに、その活動報告が残っていました(現在は削除)。また、このシンポジウムは、一般のメディア報道もなされています。(コンピュータ委員会シンポジウム講演「2003年のネットワーク判例回顧」・BB watchのページ)

一般のメディアが報道してくれたというのは、きわめておおきな意義があると思います。

3 クレオ満員と発展

3.1 伝説のクレオ満員-コンピュータ委員会シンポジウム’04

平成16(2004)年 は、正月早々、朝日新聞のOffice氏 事件(前年11月 のハッカーシンポジウムにおいて侵入技術を公表した)の報道によって年があけました。ちなみにこの事件は、ハッカーのダークサイドとライトサイドとのせめぎ合いという文脈から、私の「セキュリティウォーズ」というプレゼンテーションにおける代表的なケーススタディになっています。このできごとは、コンピュータセキュリティの問題が、世間の注目をあびる1年を象徴するかのようなものであったということができるでしょ う。

その後、2月に入ると、過去世界最大規模(当時)の情報漏 洩事件であるヤフーBB事件が発生しました。

コンピュータ委員会では、これらの情報漏えい事件の防止と個人情報保護法の完全施行のための各企業等の個人情報保護法対応が急務となって いたこともあって、これらの事件の分析と情報漏えい対応策を解説することを企画しました。

コンピュータ委員会シンポジウム’04「個 人情報漏洩事件とその対策」は、日弁連法務研究財団との共催で、平成16年12月1日午後1時より、日弁連クレオ(大講堂)で、開かれました。

シンポジウムは、毎年恒例となった町村泰貴・南山大学法学部教授に よる「2004年ネットワーク法判例回顧」を皮切りに「個人情報漏洩事件簿」と題して、梶谷篤委員による三洋信販事件、鈴木誠委員によるOffice氏事件、岡澤成彦委員によるヤフーBB事件の解説が行われました。 その後、佐藤慶浩氏(日本HP)による「情報漏洩の企業における管理策」のプレゼンテーションが行われ、各報告をもとに、藤原宏高委員長 も加えて、高橋郁夫副委員長の司会で、パネルディスカッションが行われました。

出席者は、456名(弁護士:158名、一般:275名、委員:23名)となり、記録的な参加者数を記録することができました。コンピュータ委員会もと担当の事務局 のM女史も驚いたという(?)、コンピュータ委員会の実力を世間に知らしめた伝説の一日でした。
講演者でもあった私ですが、とにかく、壇の上から、満員のクレオを眺める気分は、格別です。ミュージシャンが、ライブをやったら、やみつ きになるという気分がわかります。

また、この内容がNHKで報道されました。その上、インターネットウォッチでも報道されています(http://internet.watch.impress.co.jp/cda/event/2005/12/05/10099.html)

社会的な反響もきわめて大きなものがあり大成功でした。

2004年当時だと弁護士というと、個別の事案にあとから対応するものという認識が一般だったといえたのですが、企業法務が直面する問題などを検討するのことができること、弁護士が予防法務的な観点からもきわめて重要な役割を果たしうること、特に社会的に先進的な分野でも役割を果たすことを明らかにしたこ と、ひいては、日弁連自体が、そのような役割をも果たしうることを明らかにしたものといえると思います。

3.2 個人情報保護と法

平成16(2004)年シンポジウムが上述のように大成功におわり、コンピュータ委員会としては、さに、個人情報保護の体制構築のために官民の総合的な努力を総合的な観点からとらえることにしました。

平成17(2005)年12月2日 には、このような観点から、「セキュアな社会と個人情報保護-どこまで、誰が、どのように?-」というテーマのもとに平成17年度シンポジウムを開催しています。

恒例の判例解説に引き続いて、Winnyによる捜査情報流出事件(市川弁護士)、VISAカード事件(高橋委員)、YahooBB個人情報流出/損害賠償事件(溝上委員)、パネルディスカッション(田辺雄史(経済産業省)、郡山信(金融情報システムセンター)、稲垣委員)のプログラムのもと行われました。

入場者参加者は計193名(弁護士 76名、市民   92名(ほとんど企業) 、委員   25名)。非常に熱心な質疑応答が行われ、また、平成16年シンポジウムと同様にメディアからも注目され、http://internet.watch.impress.co.jp/cda/event/2005/12/05/10099.htmlなどの報道がなされました。

 これらのシンポジウムは、その時点における最先端の情報技術と法律の交錯する問題を総合的に検討するという路線を確立し、毎年、多数の来訪者を迎えることになっていった。

3.3 シンポジウム2007

なお、平成18年度より年末の時期を避けることとなり、シンポジウムは、日弁連コンピュータ委員会シンポジウム2007と銘打ち、平成19年1月18日に開催されることになりました。
このシンポジウムは、当時、日本版SOX法といわれ、その対応が急務といわれていた金融商品取引法における内部統制報告書等の制度について客観的に解説することを目的とされた。

タイトルは、「内部統制とIT 日本版SOX法の神話を超えて」であり、プログラムは、恒例の判例解説に引き続いて、内部統制の全体像(森川委員)、企業内部統制の実践とIT(佐藤慶浩氏(日本HP))、監査の実際とITのかかわり(斎藤英喜(みすず監査法人))、不正調査の最前線(影山正(クロール・インターナショナル))、パネルディスカッションであった。入場者 320名程度の参加者が出席し、きわめて高い注目を浴びたものということができる。

また、会場でのアンケートに答えてもらった(147通)でも、とてもよい(37通)、良い(90通)と評価として大絶賛されたものといっていいだろうと思います。

3.4 Winnyの諸問題(2008)

 Winnyネットワークへの情報流出などが世間を注目を浴びていたことを契機とてし、平成20年のコンピュータ委員会シンポジウムは、「P2Pネットワークと法律問題-winnyをめぐって」という題で平成20年1月22日におこわなれました。

プラグロムは、恒例の判例解説に引き続いて、ローカルネットワークでのWinny実演、Winny開発者の立場から(金子勇(プログラマー))、P2Pの分類-技術的要因と人的要因、(高木浩光(産業総合研究所))、P2Pの将来性(篠田陽一(北陸先端技術大学))、P2Pの法的問題(壇委員)でした。

入場者は180名ほどであり、P2P技術自体が、いわば、中立的な性質をもつものであることなどを中心に熱心な議論がなされました。

4 先鋭的な問題提起と発展

 シンポジウムのテーマは、情報技術に関連する先端の問題を総合的に検討しうるものであることを前提に毎年、選択がなされてきました。ここ数年の成功をもとに、さらに、むしろ、事件などとして報道等されていない場合でも、現場におきている問題を法律家の観点から整理し、今後の日本社会に対する問題提起をするというテーマを選択することも、コンピュータ委員会の果たすべき役割という観点から望ましいのではないかという議論がなされました。

4.1 ISPの法律問題

 このような問題意識から選択されたテーマが、シンポジウム2009のテーマである「ISPの法律問題」です。

いわば、このテーマが選択された時点においては、インターネット・サービス・プロバイダーが、インターネットにおいて積極的な役割を果たすべきであるという議論はほとんどでていなかったということができます。そのような議論の必要性をいわば先取りする形で、社会にたいして問題提起をなしのが、このシンポジウムで、平成21(2009)年1月23日に開催されました。

プログラムは、恒例の判例解説に引き続いて、「中間伝達者の法律問題の枠組み」(高橋委員)、「違法有害情報とフィルタリング等の問題」(奥村委員)、「世界における違法有害情報対策」(楠正憲(マイクロソフト))、「ISPにおけるセキュリティ活動」(小山覚(NTTPCコミュニケーションズ))、「名誉毀損等の発言行為と発信者情報開示制度」(壇委員)、「ISPをめぐる法律問題についての総務省の取組」(室橋秀紀(総務省))でした。

 

インターネットの現状からいう限り、ISPなどの中間者が、積極的な役割を果たすべき時期がきているのではないかという問題提起であり、きわめて先鋭的な問題意識を社会に問いかけることに成功したものということができます。参加者は、336名におよびました。当時としては、テーマが先端を行っていたということができるでしょう。そのような問題に対して、300名を越える人が参加したというのは、大きな意義をもっているということができると思います。

アンケート結果(回答数115)においても、大変よかったとするもの(40)、よかったとするもの(57)となり、参加者からの評価もきわめてたかいものでした。また、とくに、アンケートのなかには、「弁護士側だけの偏った議論にならず興味深かった。」という評価もあり、シンポジウムの総合的な考察という路線に対しての高い評価も見受けられたということも指摘できます。

4.2 情報漏えい時の対応

コンピュータ委員会シンポジウムは、できるかぎり、現場の知識をもとに、実際の問題を多角的に検討するという視点を保ってきました。そのような一次情報を重視する姿勢が、きわめて高い評価を継続して受けてきた理由の一つであったと思います。そのようなアプローチを極めたものが、シンポジウム2010です。

シンポジウム2010は「情報漏えい時の対応」と銘打ち、実際のあるIT企業における情報漏えい・放流事件での対応や行為者の特定を中心に、総合的な観点から分析したものです。そのプログラムは、恒例の判例回顧に加えて、「情報漏えい時の対応本部の実務と苦労」(徳田敏文(日本アイ・ビー・エム株式会社))、「ある情報流出事件における法的対応の実際」(名取勝也(日本アイ・ビー・エム株式会社 弁護士))、「情報漏えい-現場での対処と電子機器の取り扱い」(佐藤剛己(クロール東京支社長・公認不正検査士(CFE))、「情報漏えい時の証拠取得の法律上の諸問題」(南郷委員)、「クライシス・コミュニケーションの実務と対応」(石川慶子(広報コンサルタント/シニアリスクコンサルタント))というものであり、平成22(2010)年1月29日に開催されました。

東京330名、大阪・長崎計10名の合計340名の参加があり、アンケートの結果(回答数128)では、講演の内容について「とてもよかった」(59)、「よかった」(58)と圧倒的な高評価を得ました。「情報漏洩を起こした当事者の講演という極めて貴重な話を聴けたのがとても良かった」というのが代表的なフィードバックであり、大成功であったということができます。


5 最後のシンポジウムと委員会の廃止

5.1 「クラウドのリスク・マネジメント-コンプライアンスの視点から-」

コンピュータ委員会の年次シンポジウムは、このように定例化し、弁護士・企業法務担当者等にも非常に好評をもって迎えられてきました。

しかし、(連合会からの説明によると)平成22年度予算において予算不足の問題が生じ、開催延期を余儀なくされるのではないかという懸念が生まれました。

種々の対応策を検討した結果、参加者から資料代として2,000円を徴収することとして、平成23年2月23日の開催にこぎつけました。

テーマは「クラウドのリスク・マネジメント-コンプライアンスの視点から-」というもので、ビジネス上の大きなトレンドのひとつとなったクラウド・コンピューティングを取り上げ、総合的な考察を試みたものです。

プログラムは、「クラウド・サービスの概念と導入」(加藤雅彦(日本クラウド・セキュリティ・アライアンス))、「クラウド・コンピューティング利用に伴う種々のリスク」(吉井委員)、「クラウド・サービス利用におけるリスク評価と対応」(岸泰弘(あらた監査法人))、「クラウド・サービスのセキュリティとISMS」(山田安秀(経済産業省商務情報政策局情報セキュリティ政策室長))というものでした。参加者は175名にのぼり、コンピュータ委員会の存在意義を社会に示すことができたと評価されます。

5.2 コンピュータ委員会の廃止

コンピュータ委員会は、2000年代においては、情報通信技術の発展とそれに伴う社会の変化に法律の規定が追いついておらず、さまざまな問題が惹起されていると認識してきました。こうした諸問題を切り取り、法律・技術・マネジメントの観点から総合的に検討し、社会に対して解決策を提言するというのが、ここ数年のシンポジウムのチャレンジであったということができます。そして、圧倒的な参加者数、きわめて高いアンケート評価、マスメディアでの報道によって、このチャレンジが大きな成果を上げていたことは明らかです。

日弁連はこれまで、大事件が発生した際の人権救済などにその大きな意義を発揮してきました。しかしながら、現代社会において法律家の役割は、そのような事後的な救済にとどまるものではありません。社会の進展に従来の法的規制が追いついていないとき、その問題を分析し、明確なルールを提示して社会の発展を円滑に支援すること、あるいは法的問題が生じないよう予防的な活動を行うことも、法律実務家にとってきわめて重要な仕事です。コンピュータ委員会のシンポジウム活動は、そのような比較的新たな分野への挑戦の象徴であったといえます。

しかしながら、予算不足ゆえという理由をもって、コンピュータ委員会は、2011年に廃止されました。果たして、その判断が妥当だったのでしょうか。むしろ、2010年代から、社会のネットワーク化の引き起こす問題は、きわめて大きくなっていき、法や社会との齟齬も大きくなってきたように思います。コンピュータ委員会の廃止という決定は、当時の日弁連の執行部が如何に時代を見通す能力がないか、を端的にしめすエピソードにすぎないように思われます。

 

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