米国のシンクタンクであるアトランティクカウンシルの「宇宙におけるセキュリティの未来-米国の戦略の30年」(The Future of Securityin Space: A Thirty-YearUS Strategy)が公表されています。
部門としては、スコークロフト戦略・安全保障センターになります。
スコウクロフト戦略・安全保障センターは、米国と世界が直面している最も重要な安全保障上の課題に対処するため、超党派で持続可能な戦略を策定することを目的としています。同センターは、ブレント・スコウクロフト将軍が残した功績を称え、安全保障のために超党派で取り組むという彼の精神を体現しています。
このセンターの先端技術等の研究をする部分が、前進防衛(Forward Defense)と呼んでいます。その部分からの報告書ということになります。
報告書は、サマリー、戦略的文脈、宇宙の合衆国安全保障戦略における重要な目標、戦略の主たる要素、実装のためのガイドライン、結論、付録からなります。
まずは、サマリーをみていくことにします。
宇宙の未来を決める4つの発展
米国とその同盟国およびパートナーにとって、4つの主要な発展は、機会と必要性の両方を提供する。米国とその同盟国およびパートナーは、宇宙活動の将来を定義し、長期的な宇宙戦略を採用する必要があります。
具体的な発展としては、
1 人類にとっての限りない可能性
これは、人類の活動が、宇宙に依存することが増加していくこと、この分野が、資源の豊富さがあることから、人類のレジリエンスを増大させることが約束されていること、である。
2 宇宙は「探査」から「安全保障」「商取引」へと大きく転換する時期
宇宙は、科学的な探検と発見という段階をもはや脱しており、安全保障と商取引の段階に移行している。この分野は、地球と月の間のシスルナー領域に及ぶであろうとされている。宇宙での活動者の爆発という事情もあげられる。また、活動を行わせるものとして商業取引があることも指摘される。
3 宇宙の安全保障は、危機に瀕しており、合衆国は、早急に活動しなければならない
宇宙が安全保障上の優位性を有すること、中国・ロシア・合衆国の競争が、宇宙における安全保障を複雑にすること、この競争の勝者が、ルールを定めることができること、ルールを定めることができなければ、紛争状態にまでエスカレートする可能性があること、などが述べられています。
4 探査のフロンティアは、制限(Shaping)を要すること
米国は、2020年代に再度、月着陸を計画しており、企業が、探査活動を競っている。また、国家は、ラグランジェ点を争って確保しようとするであろう。
戦略的アプローチ
上述の発展は、「合衆国と同盟国は、宇宙についての長期的な戦略を必要とすること」「同盟国とパートナーの重要性」についてふれられています。
戦略
そこでの戦略のビジョンは、宇宙領域が調和のとれ、常に安全で、完全にアクセス可能で、組織化され、規制されていることを保証するたニースであり続けることを保証することです。
この戦略の主な目標は
- 宇宙のルールに基づく秩序を確立することにより、宇宙関係者間の安定、調和、自由を促進する。
- 敵対行為を抑止し、米国および同盟国の宇宙へのアクセスと、グローバルな共有空間における航行の自由を確保する。
- 宇宙商業の継続的な拡大を通じて、米国と世界の繁栄を促進する。
2050年までの安全な宇宙のための青写真
このために四つの主要な戦略として以下のことが上がっています。
- 宇宙ガバナンスのガイドラインを提供し、宇宙での安全で確実な活動のための「道のルール」を示すこと。
- 宇宙へのアクセスを拒否しようとする国家、特に大国の競争相手から宇宙へのアクセスを守ること。
- 明確な規制と的を絞った投資により、宇宙開発に不可欠な宇宙商取引を促進すること
- 安全性と商業活動の限界を意図的に押し広げ、地球と月の間の領域であるシスルナ宇宙空間を包含すること。
このなかでは、ガバナンスのためのガイドラインについて
- 宇宙のガバナンスのための法的・規制的枠組をアップデートし、洗練すること
- 宇宙における集団的安全保障同盟を構築すること
- 明確な規制と集中された投資を通じて宇宙の商業利用を加速すること
- 宇宙の発展のためのシスルナーのアプローチをとること
があげられています。
次のエントリでは、これらをみていくことにしましょう。