民間による月資源の所有-「宇宙資源の探査及び開発に関する事業活動の促進に関する法律」が成立

「宇宙資源の探査及び開発に関する事業活動の促進に関する法律」が成立しました。

衆議院での法案は、こちらです。参議院は、まだアップされていません

成立についてのニュースは、こちらです。

条項をみていきます。この法は、目的として

人工衛星等の打上げ及び人工衛星の管理に関する法律(平成二十八年法律第七十六号。以下「宇宙活動法」という。)の規定による許可の特例を設ける

とともに

宇宙資源の所有権の取得その他必要な事項を定めること

によって

宇宙の開発及び利用に関する諸条約(第三条第二項第一号において単に「宇宙の開発及び利用に関する諸条約」という。)の的確かつ円滑な実施を図り

民間事業者による宇宙資源の探査及び開発に関する事業活動を促進すること

を目的としています。

2条は、定義です。「宇宙資源」「宇宙資源の探査および開発」の定義を明らかにしています。

3条は、人工衛星の管理に係る許可の特例です。人工衛星の管理については、許可にかかるものになりますが、人工衛星の利用の目的として宇宙資源の探査及び開発を行う場合、その許可については、事業活動計画をあわせて記載して許可を受けなければならないとするものです(3条1項)。そして、その許可についての要件が2項で定められており、要件の認定にあたっての、経済産業大臣に対しての協議の規定があります(3項)。

4条は、公表の規定で、内閣総理大臣は、宇宙資源の探査及び開発の許可等をしたときは、その旨及び許可等を受けた者の氏名又は名称、宇宙資源の探査及び開発に関する事業活動の期間、 宇宙資源の探査及び開発を行おうとする場所、宇宙資源の探査及び開発の方法、宇宙資源の探査及び開発に関する事業活動の内容などをインターネットの利用その他適切な方法により、遅滞なく、公表するものとされています。

5条は、

第五条 宇宙資源の探査及び開発に関する事業活動を行う者が宇宙資源の探査及び開発の許可等に係る事業活動計画の定めるところに従って採掘等をした宇宙資源については、当該採掘等をした者が所有の意思をもって占有することによって、その所有権を取得する。

としています。

6条は、国際約束の誠実な履行等であり、7条は、国際的な制度の構築及び連携の確保等、8条は、技術的助言等になります。

5条の位置づけが問題になります。これについては、「アルテミス計画と法(1)」で記載しましたが、宇宙条約2条(JAXAが翻訳を準備しています)の

「月その他の天体を含む宇宙空間は、主権の主張、使用若しくは占拠又はその他のいかなる手段によっても国家による取得の対象とはならない。」

との関係をどのように考えるかということです。なお、この部分に関しては、月の土地の所有権を販売するビジネスは、有効か、という議論が小塚ほか「宇宙ビジネスのための宇宙法入門」に紹介されていたりします。

これについては、国連海洋法条約で、商業的な漁業が許容されているのと同様であって(116条 公開における漁業の権利)、宇宙条約2条は、主権の行使の対象としての取得が禁止されているだけなので、商業的な資源採掘を禁止するものではないと解されるという立場によっているものと考えます。

図で示すとこんな感じです。

国と国との関係での国際法の次元において、国家の主権行使としての月の所有は、禁止されているのですが、民間が、付きの資源を所有するということは、日本の国内法の次元では許容されるということになります。そのルールを他の国が認めるのか、ということが、ひとつの課題ですが、世界的には、これを認めるような動きになっていくのでしょうか。

なお、月協定の11条3項は、

3 月の表面又は地下若しくはこれらの一部又は本来の場所にある天然資源は、いかなる国家、政府間国際機関、非政府間国際機関、国家機関又は非政府団体若しくは自然人の所有にも帰属しない。月の表面又は表面下に対する要員、宇宙機、装備、施設、基地及び設備、及びこれらの表面又は地下に接続する構造物を配置することは、月の表面又は地下若しくは月のいずれかの地域に対する所有権を生じさせるものではない。この規定は本条の5に述べられている国際レジームを侵害するものではない。

としています。月協定については、日本は、当事者ではないですので、上のような考え方がなりたつということになりますし、むしろ、アルテミス・アコードの考え方に沿って、国内法が整備されているというような理解でいいかと思います。

ちなみに

関連国内法は15年に米国、17年にはルクセンブルクで成立している

とあって、米国は、「米国商業宇宙打上げ競争力法(公法114-90-U.S. Commercial Space Launch Competitiveness Act of 2015)」(JAXAの日本語訳があります (追記)が、これは、米国改正商業宇宙打上げ法でした。ごめんなさい) が成立しており、そのタイトル4 が「宇宙資源探査利用法」といわれています。が、民間の所有権については、あまりはっきりしていないような感じですがどうでしょうか。もすこし勉強したいところです。私のブログですと、むしろ、アルテミス計画と「米国宇宙政策2020年-セクター間ガイドライン」で、はっきりしてきているというように理解しています。

アメリカについては、国際法との衝突に関して、域外主権の放棄条項が入っています。さて、我が国ではこの論点についての議会の意図はどのようなものであったのでしょうか。これらの点については、勉強して「米国における月資源の考え方」というエントリをまとめたので、そちらを参照ください。

ちなみに、「日本人初の議長デビュー 青木氏、国連宇宙小委」という記事もありますね。

関連記事

  1. 続・宇宙-サイバーセキュリティ法の最後のフロンティア その4
  2. 続・宇宙-サイバーセキュリティ法の最後のフロンティア その1
  3. G7 コーンウォールサミットとサイバー/宇宙法
  4. 「アルテミス合意」週内にも署名
  5. アルテミス計画と法(3)
  6. アルテミス「アコード」の意味
  7. 「アルテミス合意」のNASAアナウンス
  8. クマムシの月への持ち込みと法的問題
PAGE TOP