アトランティックカウンシルの報告書をみていきました(1、2)が、そこででてきたのがシスルナー(cislunar、シスルナ)という用語です。
報告書では、33ページから、36ページまで説明があります。上は、その報告書のなかのシスルナー宇宙のマップになります。
日本語だと、
- 「宇宙産業と宇宙安全保障の連携の動向について」
- 「「ispace」が宇宙開発の新たな時代を切り拓く」
- 「2030年代、いよいよ火星に人類が降り立つ!?」
- 「『宇宙はどこまで行けるか』/小泉宏之インタビュー」の記事
が、シスルナ空間の経済圏としての可能性を感じさせてくれるかと思います。
定義としては、 「地球と月の半径で作成される領域(Cislunar space is the sphere created by the Earth-Moon radius. )」とされています。エネルギー、資源、統合されたインテリジェンスという三つの活動に重要なものを要素を備えているとされます。
具体的には、
月から地球までの距離は約1.35光秒であり、地球からの通信がほぼリアルタイムでミッションをコントロールできるプラットフォームを提供している。月は地球に比べて浅い重力井戸の中にあるため、宇宙船はシスルナ空間の地点からより容易に推進することができる。 このように、シスルナ空間は、地球軌道を越えた探査を始めるための有力なポイントとなる。
とされています。そして、広大なシスルナ宇宙空間の中には、地球-月間のラグランジュポイントをはじめとする、緊張関係に陥る可能性のある重要な戦略的な地点があります。地球-月間のラグランジュポイントは、シスルナ空間の入り口とされています。
ラグランジュ点については、こちらの映像をどうぞ。報告書では、その重要性について
ラグランジュポイントの安全性は、米国や同盟国の宇宙権益を維持・拡大するために不可欠です。ラグランジュポイントに宇宙船を置く(またはラグランジュポイントを中心とした「ハロー」軌道に乗る)ことで、天体に対して一定の位置にとどまることができます。そのため、ラグランジュポイントに配置された宇宙船は、ステーションキーピング用の燃料消費量が格段に少なくなり、コスト削減と寿命の延長につながります。軌道系には、L1からL5までの5つのラグランジュポイントがあり、地球-太陽系には多くの利用法がある(略)。
また、それ以外にも
シスルナ空間ではラグランジュポイントが有名ですが、他にも有利な軌道があり、それが争点になることもあります。例えば、「ポールシッター」と呼ばれる軌道では、ソーラーセイルや小型エンジンを使って、衛星が地球の極の真上の軌道に留まることができ、地球の北極や南極、あるいは半球全体を観測できる貴重な場所となります。しかし、数十年後には、国防アナリストや国家安全保障政策立案者の関心事として一面を飾ることになるかもしれません。現在、GEOにおける衛星の配置は、国連(UN)の専門機関である国際電気通信連合(ITU)によって厳しく規制されており、GEO内の衛星が相互に干渉しないようになっている。将来的に規制がなければ、シスルナ空間の特殊軌道は、個々の衛星運用者が相互に干渉しないようにするインセンティブを持たないコモンズの悲劇に見舞われる可能性がある。
という指摘もなされています。アルテミス計画については、このブログでもふれてきたところですが、その延長上にシスルナ領域の重要性の議論があるということになるかと思います。