アルテミス「アコード」の意味

アルテミス計画と法などで、アルテミスアコードについて見てきたわけですが、そもそも、このこの「アコード」が果たして、国際法上、どのような性格を有しているのかという点についての争いがあります。だからこそ、報道などでは「協定」と訳されているところをあえてアコードとカタカナ表記にしていたところです。

この点についての論文としては、Jeff Foust “What’s in a name when it comes to an “accord”?”があります。以下、この論文を読んでいきます。

国際宇宙ステーションについては、1988年9月に関係各国との間で政府間協定(IGA: Inter Government Agreement)が締結されています。それがゲートウェイに拡大されるとされます。が、しかしながら、NASAは、2017年の宇宙政策指令1(NASAの記事はこちら)を引きながら、IGAには、実用的ではないとしました。そして、NASAは、アルテミス・アコードのなのもとに(under the aegis of what it calls the “Artemis Accords”.)二国間合意のシリーズを計画しています。

NASAが、アルテミスアコードをアナウンスしてから、この考え方は、広く議論の対象となっていたとのことです。月面における安全な運営に注目する立場から、大航海時代の自体の過ちを再度、冒そうとしていると見る立場まで存在しています。

前者は、セーフティゾーンに着目し、これが、専有し、資源を採掘しうるが、管理はできないという意味か、もしくは、権利をもたらすものではない、むしろ、情報についての標準であろうと論じています。また、セーフティゾーンは、行為規範、財産権などとの関係で考察されています。

後者の主張は、ポルトガルとスペインという強国の二国間のモテルによって、主権が確立されたことから、新興国の勃興に対応することができなかったこと、国家間の争いを設定したこと、近時の米国のモデルは、全く同様であり、そのような問題を生じるであろうということを主張しています。

Foust論文は、アルテミスアコードとは何なのか、と改めて問います。NASAの言葉によれば、「アルテミス計画に参画する国際宇宙局の実行するアルテミスアコード合意」であって、それは、宇宙条約に根拠をもつ原則のビジョンを共有するものということになりす。

NASAは、この合意についてアナウンスをしていませんし、また、草案を公表しているということもありません。

それらの原則のもつ意義については、エントリでも触れています(宇宙条約の確認のもの新しい意義をもつもの)。

Foust論文によると、NASAのBridenstine は、

私たちが持っている強制機能の一つは、アルテミスプログラムの下で月に行くことです

と述べ

あなたが私達と一緒にいるならば、ここに私達が期待している、私達が生きている行動規範があります

として、アルテミスアコードがアルテミス計画に参加するための強制される規範であると考えていることを明らかにしています。

また、Moon Dialogというイベントにおいて、月保護ポリシを変更して、極地域以外をカテゴリ1の保護がもっともよわい部分に移行するということが示唆されたとのことです。

その上で、同論文は、 Laura Montgomery氏のコメントとして、細部における問題が生じうること、特に、商業的宇宙活動において、科学データの公表要件や相互流用性において問題があることを論じています。

また、月協定の当事国にとっては、宇宙資源についての権利の承認について、同協定の人類の共通資産という認識との衝突に留意しなければならないということが議論されています。そして、そもそも、アルテミスアコードが交渉の対象なのであろうか、という議論がなされているとのことです。その緊急性ゆえに、一定の条項がそのまま認められるのではないか、ということです。

その一方で、宇宙条約をもとにした「ベイビーステップ」であるという考え方もあり、米国が、隠密な試みをしているわけではないという考え方もあります。

それぞれの立場から、いろいろと分析できるというのが、アルテミスアコードの現在の立場ということでしょうか。それだけ注目度が高い、ということができそうです。

 

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